エンドレス・ロード ~プレリュード~

遥かなる旅路・天使の舞 第2部 高みへ 第3章 さらなる高みを目指して

第47節 雷電か落雷か

 一方で、リュミーアらと分かれたシェルシェル、 その場があらかた片付くと、敵の流れに違和感を感じていた。 敵は明らかに東のほう、つまりはリュミーアらのいる方へと流れていた。 どうやら、東と西の2サイド、そして正面から攻めてくる一団以外に”中軍”と呼ばれる塊がいて、 そいつらが柔軟に対応して攻めてくるということのようだ。
 それに対して心配しているシェルシェルらだが、 リュミーアこと、リファリウスとしては毎度のことなので、とりあえず、無事に祈ることにしていた。
「おい、なんかこっち、敵が多くないか?」
 ヒュウガがそう訊くとリュミーアは何食わぬ顔で言った。
「何言ってんのよ、そんなことあるわけないでしょ。」
 そんなことあるから聞いているのだがとヒュウガは思った、多くの敵があからさまにこちらに向かってきていたのである。
「フレキシブルに対応する連中がいて、こっちに流れてきているのか」
 ヒュウガがそういうとリュミーアは得意げな顔で答えた。
「あら、ご名答。大変よくできました。」
 ヒュウガはそれに対して呆れながら返答した。
「んだよ、最初からわかってんじゃねーか、バックレやがって。 で、当然策はあるんだよな?」
「当たり前でしょ、やってきた敵から順番に正面から全力でぶっ潰すのみ。」
「あのな」
 言っていることが滅茶苦茶だが、3人で文字通り、正面から全力で潰していた。

 リュミーアとヒュウガ、そしてララーナの3人は次々とやってくる敵を次々と対峙していた。
「ヒー様さあ、こんだけの力持ってるんだから、普段からちゃんとやんなさいよ。」
「やってるだろ、あんたの注文が多いだけだっつーの」
 ヒュウガはリュミーアにもんくをつけていた。それに対してララーナが嬉しそうに見ていた。
「ふふっ、あなた方は仲がいいのですね!」
 それに対してリュミーアが答えた。
「まあね、喧嘩するほど仲がいいってところね。さしづめ、熟年夫婦か姉弟かってところね。」
「熟年夫婦て――まあ、言ってもそのぐらいの距離感ってのは否定しないな」
 2人の息はあっているが、特別恋人同士を名乗るほどの間柄ではないということである。 ただ――この2人の間に何かしらの関係があることは間違いなさそうだ、 それについてはまたの機会に話すとしよう。
 だが、
「何か来ましたよ――」
 ララーナが注意を促すと、2人はその気配を察した。
「ふん、誰かと思えば――まさかこんな名も知らぬ連中にやられているとは、我らも地に落ちたもんだ」
 そいつはボディス、エイジャルの右腕で、”雷電のボディス”と呼ばれている、優れた使い手だった。
 すると――
「仕方ねえな、ここは俺に任せて、お前らはさっさとエイジャルを殺ってこいよ」
 と、ヒュウガが言った。
「いいの?」
「言ってないで早よ行けよ」
「わかった、ヒー様が言うんだからしゃあないな、行ってやるか。」
 リュミーアはそう言いながらララーナと共に先に進もうとした。ところが――
「おい、そこの女共、誰がここを通っていいと言った?」
 この場合、なんとなく、ヒュウガが「俺だ」みたいな感じで言う展開だと思うが、 そこは流石にこの人が絡んでいることもあり、そういう展開にはならなかった、いつものことだが。
「は? 何言ってんのよ、私が決めたのよ。 言っとくけど、あんたの指図を受けようだなんて、これっぽっちも思ってないからね。んじゃ、そゆことで。」
 リュミーアはそう言うとララーナと共にその場から素早く消えた。
「あの女……。ふん、まあいい、あの女もすぐに死ぬ。無論、そこのお前もだ」
 しかし、ヒュウガは、これまでのイメージを180度ひっくり返すほど不気味なぐらい恐ろし気な口調で答えた。
「あ? 誰が、誰に殺されるって? いい加減なこといってんじゃねーぞ。 俺に勝つみたいな妄言ほざいてると長生きできねえぞ」
 それから少しの間静寂が走ると、ヒュウガはさらに続けて言った。
「あ、でも、ちっとなまってるから手加減してくれよ」
 それに対してボディスはニヤリとしながら言った。
「ふっ、この私と戦えることを光栄に思うがいい! そして、今すぐここで朽ち果てろ!」
 ボディスはヒュウガに襲い掛かった!
「アホ。んな貧相な攻撃で誰が逝くんだっつーの。 それに、俺は腕が鈍って弱くなったから手加減しろだなんて言ってないぞ。 腕が鈍って加減できない可能性があるから手加減しろっつったんだ」
 ヒュウガは腰から剣を引き抜き、剣先を振り上げると同時に、非常に大きな衝撃波を発射して、ボディスを引き裂いた!
「ぬっ! な、なんだこいつの力は!」
 今までのヒュウガこと、ヒュウガのイメージからは考えられないほどの力!  やはりこいつも”ネームレス”、例外なく強いということなのだろうか――
「もう、いいだろ。おとなしくあっちいけ。しっしっ」
 ヒュウガはボディスの技を軽くあしらうと、面倒臭そうに、ボディスに対してしっしっと手で追い払うようにそう言った、しかし――
「ふっ、くくくくく――なにかと思えば、それで終いか。確かに強いが――その程度では私は倒せぬ!」
 ボディスは再び、ヒュウガに襲い掛かった!
「あー、しんど――」
 すると、ヒュウガは欠伸をしつつ、再び衝撃波を発射した。
「ふはははは! その程度で私を倒したと思うな! これで貴様も終わりだ!」
 ボディスはヒュウガの放った衝撃波をかぶった、しかし、それでもボディスの勢いは止まらず、そのまま接近!
「え? ああ、諦めないのか、仕方のないやつだ」
 ヒュウガは、今度は剣先を振り下ろすと、再び衝撃波を発射させた!
「ふん! 2つも3つも来ようと同じこと!」
「しかし――」
「まあ、そこまでは予備動作みたいなもんだからな。てなわけで、次の4つ目も頼むよ」
 そういうと、ヒュウガは飛び上がり、近づいてきたボディスの付近めがけて思いっきり振り下ろした。 その場に強烈な落雷が発生し、ボディスの身体ごと貫いた。
「ったく、こんな小手先の技で、口ほどにもないやつだな。 でもまあ、”落雷のボディス”だっけ? 文字通りにしてやったんだ、ありがたく思ってくれよ」
 それを言うなら”雷電のボディス”だが、名は体を表す”落雷”になってしまった、 ヒュウガはそれでもやっぱり”ネームレス”、彼の強さは本物であることがお分かりいただけたであろう。