エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

エクスフォス・ストーリー 第3部 決着へ 第5章 深みへ

第53節 2つの選択肢

 アーシェリスはあの時にフェリオースにやられた時の傷が未だに痛んでいた。 剣に迷いがあったのは確かで、だから負けた、そう思っていた。
 しかし、それ以上に負けている要因、それは、フェリオースの業のほうがアーシェリスを上回っていたということもある。 だから、アーシェリスは、クラウディアス王国に居合わせていたリファリウスに訊ねた。 しかし、知ってのとおり、アーシェリスはリファリウスがニガテだった。 第一、そもそも、なんであいつがここにいるのかという点で不思議だった。
「別にいいじゃないか。どこで誰が何をしていようと、他人のプライベートなんだから、そんなこと言われる筋合いはないね。」
 ああ、そうですか。確かに、ごもっともな意見ですね。 それ以上に気に食わないのが、なんで、いつも両手に華なのだろうか、不思議でしょうがなかった。 確かに色男だが、そんなにこいつがいいのか? ただのチャラ男じゃないか?
「こいつ使える?」
「リファリウスさん、アーシェリスさんに技を教えてあげてはいかがでしょうか?」
 右手は幼い見た目だが実はそこそこに歳いっているというカスミという人、そして、左手は――
「アリエーラさん、それはちょっと難しい相談かもしれませんよ。 なんたって、彼は私のことをよく思っていない、キライなんですよ。さて、どうしたものですかねえ。」
 何がどうしたもんですかねえ、だ。アーシェリスは、見ているだけで腹が立ってきた。
「そんな、イジワルしないで、きちんと教えてあげればいいじゃあないですか。」
「それが、ダメなんだ。何と言ったって、この私から教えてもらうだなんて、彼のプライドが許さない。 教えるのは容易いですが、はてさて、まずはどのようにしたらいいのか――」
 そうだよ、確かに、こんなやつから教えてもらうのはまっぴらゴメンだ。 こんなチャラチャラしたやつ、自分から頭を下げるのなんて二度とゴメンだ、 こんなやつから教えてもらおうと思った俺が間違いだったよ! アーシェリスは開き直ってその場から去っていた。

 しかし、あのリファの野郎、素直に言えばいいものを、単に忙しいから断りたかったという話だったらしい。 それは、スレアから訊いた話だった。
「リファリウスは女たらしか、まあ、そういえばそうかもしれないけど、あんまりそういう風景は見たことがないな」
「見たことがないだけだろ?」
「そうかもしれないけどな。だけど、女性陣のほうから、リファに言い寄られたとか、手を出されたとか、 その手の話は全く訊いたことがなくてな、こういう国の状況であのキャラだから、そういう噂はあってもいいようなもんだけど、 そういうのが全くないから、ただのフェミストだと思うけどな、俺は」
 フェミストか、そういえば、以前にもそういう話があったような。 確かに、どこで聞いても何か変な問題を起こしたようなことは全く聞いたことがない、 あちこちに顔が利くようで、浮名も馳せている感もする噂はよく聞くのだけれども、 不思議なことに、それで手を出したとか泣かせたとか、そういう穏やかじゃないような話は全然聞いたことがなかった。
「リファ様はそんな人じゃないもん!」
 クレンスまでそう言うし――アーシェリスの心境は複雑だった。

 リファリウスの話はともかく、アーシェリスはスレアからいろいろと教わっていた。 うーん、教わるのはいいけれども、スレアはそっけなくて、不親切な教え方だな。 キライではあるけれども、リファのほうが上手のような気がしてきた、 以前、魔法剣のレッスンを受けた時の経験から感じたことである。
 とにかく、アーシェリスはスレアの講義に苦戦しながら、スキルを上達させていくことにした。
「フェリオース相手の敗因は何だと思う?」
 敗因か、なんだろうな。迷いがあったから? それもあるけれども、さっきも言った通り、 技もフェリオースのほうが上回っていた、では、具体的に、技のどの部分が足りなかったのだろうか?
「わからなければ、とりあえず、俺を倒してみろ」
 そう、これが、スレアの実力を思い知った瞬間だった。こいつ、強い。

「気が付いたか? 少し、手加減するべきだったか――」
 またこのパターンか――アーシェリスには覚えがあった、 あの時、アール将軍――リファリウスと対峙していた時のことを思い出していた。
「ちなみに、フェリオースというのは、どの程度の強さなんだ?」
 ……少なくとも、今回のように秒殺されなかっただけ、フェリオースよりもスレアのほうが強い気がする――
「なるほどな、だったら、俺が代わりにやってもいいんだけれども……そういうわけにはいかないのだろう?」
 単にフェリオースを倒したい、そういうわけではないんだ、 だから、これは俺の手で決着をつけなければならないんだ、アーシェリスはそう言った。
「そうか。その割には、詰めが甘いな。まず、パワーが足りない、勢いが弱いんだ。 スピードもあって命中は正確だが、勢いがそれに伴っていないとみた」
 前にも言われたな、あれはディルフォードと戦った時のことだ。 そして、フェリオースは、イールから俺とは逆のことを言われていた気がする、パワーはまあまああるけど、スピードはそこそこだと。
「要するに、お前らは正反対ということか。 パワーで勝てないのなら、正面から攻めれば純粋にパワーが勝っている方に理がある。 そうなると、勝つのは厳しいだろうな。 だが、スピードで優っているとなると、できることは二通りあるが、お前はどちらを選ぶ?」