アーシェリスがクラウディアスで修行を続けているうちに、エクスフォスとしては聞き捨てならない情報が入ってきた。
アーシェリス個人としては、ティレックスから聞かされた、直近のリベルニア作戦の件のほうも聞き捨てならない情報だった。
それ自身は、実はティレックスはリベルニアでのあの作戦の一部始終をすべて把握していたということである。
だったらそれを何故教えてくれないのかと聞くと、それはリファリウスの策だから、あいつに訊いてくれと言う。
アーシェリスとしてはその一言ですべてが説明できた、あいつの考えたことならそれぐらい特に不自然でもないし、
何度も言うが、アーシェリスはそもそもリファリウスが嫌いなのだ、
だから、ティレックスから聞かされた時には憤慨したが、それ以上は気にしないことにした、
どうせ、あいつのことだからまた話をしたところでムカツク思いをするに決まっている、だから、追及するのをやめることにした。
しかし、アーシェリスが今後知りたい情報を握っているのは、
皮肉なことに、その嫌いなリファリウスであることも事実なようで、
特にこのクラウディアスでの最有力情報と言えばあいつを頼りにすることしかないのも複雑な心境ではあるものの、
それも考えないようにした、いつぞやかフェリオースが言っていたように、使えるものは何でも使えと考えるようにしたのである。
しかし――その友の弁でさえリファリウスの受け売りだったことについては、
アーシェリスはすっかり忘れていた。
話を戻すと、リファリウスより、エクスフォスとしては聞き捨てならない情報として、急な話が飛び込んできたのである。
それは――リファリウスの口から直接聞くことになったのである。
「どういうことだかよくわからないけれども、連中はいよいよ攻撃を仕掛けてくるそうだ。」
連中というのは”エクスフォス・ガラディウシス”、
攻撃を仕掛けてくるとはなかなか物騒な話ではあるけれども、どういうことだろうか?
しかし、確かに、連中はエクスフォスの滅亡を望んでいる、それをやってくるということだろうか、
そもそも、そんな大それたことを本気で行おうとでもいうのだろうか?
しかし、なんだろうか、あまりに話が急すぎて、むしろ連中は何だか焦っているようにも見えてしまう。
いやしかし、それも連中の何らかの策なのか、あるいは、本当にエクスフォスを根絶するための準備が整ったからなのか――。
その話については、クラウディアス城の会議室にて行われることとなった。
しかし、話を主導で進めているのは、何故かリファリウスである。
こいつが握っている情報なんだからある程度は仕方がないけれども。
「確かに、不可解な点は多いけれども、ルシルメアで諜報活動中のシャディアス君の話では、
ルシルメアの中央公園で、エクスフォスの魔王というやつが”エクスフォス・ガラディウシス”の名をかたり、
エネアルドを攻め落とすって宣言していたということらしい。」
とはいえ、リファリウスはその進軍している状況は今のところ見えないということを付け加えた。
「まあ、少数って可能性が高いからね、”エクスフォス・ガラディウシス”は。
あまり目立った行動はしていないということなのかもしれない。」
だけど、こうも考えられるという。
「または、本当に動きがないとみても間違いはないのかもしれないけれどもね。
一応、エネアルドの様子を探っているガレアのスパイも、今のところは特段、戦いが起きているような動きも見えないらしい。
――というか、エネアルドに草を放ったのもごく最近の話になるから、そもそも、後の祭りってことも考えられるけど。」
毎度のことではあるけれども、リファリウスは太い情報網を持っていることには感心する。
ルシルメアのF・F団のみならず、ディスタード帝国のガレア軍もだからな。
それとは対象的に、ますます自分の国の事なのによくわからなくなってきたアーシェリスらである。
なんていうか、以前は、”エクスフォス・ガラディウシス”とつながりがありそうな感じがしていたのに、
リファリウスが主導で話をしている様を見ると自分らはなんとなく置き去りに、
そして、”エクスフォス・ガラディウシス”の目的も本当に自分らを根絶やしにすることなのかと疑いたくもなるというものだ。
とはいうものの、よくよく考えれば”エクスフォス・ガラディウシス”という存在自体、
アーシェリスらもつい最近聞いた名前で、実際のところ、連中のことなんてほとんどわからない。
分かっていることで言えば、恐らく敵なんだということぐらい、それしかない。