本部内にあるトランスポーターよりフローナル浮遊島へとやってきたアール、
交渉によりフローナルを支配する総裁との対談が成立した。
「マウナの連中が撤退したかと思えばいつの間にかガレアの連中と戦っていたというのか――」
「うん、実はそうなんだよね。同じ国の人間が言うのもなんだけどダイムはダメな人だから私がやんないとね。」
「ダイムは力にものを言わせて部隊をどんどん送り続けてきた、我々に攻める隙すら与えないほどにな。
しかし、あのシャッターでことごとくはじき返してやったわ」
「しかし、私には通用しない。残念だけどね。」
それに対して総裁は強く訴えた。
「そもそもディスタードは我々をなんだと思っているのだ?
ディスタードの皇帝のせいで多くのものが奪われている、
それを貴様は……我々からこれ以上、何を奪うというのだ?」
アールは頭を抱えながら言った。
「実は……私もそこで悩んでいるんだ。
皇帝は変だ、それで私は帝国に潜入して将軍をやりながらいろいろとがんばっている。」
がんばっているとは簡単ではあるけれども、その一言で説明がある程度つく。
何故かというと、ガレアのアール将軍と言えばほかの国や勢力軍とは友好関係を築き上げることが得意で顔が利くことでも有名。
特にこのご時世、かの大国クラウディアスとは非常に仲が良く、
さらには長きにわたるルシルメアとの終戦協定を結んだ帝国の将軍としても有名で、
評判が良いのである……ディスタード内部向けにはあくまで侵略の足掛かりとしてという名目だが。
「そもそも皇帝がやろうとしていることや成し遂げようとしていることは人間業とは到底言えない。
だから危険を冒してまで様子を探るしかない。しかし、私にできることと言えば少ないほうだろう。
そのためにはフローナスにもできる限り協力してほしいんだ。」
アールはさらにいろいろと話をした、自分はルシルメアのレジスタンスのフォレスト・フォックスの団長であることも……
まさかルシルメアとの終戦協定対談がヤラセだったとは流石に総裁は驚いた。
しかし、そのヤラセが本当に終戦へと向かっていくきっかけだったのだ、ここだけの話だが。
だが、総裁が真に驚いているのはアールがそのようなことを簡単に話してしまうことだった。
「我の思い違いでなければほんの少し前までお前たちとは戦をしていたハズだが――
我々を信用してそのような話をしているつもりか?」
アールは答えた。
「うん、そうだよ。
というか、”お願いだから私を信用してほしい”じゃなくて”四の五の言わず私を信用しろや”って言っているつもりなんだけど。
だって、我々はキミらとの戦争で勝った側なんだしさ、
それに自分たちを降した敵の将がわざわざ下手に出て話したいって言っているんだからさ、
少なくともそのぐらいのつもりでいてくれたっていいんじゃないの?」
アールがそう言うと総裁は答えた。
「確かに……言われてみればその通りだな。我々は負けた側、勝者には素直に従うしかない。
それに――負けた相手がダイムならまだしも、あのアール将軍なら――いいだろう、お前の言う通りにしてやろう。
そうだ、我々はアール将軍に負けた――そういうことだ、その真意は……もちろんわかっているよな?」
総裁はアールに対して詰め寄りながらそう言った。
「もちろん、それについては期待してもいい。
私の信用問題にも関わるようなことはできないからね。」
各国に顔が利くものとしては迂闊なことはできないということである。
「交渉成立だな。
それで頼みたいことというのは具体的に何をすればいいというのだ?
先に断っておくが、あまり無茶な相談には乗れんぞ」
「あ、うん、そこは心配しなくていいよ。
私が相談したいのは――フローナスと言えば航空技術を復活させようとしているよね、
だからちょっと手を貸してくんないかなってこと、もちろんうちで培ってきた科学技術も提供しよう。
やりたいのは大型輸送機の復刻で、被災した町をいち早く復興するために物資を届けるために使いたい。
先の大戦みたく、戦に利用されていたものを平和維持活動に転用したいんだ。
具体的な計画については追々だけど、飛行機についてはできるだけ早くに実現したいところだね。」