ガルバート軍に対抗する防衛軍の指揮をはジェタに任せた一方、アールとエイジはルシルメアの町へと戻ってきた。
「なあ、そういえば俺らは何をするんだ?」
エイジがそういうと、アールは答えた。
「うん、実はね、ガルバート軍の一部の軍勢がルシルメアの東部で行方が分からなくなっているってシャイズ君が言うんだ。
ルシルメアの東部ってほら、未開の地で全然情報がないだろ? だから、調べようと思ってね。
ガルバート軍の残党にやられでもしたらシャレにならないし、今のうちに芽を潰しておこうと思ってさ。」
そういうとエイジは頷いた。
「なるほど、で、何か手掛かりでもあるのか?」
それに対してアールはお手上げとでも言いたそうな態度で答えた。
「うん、まったくない。だから、キミはこれからシャイズ君にあって詳細を聞いてきてくれればいい。
私はとりあえず、直接東のほうへ行ってみて様子を探ってくるよ。」
それに対してエイジは心配そうに言った。
「は? 当てもなく森の中を探しに行くっていうのか? 大丈夫なのかそれ?」
「大丈夫、ガルバート軍の残党がルシルメアを攻めるために常駐するということなら、
少なくとも、残党ということを考えてある程度町の近くのほうにいることを考えて、そこまで遠くへは行かないよ。
それに、あくまで様子を探ってくる程度、事を荒立てると後が面倒だし、
だから今回は本当に近くの様子を見てくるだけだ、心配はいらないよ。」
それを聞いたエイジは少し安心した。
「でもな、だったらもう少し大人数でやった方がいいと思うのだが――」
アールは答える。
「まあ、それぐらいの人数がいたらジェタさんの手伝いをしてほしいからね、
今回は私一人で充分だ、とにかく、様子を見てくるからシャイズ君に話を聞いてきてほしい。」
というと、アールはその場から去った。
「……まあ、本人がそれでいいならいいか」
アールは森の中に入り、10数分は経っただろうか、次第に何やら遠くのほうからいい匂いがしてきた。
「ん、この匂いは――」
なんだろう、アールは、いや、リファリウスは、なんだか懐かしいような感じのする香りだった。
「この香りは、まさか――」
リファリウスには心当たりがあった、そのまま誘われるかのようにそのまま歩いていくと――
「!? しまった、崖か――」
茂みを突き抜けて出ると、そこは崖だった。
完全に油断していたリファリウス、その場から下のほうへと転落してしまった。
なんとか着地のタイミングで魔法を地面に打って落下のショックを和らげたが、
とっさのことだったのでうまく着地できなかったようだ。
「くっ、しばらくすれば、治ると思うが――今はこのままじっとしているしかないか、仕方がない――」
リファリウスはそのまま気を失ってしまった。
そして、リファリウスは気が付くと、そこは民家の中で、自分はベッドの上に横たわっていた。
「ここは――ひょっとするとひょっとするな――」
そこへ、とある女性が1人家の中にやってきた。
「あら!? もう気が付かれていたのですね!?」
女性は慌てた様子でそう言った。
その装い、どこかのお嬢様を思わせるような清楚で可愛らしい見た目だった。
「おやおや、やっぱりそうか、
私を家まで運んで解放してくれたのは可愛らしいお姫様のような精霊様だったということだね。」
リファリウスはにっこりしながらそう言った。それに対して女性は答えた。
「あら? まさか、私たちの存在を知っているということですか?」
リファリウスは答えた。
「もちろん。
妖術から放たれる特有の香り、それにキミのその服装と見た目――
こんなところにプリズム族の里があるだなんて思いもしなかったけれども、
でも、キミらはプリズム族であることはなんとなくわかったよ。」
これが、リファリウスとラブリズの里のプリズム族との馴れ初めだった。