リュミーア、シェルシェル、そして、ラミキュリアの3人は、”お姫様”を名乗る女神様が支配する国、
”プリシェリア”へとやってきた。
そして、その国にはリュミーアが言うように城壁もあれば城門もあり、
さらにはラミキュリアとシェルシェルの期待通り、城門から入った正面には大きなお城があった。
お城の手前には広い噴水広場があった。
そして、3人は町の中央の噴水広場までたどり着いた。
その噴水の手前に佇んでいた、神秘的な印象の女性こそが――
「プリシラ! 久しぶり! リュミーアよ!」
リュミーアがプリシラに話しかけた。
「リュミーアさん! お久しぶりですね! お待ちしてました、どうぞ、私の部屋へ、ご案内します」
魔女だとか女神様だとかお姫様だとか、いろいろと言っていたけれども、プリシラは案外普通の娘だった。
プリシラの服装はラミキュリアやリュミーアに似ていたが、
それを見てラミキュリアは思った、私のこの服装は、おそらくプリシラさんのこの服装を参考にしたものだろう、と。
ただし、フリルフレアのオフショルダートップスに、
可愛らしいチュール地のフレアミニスカートという点は大体似ているけれども、
ラミキュリアに比べるとセクシーさよりも可愛さのほうが強調されていて、
全体的にライトピンクとベージュの色合いで可愛さ全開なイメージが強かった。
加え、その上から可愛らしい天使をイメージしたシルエットのスケ感満載のアウターを羽織っていて、
彼女はまさに可愛らしい天使そのものといっても過言ではないような神秘さを醸し出していた。
ただし、バストサイズが相応に大きい点はラミキュリアやリュミーアともいい勝負で、
可愛らしい服装からはみ出ている肌の露出とミニスカートから映える女神脚、
さらにカラーリングも相まってそれなりにセクシーさを引き立てていた。
普段からこんな感じの格好をしているらしいが、今回の彼女の服装は若干ラミキュリアに寄せてきた感じもあった。
3人は促されるまま、お城の中へとやってきた。
お城の中はショッピングモールになっており、あちこちキラキラとしていて、
ラミキュリアもシェルシェルも品揃えに目移りしていた。
服やアクセサリとか、気になる品も多く、あとでチェックしておかなくちゃと考えていた。
「ラミキュリア、シェルシェル、気に入った?」
「いいですねー! 後でお買い物してもいいかな!?」
「私もしたいですー!」
リュミーアの問いにシェルシェルとラミキュリアはそれぞれ楽しそうに言う。
「そうね。後でプリシラと一緒に、みんなでお買い物しちゃお♪」
非常に楽しみだった。
ショッピングモールの中を少し進むと、外観がほどほどに華やかな作りのエレベータへとたどり着いた。
それは”お姫様専用”のエレベータらしい。
4人はエレベータに乗ると、内部も外観のイメージにたがわぬ華やかな作り。
そのまま最上階へ着くと、”お姫様のお部屋”のエントランスへとたどり着いた。
そこもまたほどほどの華やかな作りとなっていた、そこまでくどくはない。
「プリシラさんって、素敵な趣味をしていますね!」
「ホント! これでいて、この国のお姫様だなんて、すごくうらやましいです! 憧れちゃいます!」
シェルシェルもラミキュリアも感激しながらそう言った。
彼女は”お姫様”とはいうけど、現実的な立場は”名士”にあたる。
それに、肩書はあくまで”女王様”でなくて”お姫様”である。
お城のお姫様といえば、女の子なら誰しもが憧れそうな存在、まさにそれである。
3人はお姫様より部屋の中へと促されると、そこには可愛らしい空間が広がっており、まさに女の子らしい感じの部屋だった。
ガレアにあるラミキュリアの部屋ともいい勝負だそうな。
リュミーアとプリシラは同じソファに、ラミキュリアとシェルシェルは対面のソファにそれぞれ座った。
「へえ、確かに、お姫様の支配力がわかる国ですね!」
ラミキュリアは感激しながら言った。
「そうなのよ。この娘は美貌でこの国を統治しているのよ。」
まさにクレオパトラみたいなものである。
それにしても、はみ出し者やごろつきたちをまとめ上げて一つの町を作り上げたというのは、なかなかすごいことである。
「本来なら誘惑魔法でこういうことをするのは問題なんですけどね――」
プリシラは遠慮がちにそう言った。
「でも、自分の魅力をほかの人に知ってもらいたい! わかります!」
