エンドレス・ロード ~プレリュード~

遥かなる旅路・天使の舞 第1部 悩殺魔女ラミキュリア 第2章 美女の魅力

第17節 無国籍小隊の狙い

 アールはフローナルとの終戦協定の交渉対談の後、ガレアへとあわてて舞い戻ってきた。 ガレアにとどまっている兵士からとんでもない知らせを受け取ったためだ。
「それで、改めて詳しい話を聞かせてくれないかな。」
「はい、メールである程度お伝えしましたが”テレフ・テリトリ”の連中が――」

「”テレフ・テリトリ”の皆様、ディスタード帝国・ガレアの町へようこそいらっしゃいました。 私はここの受付嬢を務めております、ラミキュリアと申します」
 ラミキュリアはていねいに彼らに向かってあいさつした。 相手は5人だけれども、いずれも身だしなみがあまり軍人らしくないというか――賊の類というような印象があった。 もっとも、服装でいえばラミキュリアも他人のことを言えた義理ではないけれども。
「なんだこの女は? アール将軍はどうした?」
「申し訳ございません、生憎将軍は不在でございます。 しかし、ロケットミサイルの返却の件については仰せつかっております。 準備はできておりますのでどうぞお持ちください」
 だが――
「どうぞお持ちください……じゃねぇんだよ!  俺はアールと話がしてえって言ってんだよ!」
 と、怒鳴られたラミキュリアは困惑していた。
「で? やつはいつ帰ってくるんだ?」
「申し訳ございませんが私個人では判断いたしかねます。 何せ、このたびフローナルとの戦いのため出撃しておりますため、いつ帰ってくるかまでは――」
 すると男は関心を示した。
「フローナルだぁ!? なるほど、フローナルねぇ……。んで、勝算はあんのか? 」
「ええ、そのように仰せつかっております。恐らく時間の問題かと思われます」
 男はさらに関心を示し、バカにしたように笑いながら答えた。
「時間の問題ってか!? マジで言ってんのか!? フローナルだぜ!?」
 ラミキュリアは頷いた。すると男は考えながら言った。
「や、待てよ、そういやアール将軍っつったら――なるほど、ねぇとも言えねぇな。 んじゃあわかった、あのロケットミサイルだがおたくの将軍様がいねぇんじゃ仕方がねぇ、一旦出直してくるとするぜ――」
 男はそう言うと次の瞬間――
「悪りぃな、信用問題に関わるんでな! だから代わりにあんたが俺の要求に従ってもらおうか!」
 ラミキュリアに銃を突きつけた! なっ、何をするんですか!  ラミキュリアはそう言ったが、銃で強く突かれるとおとなしく手を上げざるを得なかった。 周囲には何人かガレアの隊員もいるが、こうなると流石に手も足も出せない。
「よーく見りゃあんた、受付嬢ってか? アールもなかなかいい女こしらえているな! 流石はプレイボーイ様だぜぇ!」
「本当にいい女だぜ! この女とならミサイルの100本や1,000本、1,000,000本と交換したっていいぜ!」
「げへへへへ! すげぇいい身体してやがるぜ! 俺のミサイルにも火が付いちまったぜ!」
 ラミキュリアは男たちの下品なセリフに頭にきたけれどもどうにもならない。 とにかく、ラミキュリアはなすすべもなく連中に拘束され、連れていかれてしまったのである。

「そして、ラミキュリアさんは連中に拉致された、と……。」
「すいません、我々の力不足でこのようなことに。 連中の入港時からもう少しセキュリティを徹底すべきでした、迂闊でした――」
「いや、私の判断ミスだ。 特に今はマウナが崩壊した関係で向こうにも人を出している状態、 そして今回のフローナス侵攻といい、ガレアの守りが脆弱になっているのも事実、 ガレア周りの配置見直しを棚上げにしたばかりに起こってしまったんだ――」
 アールはがっくりと肩を落としながら言っていた――
「それと、彼女の命が惜しくば、手始めに指定の場所へガレアで用意したミサイルを3本用意しておけと、要求されています。 一定の水準をクリアしたミサイルであればなんでもよいとのことだそうです――」
 隊員はアールに連中から示されたスペック表を手渡しながら言うと、アールは頷きながら言った。
「それがやつらの手口らしい、フローナスでも似たような話を聞いた。 正体不明の無国籍小隊からの要求で、人質の命が惜しければ、兵器を差し出せ、とね。 やつらは本格的で、狡猾で残忍、小隊とは言うけれども、フローナスの調べでは結構規模の大きい組織だそうだ。 連中が捕らえた人質も、最初は一般人だったそうだが、いつしか上層部の人間までもが人質に捕らえられており、 もはや言う通りにするしかなかったそうだ。今度は我々が標的ということか。」
 それで、マウナから放たれた例の改造ミサイルということになる、 ミサイルの改造はその無国籍小隊である”テレフ・テリトリ”によるものだった、話はつながったが――
「アール将軍、どうしましょうか。」
 ジェタは力なく、アールを頼るように訊いた。
「うーん、こうなったら、言う通りにするしかないね。 連中はあえて輸送船のミサイルを2本とも持ち帰らずに置いていっているところから察するに、 まずはこの2本を差し出して、追加で我々がもう1つ、どんな代物を用意できるか見極めようってところだろう。 我々が指定通りに事を運べるか見届けたら――次のアクションかな。」
 アールは力なくそう言うと、今度は毅然とした態度に改まって話を続けた。
「でも、ただただ連中の言ったとおりに事を運ぶのも面白くない。 だから同時に”テレフ・テリトリ”への侵攻作戦を開始するよ!」
 それに対してエイジは頭を掻きながら言った。
「つってもな、”テレフ・テリトリ”の拠点がわからない以上、侵攻のしようがないのだろう?」
 確かにそうだった、連中の拠点についてはまったく特定できていなかった、前途多難である。
「そうだね、でも、一応手がかりと言えば、 とりあえず、例の電波の発信源が切れたところの一番近い建物かな? そこに行ってからどうするか考えようと思う。 謎の軍隊もいたことだし、何かしらの成果は得られることだろう、確証はないけれども、そこに期待するしか、ないな。」
 アールはいつになく弱気だった。そのさまは他の隊員の目から見ても明らかだった。