リュミーア、プリシラ、ラミキュリアは3人で話を始めていた。
「えっと、なんて言えばいいのかな、その――」
リュミーアは遠慮がちに話をし始めた。
彼女という人物を考えると、なかなかない話の切り出し方である。
しかし、とにかくリュミーアはある程度言いたかった内容を伝えると、
2人はその話をなんとなく察した。
「本当はこんな話をするのもどうかって感じなんだけれども――
でも、あえてこの話をしようと思ったのは他でもない、相手がプリシラだからなのよ。」
それに対し、プリシラは意図をすぐさま察した。
「まあ、そういうことなのよ、プリシラもごめんね――」
リュミーアは非常に申し訳なさそうに言うが、プリシラは首を横に振って答えた。
「そんなことはお気になさらなくて大丈夫ですよ! 私はお姉様の妹分ですから!
ラミキュリアさんのことも気にかけてくださったんですよね! 本当に、流石はお姉様です!」
何がごめんで何が流石なのか――ラミキュリアにとって、それをすぐに理解するのは難しかった。
あれからプリシラとラミキュリアは、2人でお互いの話し合いをした結果、完全に意気投合していた。
「やっぱりラミキュリアさんは素敵な方です! その服装も様になっています!
それにしても、敵勢力の男たちを一網打尽ですか! すごいですね! 私にはそんなこと――」
「な、な、なにを言っているのですか、そんなこと言ったらプリシラさんのほうこそ――」
リュミーアが口をはさんだ。
「はたから見れば、あなたたち2人とも同類よ。
どちらも2人とも羊の皮を被った狼ならぬ狐だからね、むしろ女豹と言ってもいい。
普段はおとなしいフリして裏では女の顔全開で男たちを虜にしているんだからね♪」
リュミーアは楽しそうに言うと、2人は慌てて全力で否定した。
それを見たリュミーアは笑いながら言った。
「ふふふっ、あんたたちって本当によく似ているし、その辺の女なんかとは比較にならないぐらい可愛いわよね。
なんというか、性格も感覚も似ているし、あんまり女狐って感じもないし。」
そうなのだろうか、2人は可愛げな仕草をして考えていた。
確かに、プリシラもラミキュリアも男たちを従える能力はいるものの、
どちらも男たちを従えて滅茶苦茶なことをするような女王様タイプではない。
むしろ、どちらも自らが率先して行動をするようなタイプである。
ラミキュリアの場合は見た目こそ女王様、プリシラの場合は可愛いお姫様を自称しているけれども、
2人が抱いているのは自らに対するものであり、早い話、ナルシストなのである。
そのクセどちらも控えめな性格と、このご時世で割と珍しいタイプの女性なのである。
「ま、そういうわけで、ラミキュリアを連れてきた真の目的の話をしたいわけなんだけど、
教えを乞うのであれば似た者同士であるほうがいいかなと思って、
プリシラに、ラミキュリアの誘惑魔法の師匠になってもらえたらいいなと考えていたのよ。」
と、リュミーアは言った。ようやく、ラミキュリアを連れてきた本当の目的について切り出した。
もちろん、ラミキュリアとしても異存はなかった、プリシラとは意気投合するような仲、むしろ大歓迎だった。
しかし、ラミキュリアもまた、レナシエルと同じように、その能力自身に恐怖も抱いていた。
「大丈夫。恐怖を抱いているうちは間違いは起こらない。
この力は特に気持ちが乗りやすいからね、だから、やばいやばいと思いながら使っていれば気を付けられるハズよ。」
と、リュミーアは言うが、プリシラは――
「私は、この地上にいる下僕相手に気を付けようなんて思ったことないですけどね。
むしろ、あんたたちにとっては、この美しい私の美貌こそがすべて!
なんて感じで思い切って使いましたけどね」
そうきっぱりと言い切った。
確かに考えてみると――プリシラが”ネームレス”としてこの地に現れた際の話、
この地方は大都市のはずれにある未開の土地――
そういう未開の土地だからこそ、隠れ住むには都合がいいという連中もいる、アウトローたちだ。
そんな狼たちが渦巻く環境下に子羊が現れたら――自分に襲い掛かってくる狼共相手に躊躇している暇なんてない、
だからこそ子羊プリシラは女狐としての力を解放させたのだ。
そう、力を使うときには、自らの判断力と決断力も試されるのである。
それを言われると確かに、ラミキュリアにも思い当たる節があった、
そう、テレフ・テリトリの連中に誘拐された時の一幕がまさにそれである。
ラミキュリアはプリシラの下で、いくつかの能力を体得していくこととなる。
単に誘惑魔法というだけでなく、応用技なども修得していった。
「そういえば、シェルシェルさんとレナシエルさんは?」
気が付けばだいぶ時間が経っていたので、ラミキュリアは気になっていた。
「シェルシェルならそこで寝てる。疲れていたのよ。でも、レナシエルは、まだ瞑想中よ。
やっぱり賢者様の集中力はすごいわね。」
と、リュミーアが答えた。
時間的にも遅く、どうしようか考え始めていたが、
ここはプリシラが封印している場所なので、置いていくわけにもいかなかった。
「まあいいわ、賢者様にもう少しだけ付き合いましょ。」
と、リュミーアは言った。2人は頷いた。