エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

エクスフォス・ストーリー 第3部 決着へ 第5章 深みへ

第56節 敵地へ

 ダガート島はスレアが言っていた通り、島自体が高い山に覆われており、 その中に亡国があるという地形だった。そんな場所に、どうやって上陸するのだろうか。
「見ろ、正面の山肌に割れ目がある。あの割れ目がダガート島に上陸するための入り江がある。 あそこに入ったら、敵の本拠地だ、何が来るからわからないからな、用心しろよ――」
 近づくにつれ、エクスフォス組は誰もが緊張してきた。

 島の内部へとそのまま侵入すると、内部は薄暗く、何だか不気味な雰囲気だった。 確かに、国が滅んでいる様子がわかるな。
 しかし、警戒していたにも関わらず、誰もいるような気配がなかった。
「どうやら敵はいないようだな、まあいい、そのほうが好都合だ。 俺はこの場を引き受けるから、お前らは安心して”エクスフォス・ガラディウシス”とけりをつけて来い、 俺から言えるのはそれだけだ」
 改めてとなるが、そのメンバーは、エクスフォスのメンバーであるアーシェリス、クレンス、ラクシスと、 年長者のバディファだ。 それから、何故かルダトーラ・トルーパーズの面々も参戦に来ていた。 何故一緒なのかは、ほとんどあのリファリウスの差し金と言ってもいいだろう。
「なんだかんだ言ってもこれも何かの縁、ここまでくれば一緒だからな。 思う存分俺らの力を使ってほしい」
 と、ティレックスは言った。彼らの力を使えるのは頼もしい限りだった。 ルダトーラ・トルーパーズは、ティレックスを筆頭に、 ユーシェリア、トキアそれから、ラークスが参戦してきてくれた。
「旅は道連れ世は情けっていうだろ? まあ、そういうもんさ、よろしくな!」
 ラークスはお調子者っぽい印象を受けるが、アーシェリスとしてはこういうやつはあまり嫌いではなかった。

 上陸してから島を進むも、島の中央付近までたどり着いたところだろうが、 民家の廃屋はおろか、そんな姿形すら見受けられなかった。
「何もかも跡形もなくなってしまった感じだな。 こんな国、俺自身も見たことがないな、廃墟の跡はたくさん見てきたけど――」
 と、ティレックスが漏らした。 彼らは、少し前に主に廃墟群でディスタードのマウナ軍と戦いを行っていたその当時のことを思い出していた。 もしかしたら、まだ廃墟という形があるほうがマシだったのだろうか、いずれにしても、何とも言えないものがあるけれども。
 それにしても、敵の姿形が見えない。こういう場所だからこそ、変な魔物が潜んでいる場合が多いのだけれども、 そういった魔物も特に確認できず、今まで相手してきたような魔物しかおらず、それも、他の地域に比べたら少数であった。
「生態系としてはリベルニアに近いだけあって、魔物の種類も似たようなものでしょうか、 ですが、魔物の数もあまり多い方ではありませんね――」
 バディファはそう言った。さらに話を続けた。
「いつぞやか、個人的にクラフォードさんとは会話をしたこともあったのですが、 彼に言わせれば、面倒がないほうが好都合という見方もできる一方、 面倒がなさすぎるのはむしろ不気味さを冗長させる、というところでしょうかね。 確かに、何もないというのは罠である可能性も無きにしも非ず、なおのこと、慎重にいかなければなりませんね――」
 確かに、その考えはもっともである。すると、ラクシスは話を付け加えた。
「というのも、ここは本当に変な島なんだ。 なんというか、平たく言えば霊的なものの存在なんだけれども、この島にはあまりそういうのがない気がするんだ――」
 この世界では魔物がメジャーに出没するのと同じように、霊というのもその辺にわりといるものと言われている。 当然、目に見えないということもあり、迷信としている見解の勢力もいるにはいるが――
 しかし、この島は亡国の島、霊的というか、そういう不気味な島において、 そういう変な気配的なものが一切ないというのもあるいみ変な話である。 霊感の強い人、たとえばラクシスだったら、そういうのにはすぐに反応するはずなのだけれども、 彼自身はそういうのをあまり感じないという。
 ラクシスは話を続けた。
「もちろん、まったく感じないというわけじゃなくて、普段以上に感じないというレベルの話だよ。 だけど、こういうケースは以前にも味わったことがある、 何かに恐れ、みんな身を隠しているとか、そういう状況だったかな」
 何かに恐れって、まさか――
「”エクスフォス・ガラディウシス”を何とかしないといけないってことね、 そうでないと、みんな安心して眠れないってことになるわけね」
 トキアがそう言った。死してなお脅かされているというわけか、なかなか穏やかでない話である。