ラミキュリアは興奮しながらそう言った。
プリシラの抱いている念は、どうしてだろうか、自分にはなんとなくわかっていた、
それは女のカンというやつなのかはわからないけれども、そういう印象だった。
「うっふふふ、まぁったく、ラミキュリアってば。」
リュミーアがそういうと、ラミキュリアは我に返った。
「ラミキュリアとプリシラ、あんたたち、気が合うのね。」
ラミキュリアが抱いているそれは、リュミーアも見抜いていた。
話は本題に移り、プリシラが話し始めた。
「下僕たちの話では、この北側からエダルニア軍が迫ってきているとのことです。
この侵略行為、恐らく、みなさんディスタードのガレア軍に影響することではありませんか?」
リュミーアは頷くと、説明し始めた。
「エダルニア軍がルシルメア東部・北から上陸して侵略を開始する。
目的はもちろん、ここから南のほうにある陸繋島付近、
ディスタードのヘルメイズ領に対する攻撃拠点としてルシルメア東部を侵略する。
ルシルメア東部ということは当然のごとく、ディスタードのガレア軍がルシルメアを守るために行動に出ることは必然のこと。
ディスタードのガレア軍とルシルメアは中立同盟を組んでいるからね。」
リュミーアはさらに説明を続けた。
とにかく、エダルニア軍としてはディスタードを攻撃するためにはこの地方を制圧することがカギになってくるため、
軍を上げてでも攻撃を仕掛けてくることだろう。
「でも、エダルニア側としては当然のごとく、ディスタードへと本格的に攻め込む前段として、
まずは自軍の勢力の大きさを見せつけるため、そして、自軍の勢力のさらなる拡大を狙い、
この辺りで拠点を確保したら真っ先にルシルメアの町を攻撃し、自軍の植民地とするでしょうね。
当然、そんなことをしたら戦争になるから、まずは限られた数で秘密裏にルシルメアを制圧、
その後はルシルメアを奪ったことですでに勢力も高まっているでしょうから、
ディスタードのヘルメイズ領も窮地に立たされていることでしょうね。」
だいたい想定されている通りの筋書きなんだろうけれども、リュミーアはさらに数手先まで読んでいた。
「このままディスタードが動かなかった場合は当然そのまま敗北ということだけれども、
たとえ動いた場合でもディスタードは窮地に立たされることになる。
というのも、ディスタードは近隣に仲の良い国がないため、最悪の場合、
この機に乗じて他国がエダルニアに加勢し、包囲されてそのまま国ごと壊滅する可能性すらあり得る。
それだけだったらまだマシな方で、実際には大昔にも起こった大戦の引き金にもなる。」
リュミーアは3人にさらに学校の授業を思い出してほしいと言いながら説明した。
愚かな昔の大戦の引き金となったのは、どこそかの国の要人の暗殺、複数方面において歓迎されない国家統治、
不平等条約と、結んだ不明瞭同盟間の矛盾の顕在化に、誤解を招きかねない不用意な軍備拡張、
そして……小国同士の紛争と、やったらやり返すの考え方の連鎖と、大国の滅亡によって引き起こされる国間の主導権争いである。
当然、それらのうち一つだけが起こるわけではなく、場合によっては最悪全部ということ、
いや、これ以外にももっと他にもということもあり得る話である。
そこで、彼女らに課せられたミッションとしては、そうなる前に未然に防ぐことである。
しかし、このミッションには別の側面もあった、それは――
「だけど、女神プリシラの園の支配者としては、今のこの状況を貴重な人材獲得のチャンスでもあると考える。」
それはどういうことだろうかと思うが、思い出してほしい。
この国は”お姫様”を名乗る女神様が支配する国で、女神様の誘惑魔法によって男たちを支配しているのだ。
その男たちの中にはゴロツキや悪漢、そして、女神様に敵対していた連中が含まれているのである、
つまり、エダルニア軍の男どもを一気に下僕として獲得してしまうこと、
それこそが、今回のミッションにおける最重要課題なのである。
「そこで今回、5体の女神を利用して、一気にエダルニア軍のせん滅、または、下僕を獲得してしまおうという目論見ね。」
5体? リュミーア、プリシラ、シェルシェルとラミキュリア、4体しかいないような気がするのだけれども――
「この際だから、悩殺堕天使様にも手を貸してもらうことにしたのよ。」
と、リュミーアは言った、悩殺堕天使様と言えば――