クラウディアスへついてからというものの、アーシェリスらエクスフォス組はいろんな人に出会うことになった。
しかし、リベルニアから脱出してから3か月ぐらいは経っていると思うが、
彼らの本来の目的である”エクスフォス・ガラディウシス”について、有力な情報は得られなかった。
「まあ、そういう実体のわからないような組織なら、そうそう尻尾をつかまさないというのが筋だと思うが――」
スレア=スタイアル、クラウディアス王国の騎士たちは若者ばかりで、実戦経験がほとんどないらしい、
アーシェリスも似たようなものだった。
しかし、スレアだけは違う、アーシェリスや、ここの騎士団長であるラシル、他の騎士とは年齢はそう変わらないハズだが、
スレアの実力は別の次元だ、何がどうして、これほどまでに実力に差があるのか理解不能だ。
ディルフォードに始まり、イールアーズ、クラフォード、そして、アール将軍こと、リファリウス、それから、あの人も――
約3か月前――
「あれ? お姉様は?」
クレンスがリスティーンのことを探していた。
あんなに高い所から飛び降りたというのに、船の中で2~3日休んでいただけで動き回れるようになっていた、
どうなっているのだろうか、あの人は。
そして、それ以降、なんか慌ただしくなり、船の補給のためにグレート・グランド大陸の北部にあるティルアに到着するや否や、
早々にどこかへと消え去ってしまった。だから、アーシェリスはクレンスには肩をすくめて返事をした。
「そうなんだ、いろいろと話がしたかったのに――」
まったくだ。いろいろと訊きたいことがあったのに、さっさといなくなるんじゃない、アーシェリスはそう思った。
「ねえ、せっかくだからさ、ティルア自衛団の基地に行ってみない?」
確かに、それもいいか。
トキアはそう言うと、エクスフォス組とルダトーラ組の面々はその案に賛同することにした。
ティルア自衛団と言えば、クラフォードはどうしているのだろうか。
「あら、久しぶりですね! ごめんなさい、今、私しかいないんですよ」
基地の事務所に入るや否や、女の人が。
えっと、誰だったっけ、会ったのはこれで2回目、アーシェリスはあまりに久しぶりすぎて、記憶から消えていた。
「ウィーニアさん、”エクスフォス・ガラディウシス”って訊いたことありませんか?」
クレンスの問いにウィーニアは少し考えた、そうだ、ウィーニアだ。
しかし、彼女は訊いたことがないと答えた。
「あれ? クラフォードはどこにいるんですか?」
アーシェリスは訊いてみた。あれの姿が見えないというのもそれはそれで気になったアーシェリス。
「クラフォードなら、エダルニアへ行ってますよ」
エダルニア、そういえば、リスティーンもエダルニア軍がどうのとか言っていた。
確かに、リベルニアがディスタードやアルディアス軍に包囲されている以上、
リベルニアと協力関係にあるエダルニアが黙っていることはないだろう。
しかし、リベルニアが不穏な動きを起こしていたのは事実だ、世界は再び戦争に突入しようとしていたのだろうか。
ああ、それで、エダルニア軍の動向を探ろうと、ティルア軍が視察に行っているようだ、ご苦労なことである。
「でも私、ウィーニアに久しぶりに会えてとってもうれしい!」
「私もよ、ディアナリス! 無事でよかったわ!」
ディアナリスとウィーニアは互いにそんなことを言っていた。
あ、そういえば、ディアナリスはティルアにいたことがあるんだっけ、
ということは、ここの人たちとは知り合いということか。
船の補給にしばらく時間がかかるので、その間、各人で自由行動をとっていた。
「大丈夫か、ラクシス――」
ラクシスは1人、海を眺め、じっと佇んでいた。
「悪いけど、1人にしてくれないか?」
そっか、お祖母ちゃんが亡くなって、まだその傷が癒えていないんだっけ、そっとしておくか。
あとは――ティレックスらルダトーラ組の間でも話をしているようだし、
それとは別に女性陣だけで集まってなんか話をしているようだし。
バディファをはじめとする年長組は、なんか、昔の話とかで盛り上がっているみたいだし……
アーシェリスは一人になってしまっていた、まあ、たまにはいいだろう、そう思っていた。
この短い期間にいろんなことがあり過ぎた。
なんというか――うまく、言葉にできないな、ラクシスも同じ気持ちだろうか?
アーシェリスは幼いうちから両親を亡くしている、
しかし、親戚縁者で交流があったため、さほど不自由な想いはしなかった。
事故で亡くなった両親、そして、最近になってから、
事故でなくてロバールに殺されたという――やりきれない気持ちでいっぱいだ。
ロバールとつながりがあるであろう”エクスフォス・ガラディウシス”、ロバールも連中の一味だろうか?
そんなガラディウシスだが、一人はカサード、アーシェリスの手で葬り去った。
そしてもう一人、コルシアスはリスティーンの手によって倒された。
あと、何人いるのだろうか? そして、フェリオースは、どうしたんだろうか? アーシェリスはいろいろと考えていた。
「俺のことが知りたいか?」
知りたいかって? ああ、知りたいさ、フェリオース、無事なのだろうか、そして、今、何をやっているんだ?
アーシェリスは即座に振り向いて言った。
「フェリオース、一体、何があった!?」
その場には本当に、フェリオースがいた。しかし、フェリオースは――
「フェリオース、どうにもならないのか?」
「……もう知っていると思うが、その通りだ」
そうか、やっぱり、そういうことなんだな。お姉さん、捕まっているのか――
「フェリオース、何をしに来た?」
しかし、アーシェリスの手は、すでに傍らの剣に届いていた、フェリオースのほうもそうだった。
「……答える必要なんかないだろう? 残念ながら、そういうことだ」
そうか、やるしかないのか――