エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

エクスフォス・ストーリー 第3部 決着へ 第5章 深みへ

第58節 消えぬ罪

 一方で、恐らく地下牢が存在していると思われる下層のほうには――
「バディファさん! やっぱり地下牢がありましたね!」
「そうですね、クレンスさん、ラクシスさん、手分けして、フェリオース君のお姉さんを探しますよ!」
 地下のほうにはエクスフォス組の3名が向かっていた。 地下のほうは煤けていただけで、燃やされている気配はなかった。
 捕まっているとするなれば、やはり、頑丈で、確実に逃げられないような場所に閉じ込めておくに決まっている、 となると、お城の幽閉施設が最も怪しい――そこで考えたのが単純な話だけれども、地下牢という結論だ。 そのため、フェリオースのお姉さんを救出するために、エクスフォス組は地下へと急いだのである。
 さて、肝心のお姉さんは見つかるのだろうか、すると――
「ねえ、バディファさん! この鉄の扉の向こうなんかどうですか?」
 クレンスが気が付き、バディファに訊いてみた。 扉は古ぼけてはいるけれども鍵がかかっていて、確かに、 この扉に閉じ込められた暁にはどうしても逃げられそうもない気がした。
「怪しいですね、鍵もかかっているようですし。 どれ、こじ開けてみましょうか、2人とも、離れていてくださいよ――」
 すると、バディファはメタルカッターのような技を発動し、扉を切り刻み始めた。
「うーん、確かに頑丈ですが、私の業の前では脆い扉ですね――」
 そして、最後に扉をけ破ったバディファ、扉を突き破るのに成功した。 すると、その奥には、目的の女性であろうその人物が、その場に鎖で縛られ、つるされていた。
「確かに、これでは逃げられませんね――」
 その人物は、何かを訴えようとしていた。か細い声なのだろうか、よく聞こえなかった。
「とにかく、助けましょう!」
 ラクシスはそう言った、すると――
「そうですね、とにかく、フェリオース君に、元気な顔を見せてあげましょう!」
 バディファはそのまま得意のメタルカッターで、彼女をつるしている鎖を切り裂き、 彼女を宙から降ろすことに成功した。そして、クレンスがその場に駆け寄ると、彼女の鎖をほどき、 口と目を覆い隠していたガムテープをはぎ取り、無事を確認した。

