そして、レンバル軍を殲滅するプリシラとラミキュリア。
「今なら正面から奇襲をかけても大丈夫そうですね!」
その前段階で下僕たちを左右の両サイドから奇襲をかけさせているため、戦力が2つに分散されている状況となっていた。
そしてその、2つに割れているところに手薄な正面からプリシラとラミキュリアの小隊が突撃する作戦だ。
相手は文字通りの背水の陣の構えの状態なのはどこも同じだけれども、それでもなんとかして突破口を見つける必要がある。
そこは各々の実力でカバーする範囲となる。
「くっ、今度は女2人かっ!」
その男は見知らぬ軍勢に奇襲攻撃され、焦っていることがわかるぐらい、ものすごい剣幕で威嚇していた。
「プリシラさん、あの方がレンバルです!」
ものすごい剣幕で威嚇していた男こそ、東軍の将・レンバルだった。
「そう、あなたが。悪いけど、ここから先には進ませないわ、覚悟なさい!」
そう言ったプリシラは剣を操り、水の精霊のような幻影を出すと、それを即座にレンバルに命中させた!
「ぐはっ! なんだこの女は!」
「まだです! 次はこれを喰らいなさい!」
次は、風の精霊が現れると、それをレンバルに飛ばした! レンバルの鎧を切り裂いていく、レンバルは少し辛そうだ。
「ぐっ、小癪な小娘め! その程度でこの俺に勝てると思ってか! これでもくらえ!」
黒のレンバルは闇の闘気を放出すると、プリシラめがけて発射した!
「させないわよ! 下僕! プリシラさんの盾に!」
ラミキュリアはとっさに下僕に命令した。その下僕は重厚な鎧で身を固めており、いかにも頑丈そうだ。
「はいっ! ラミキュリア様っ!」
下僕はすぐさま反応すると、さらに――
「下僕! あなたはものすごく強い――」
重装備な下僕に闇の闘気が被弾したが、プリシラの誘惑魔法の力でその下僕は勢いよくはじき返した!
「なっ、なんだと! 俺の攻撃が、効かないだと!?」
「この俺がいる限り! 女神様にはかすり傷一つ負わせやしねえ!」
元々アウトローだったはずの下僕だが、この時ばかりはとても頼りになった。
それに対し、レンバルはさらに焦っていた。
すると、レンバルは何かに気づき、すぐさま部下に総攻撃をかけるように命令した。
「そうかっ! この女共、妖魔の類だ! お前ら、こいつらを、この女を集中して始末しろ!」
気が付くのが遅い。
「ラミキュリアさん!」
プリシラは聖なる魔法で敵の侵攻を妨害すると、ラミキュリアに合図した。
それに対してラミキュリアは修行で体得した魔法、炎魔法を放った。
「さあ、あっついわよ!」
木々に燃え移らないよう攻撃相手へのロックにも成功、
こうすることで、魔法の効果をしっかりと絞ることもできる、敵を一度に焼き尽くせた、
ラミキュリアの修行の成果が如実に表れていると言えるだろう。
「ぐぬぬっ! 怯むな行け! 殺せ!」
レンバルはさらに焦って再び総攻撃を仕掛けようとしてきた、しかし――
「熱いのなら、消化して差し上げます――」
プリシラは再び水の魔法剣によって水精を召喚すると、今度は水精が上空に飛び上がった。
すると、あたりには槍のごとく雨が敵を貫いた!
「ぐはあっ! うあっ、ああっ!」
レンバルたちは辛そうだ。
「今度は、びっしょりと濡れて可哀相ではないですか?」
と、ラミキュリアが言うと――
「そうですか。では、仕方がありませんね――」
今度は剣にそっと吐息を吹きかけると、そこから炎が発し、敵めがけて炎の魔法剣による爆炎が発生した!
「ぬわああああああ!」
その周囲の敵は一度に炎によって高々と打ち上げられた。
その技は、明らかにリリアリスが使用する技と同じ技だった。
「うふふ、ごめんなさいね。でも、悪いのは私じゃあありませんよ」
と、プリシラは言い捨てた。しかし、敵はみなパニックになっていた。
吐息……あの剣技には誘惑魔法が含まれていたようだ。
その後、敵の東軍は直ちに壊滅、早期に決着した。
一方でディアナ様はザワールを――
「そうか、貴様はシェトランドの女だな。
だが、ローナか、シャトか、それとも……むぅ、わからんな――」
シェトランド人を相手に苦戦していることまで把握できたザワール。
一通りのシェトランドと戦い、なんとか生き延びているため、
それなりにシェトランドという相手に経験はあるが、この相手が誰だかわからなかった、しかし――
「しかし――万人斬りとも似ているようだがそれとも違う、そもそも、万人斬りは男だ」
まさかその万人斬りが目の前の女に化けているとは夢にも思わないだろう。
「だが! 敵とあらば死あるのみだ! シェトランドというのなら尚更な!」
とは言うものの、かつてはシェトランドでも最強クラスの実力を持つ万人斬りと呼ばれた者の腕を前にして、
ザワールが勝てる可能性は非常に低かった。
ザワールはディアナに対して繰り返し攻撃を繰り返すが、叶うはずもなく。
「くっ! なんだ貴様! 一体、何者だっ!」
「私は見ての通りの者だ、それ以上の何者でもない」
イケメン補正なのか美人補正なのかわからないが、あまりにかっこよすぎて一部の女性陣が狂喜乱舞しそうである。
この人、本当に一体何者なんだろうか、その点ではザワールに賛同したくなりそうだ。
すると、ザワールはその近くで魔法であちこち攻撃している女を見つけた。
「あの女――まさか!」
それはまさしくレナシエルこと、エレイアだった。
「ふっ、貴様、そうやって余裕でいられるのも今のうちだ……こうすれば、お前も気が気ではなくなるだろう――」
すると、ザワールは卑怯にも、手下たちに銘じてエレイアに集中攻撃するように合図した、ところが――
「そんなことはさせない――」
なんと、ディアナ様の妖艶な気配が周囲を覆い始めた、誘惑魔法だ――
「どうだ、これでお前たちは私しか見えなくなった。
そういうわけだから、余所見などせずに素直にこの私と戦え、いくらでも相手をしてやろう」
……この人本当に、本っ当に一体何者なんだろうか、一部の女性陣が痺れてキュン死する光景も容易に想像できそうだ。
もっとも、キュン死したら一緒に行くことすらままならないだろうが。