エンドレス・ロード ~プレリュード~

遥かなる旅路・天使の舞 第2部 高みへ 第3章 さらなる高みを目指して

第43節 決起

 時は戻り、ルシルメア東部に迫ってくるエダルニア軍に対してプリシェリアが動くときが来た。
「いよいよね。北から敵が襲ってくるわよ。」
 エダルニア軍は上陸に際して警戒しているらしい。 既に先遣隊らしい者が少数名上陸して偵察してきていることをガレア軍の調べで分かっているようだ。 そして、ここへ上陸するために大挙して押し寄せてきているという。
 その明け方――
「私はガレア軍と合流するためにルシルメアまで行ってくるわ。」
 リュミーアがそういうと、プリシラとディアナは頷いた。
「西側はリュミーアさんに全部お任せいたします。 中央は下僕たちを使ってください。500人いれば足りますか?」
 プリシラはそう訊ねるとディアナは答えた。
「そうですね、ザワール軍は数が多めのようですので助かります。ところで、東側は?」
「東側は300です。残りは万が一に備え、この拠点の守りに従事します」
 プリシラが答えると、
「そんなに控えめな人数で大丈夫? 相手は倍以上いるのよ?」
 と、リュミーアが指摘した。
「私たちは”ネームレス”とシェトランド人です、この程度の差は大きくないと思います」
 と、プリシラは強きな姿勢であることを話した。それにはリュミーアも賛同した。
「ふふっ、その通りだけどね。」
 さて、その”ネームレス”とシェトランド人とでどこまで行けるのだろうか、誰もがドキドキしていた。

 まだ日が昇らないうちの薄暗い早朝、6人は、攻撃のために拠点に移動していた。 その際、以前にアールが置いていったジープを使用して移動した。 流石に1,000人以上が一斉に移動するほどのリソースはないが、 6人は一足先にいち早く攻撃拠点を抑えるためにやってきた。
「この辺りがこの地方の中心部のようです」
 ラミキュリアがそういうと、リュミーアは頷きながら言った。
「じゃあ、ここを絶対防衛ラインとしましょ、越えてくることはないと思うけれども念のためにね。 ここを越えられたらアウトということで、この森が焼け野原になる可能性だってあるから覚悟して望んで頂戴。」
 リュミーアの話に対して全員は頷き、息をのんだ。 ちなみに、この拠点は第4波の攻撃地点にもなっている。
「場所柄、電波環境があまりよくないから、攻撃を開始する時間を決めましょう。 程よく午前9時きっかりでどう? その時間に第1波を発射するから、3分経ったら第2波をお願いしていい?」
 リュミーアが訊ねると、プリシラとディアナは頷き、それぞれ返事した。
「そうですね、そのぐらいの時間にしましょうか」
「いいですね! そしたら間髪を入れずに第3波を実行しましょう!」
 プリシラとディアナ、ラミキュリアとレナシエルは簡易的な陣を張りながら、リュミーアとシェルシェルを見送った。 一方でリュミーアとシェルシェルは再びジープに乗り込み、ルシルメア方面へと向かっていった。
「行ってらっしゃいませ!」
「行ってらっしゃい!」
 ラミキュリアとレナシエルは2人にそれぞれそう言った。

 攻撃拠点を設置後、プリシラたちとディアナたちは分かれ、プリシラたちは北東方向へと進んでいった。
「ラミキュリアさん、この場所でいいのですか?」
 プリシラがそう言うと、ラミキュリアは返事をし、さらに話をしだした。
「あと少し進むとケンダルスに到着します。 以前にも簡単にお話しましたが、ケンダルスは中立の宗教国家で、 戦に巻き込んだが最後、すべての国を敵に回してしまうほどの強い条約で守られているため、 エダルニア軍もこの拠点に対してはかなり慎重に動いているハズです」
 それに対してプリシラは言った。
「なるほどです、ケンダルスの位置はある意味重要な感じですね。 ということは、私たちも注意しなければいけないってことですよね?」
 ラミキュリアは頷き、さらに話をしだした。
「それよりも昨日のお話の続きですが、プリシラさんって彼氏とかいないのですか?」
 いきなり唐突に……すると、プリシラは楽しそうに答えた。
「もちろん♪ 私の彼はリファ様ですね♪」
 それに対してラミキュリアも楽しそうに言った。
「まあ、奇遇ですね♪ 私の彼氏もアール将軍様こと、リファ様ですわ♪  ん、でも、それだと、リファ様は二股をかけていることになるのでは?」
 すると、プリシラが楽しそうに答えた。
「リファ様なら、二股どころか、三股四股……もっともーっと女の方がいらっしゃいますわ♪  あんなに素敵な方ですもの、何股かけられたって仕方がありませんわ♪」
 それに対してラミキュリアは賛同した。
「確かに! ……まあでも、それを言い換えると、結局は”彼氏としては適当、結婚相手としては不向き”ということですね。 やっぱり、プリシラさんもそう思ってます?」
 プリシラは答えた。
「ですね、というよりも、それはどの女性も、そして何よりリファ様自身がそう思っていらっしゃることですからね。 あの方のアレはあくまで”そういうキャラ”なんですよ」
 しかし、ラミキュリアは――
「でも、”そういうキャラ”だってわかっててもやっぱりリファ様は理想の方ですよね!」
 それについてはプリシラも賛同した。
「そうそう! やっぱりリファ様は素敵♪」
 リファリウスはそういうキャラ、謎が謎を呼ぶような発言だが、話題は女子トークだった……。

 他方、中央の撃破軍であるディアナ様の陣営は――
「ディアナ様! 美しき麗しきディアナ様! いかがいたしましょうか!」
「じゃあ、偵察でもしてきてくれるかな」
「はい、承知いたしました!」
 ディアナ様は完全に下僕をこき使っていた。
「……面白っ」
 ディアナ様は鼻で笑いつつそう言った。正直なところ、気に入っていたのである。
「ディアナ様! ディアナ様! ご機嫌ですね!」
 レナシエルさんは訊いた。
「いや、他の男というのがどんな生物かと思って――」
 それもそうだけど、以前に遭遇したことがある妖魔系の敵の気持ちもわかるような気がしていた。
「エレイア、私は、この力を正しく使うよ」
「うん♪ ディアナ様ならそうだと確信してる♪」
 そしてレナシエルも、そんなディアナ様を見て失った自身を取り戻しつつあった。
「よし、ここに陣を張る! 合図が見えたら出撃だ、いいな、お前たち!」
 と、ディアナ様が麗しい大声でそう言うと、周囲から「ウオー!」という雄たけびがあがった。 まさに、現世におけるジャンヌダルクである。
「ディアナ様! 私もあなたについていきます!」
 レナシエルは楽しそうにそう言った。