 バディファはそのままフェリオースの姉を抱えた。 3人はそのまま地下牢から脱出しようと階段を駆け上がっていった。
「大丈夫ですか、バディファさん――」
 ラクシスは、バディファを心配しながら言った。
「大丈夫です。とにかく、長居は無用です、2人だけでも早くここから、さっさと脱出してください――」
「バディファさん、ダメですよ! みんなで無事に、ここから脱出するんですよ!  バディファさんもお姉さんも、おいていくことはできません!」
 しかし――
「はははっ、お2人とも、お優しいのですね。 しかし、そんなのんきなことを言っている暇もなさそうです、ですから、早く――」
 バディファは背後から不穏な空気を察知した。 その空気が近づくと、バディファはフェリオースの姉をその場に下ろした。
「誰か来る――」
 その気配に、流石にラクシスも、クレンスも気が付いた。
「まったく、俺が寝ている間に、誰の許可を得てその女を連れだしているんだ?」
 出てきたのはまさに敵だった。敵は、地下のほうからやってきたようだ。
「おやおや、誰かと思えば、ランダック殿ではないですか?」
 バディファはその人物にそう話しかけた。ランダックとは、これまた、厄介な使い手が敵になったものである。 こいつはコルシアス級に厄介な敵で、指名手配されていたはずのやつである。指名手配になった理由、それは――
「あ? なんだテメーは。どこのどいつだ?」
「おやおや、この私のことをお忘れですか? 心外ですね――」
「は? 何を言っているんだ? 生憎、殺したはずのやつの顔は忘れることにしているんでな、 たとえ流転のバディファだろうがいちいち覚えていらんねえのさ」
 覚えているじゃないか、という突っ込みはともかく、こいつは、昔の戦争で自分たちの仲間を裏切り、 その場にいた敵も味方も含め、殺戮行為を行ったのだった、その時に一緒にいたバディファも巻き沿いにして。 そして、バディファはその時の傷はそのまま残り、かつてほどの実力も発揮できなくなってしまったという。
「しかし、残念なことに、私はこの通り生きていますよ。 もちろん、あなたの行為について、私は特に糾弾しようとはしません。 あなたの犯した罪は消えませんが、あなたと私が存在していること自身が、私の罪でもありますからね」
 バディファは以前、とある国に対抗するため、一つの作戦チームを結成したらしい。 作戦自体は成功、しかしその帰り道、そのチームは、バディファとランダックを残して全滅、 敵の残党に対して予想外の奇襲攻撃を受け、莫大な被害を被ることになったのである。 さらに酷いことに、当時作戦の本部に一緒に出向いていた作戦チームの家族も犠牲に、 つまり、バディファとランダックの家族も犠牲となったという。
 そして、バディファとランダックは敵に拘束され捕虜となった。 その状況から助かったのはその国との戦争が終結し、捕虜の交換により、帰国を果たした。
 しかし、バディファはこの作戦の責任は自分にあると考え込むようになっていた。 確かに、敵の残党に対しての読みが甘かったというキライはあったようで、当時の事を未だに悔い続けていた。
 そして、バディファとランダックは再び戦地に駆り出されることになったのだが、 その時のランダックは自暴自棄になっており、やはり、バディファのことも恨んでいた。 そして、殺戮行為を行った――ランダックの気持ちもまったくわからないわけでもないにせよ、その結果が殺戮行為とは――
「はははっ、だろうな! 俺もあの作戦に参加した! お前の作戦に賛同したのも確かだよ! だけどその結果がこのザマよ!」
 ランダックは完全に壊れていた。もはや、どうとでもなれという状態だ。
「それにしても、テメエのその面構え、いつ見てもムカつくんだよ! なんとかならねえのかよ!」
「そうですか? すみません、それは初耳ですね――」
「いや、違う――テメエが生きていると知ったからムカつくんだったぜ! まあ、んなこたあどうだっていい!  テメエを殺し損ねたがどうも手負いの状態みてぇだからこのままなぶり殺しにしてもかまわねえってわけだ。 それに、その女を連れだそうだなんてそうはいかねえ! そこのガキ2人もまとめてあの世に送ってやるぜ!」
「自暴自棄になった割にはガラディウシスに加担してまでまだこの世にしがみついていくおつもりですか、 あなたもいけない人ですね。 確かに、あの作戦はいい作戦とは言えませんでした、私の考えが甘かったのも認めます。 ですが、今のあなたはそのままにしておくわけにもいきません。ですから――」
 ですから――バディファはこのように言い放った、あの時の責任者として、ここでけじめをつける、と。
「お二方、申し訳ないのですが、私はどうやら、ここで過去に決着をつけなければいけないようです。 そのため、非常に申し訳ないのですが、お姉さんを連れて早くここを脱出しちゃってください!」
 えっ、そんな、まさか――2人はうろたえた。
「残念ながら、ランダックが強敵なのは確かです。ですので、ここは私一人に任せて早くお逃げください!」
 するとランダックは――
「ほう、なるほどな、逃げも隠れもしないと、そういうことか――」
「そうです。彼らを追う気であれば、この私を倒してからにしてください!」
 2人は激突した。そして、衝突したと同時に、そこの階段は地下のほうへと崩れ去ってしまった!
「バディファさん!」
 クレンスは涙ながらに叫んだ、しかし、それを、ラクシスが――
「ダメだ! バディファさんは、すべてを俺たちに託したんだ! だから――バディファさんの決断を無にしないためにも――」
 ラクシスも涙ながらに訴えた。クレンスはなんとかそれを受け止め、泣く泣くその場を後にした、2人で、お姉さんを抱えながら。