それから数分が経ったが、ラミキュリアとプリシラは熱心に特訓を続けていた。
一方でリュミーアとシェルシェルのほうも、リュミーアを師にシェルシェルが何やら特訓していた。
それはプリズム族の極意とはあまり関係なく、普通の戦いの訓練だった。
そんな中、リュミーアは特訓を続けているラミキュリアとプリシラの2人を見ながら何かを考えていた。
「変身術、ね――」
「ん? お姉様、どうかしました?」
シェルシェルはリュミーアの様子が気になっていたので訊いてきた。
「うん、ちょっと、ね。」
すると、リュミーアは出し抜けにプリシラに話しかけた。
「なんです?」
「うん、あのさ、今ちょっとシェルシェルと話をして考えていたんだけどさ。
この変身術って、他人に対しても使えるの?」
プリシラは可愛らしい仕草で少しだけ考え、答えた。
「うーん、やったことがないのでわかりません……ですので、なんて言ってみようもないですね。
そもそも、この術は基本的には自分の意思で使うものだと思っているので――」
すると、リュミーアさんは頷いた。
「確かに、自分の意思で自分に対してやるもんだから、試してみないことにはわからん、か――」
プリシラは逆に訊き返した。
「あの、一体、何を?」
「うん、いやさ、5人の女が頑張っている間、やっぱり1人だけ”除け者”は可哀相かなと思ってね。」
その後、リュミーアとプリシラはラミキュリアとシェルシェルを泉に残し、
レナシエルとディスティアが止まっているホテルの部屋へと直行した。
レナシエルとディスティアは、あえて自分たちで宿を取っていたようだ。
リュミーアの呼びかけに対し、宿泊している部屋から出てきたレナシエル、
リュミーアは彼女に計画を伝えると、彼女はその計画に対してものすごく乗り気だった。
一方でディア様はシャワーをしているらしいので、今は一旦、後回しにして、計画の進行を早めることにした。
レナシエルはディスティアに出かける旨を伝えると、
リュミーアとプリシラを伴った3人で再びショッピングに繰り出した。
時間的に閉店もそれなりに近くなりつつある。
「さーて、ディア様ほどではないけれども、
一応私の体格がある程度参考になるんじゃあないかな?」
リュミーアはリファリウスに戻ると、プリシラはいきなりリファリウスの左腕をつかんだ。
「あははっ、相変わらず、イケメンですね♪」
「あっ、ずるい! 私も!」
レナシエルはリファリウスの右腕をつかんだ。その状態、まさしく、両手に華である。
「まったく、ディア様もうらやましい人だね、いつもこんなことしていたのか。」
と、リファリウスは言うが――
「それなら、リファ様だって、一緒ではないですか♪」
と、プリシラは若干甘えたような声でそう言った。
「そうですよ、そうですよ♪ むしろ、リファ様のほうがいつもいっつも女の人がべったりではないですか♪」
レナシエルの指摘も鋭かった。リファ様は女性陣の憧れの的なのである。
それはともかく、リファ様の身体を借り、3人は目的のものを購入した。
その後、リファ様はリュミーアへと再び変身、3人でディア様を迎えに行った後、
そのまま例のエレベータの地下階へとやってきた。
ディスティアは、例によってあのエレベータで地下階についた時の状況については流石に驚いたが、
とにかく言われるがまま、レナシエルを抱えて籠から外へ飛び降りた。レナシエルは喜んでいた。
それに続いてリュミーアはプリシラを抱えて飛び降りると、プリシラもなんだか喜んでいた。
ディスティアについては、マイナーな種族であるプリズム族について、
詳細はともかく、ある程度知っていたようだ。
4人は話をしながら”しろゆめの泉”へとやってきた。
「プリズム族の”聖地”と言われても、そういうのが存在するという程度の認識しかないのですが、
この先に、その”聖地”、つまり、”しろゆめの泉”と呼ばれるものがあるのですね?」
「はい、そうです。
そして、その泉には固有の名前があり、ここの泉は”女神の秘密の園”と言います」
ディスティアの問いに対してプリシラが答えた。ディスティアの呑み込みは早かった。
「でも、男性が入るのはマズイのでは?
よくはわかりませんが、プリズム族の”聖地”というのは男子禁制だと聞いたことがあるので――」
確かに、”しろゆめの泉”はプリズム族の掟では男子禁制の”聖地”だと言われているため、
ディスティアの指摘はもっともなのである。
「確かにそうなのですが、そもそもここは私が勝手に作った場所ですので、
そういうことは気にされなくて大丈夫ですよ」
”しろゆめの泉”が何故男子禁制なのか、それはやはり、
その里にいるプリズム族の女性の能力が満ち溢れた空間だからである。
つまり、癒しの力と妖かしの力が満ち溢れた空間であるため、
その場に男が入るとその妖気に取り込まれ、一生をその場で終えてしまうためである。
そうなるともはや手に負えない、だから、男子禁制なのである。
しかし、ここはまだ5人の女性の力しか働いておらず、
ラブリズの里の”ラブリスの聖地”ほど、多くの女性の力が働いているわけでもなく、
どの女性の色香に惑わされるかもまだ特定できる範囲で、それに、
ディスティアの場合は大体レナシエルことエレイアの色香に取り込まれやすく、
彼女の意志でなんとか正気を保てると思われるため、それほど心配はないと思われる。
「ふふふっ、ディルってば、心配しなくてもいいのよ。
ディルはこの私の力で取り込んであげるわ――」
レナシエルはディスティアが泉の効果を受けるよりも先にディスティアを自分の力で取り込んだ。
なお、泉の効果によってその効力は増大するため、ディスティアは、
「うっ、エレイア――」
簡単に取り込まれ、心地が良かったのか、そのままぐっすりと眠りこんでしまった。
「うふふっ、ディル、おやすみ――」
今夜はここで止まることにした5人、
プリシラ・リュミーア・レナシエルの3人が出かけている間にラミキュリアとシェルシェルが、
ここで寝るための支度を予め整えていたため、ここで直ぐに寝ることになった。
「さーて、夜更かしは美容の天敵、今日はもう寝ましょう。」
リュミーアの一声で、今日はみんなでそこで眠ることにした。