後日、ディスタードへの進軍を開始しようとしているフローナスを抑える手立てがないので、
アールは仕方なしにフローナスに対して応戦することにした。
「これから部隊を送り込むってなるとちょっと大変じゃないか?」
エイジはそう訊くがアールは得意げに答えた。
「いいや、実は中継基地にマウナ軍の兵器がほぼそのまま置いてあるからそれを使えばいいんだよ。
兵器には金に糸目をつけなかったんだからどうせなら有効活用させてもらうことにしよう、そうでなければ流石にもったいない。」
アールはそう答えた。
兵器のために金に糸目をつけなかったのは今は亡きマウナの将、ダイムのことである。
とにかく兵器としての性能は無意味に高いのである、指揮のほうはイマイチだったようだが。
「持っていく必要がないのは楽だな。フローナス島なら戦艦が鬼に金棒ってところか?」
エイジは訊くとアールは得意げに答えた。
「そう……いいよなー、飛び道具ってのは。
確かに、フローナスは島が小さい割に陸上は入り組んでいから戦艦のカノン砲で集中砲火を浴びせる絶好のチャンスだね。」
「……フローナスの連中に同情するしかねえな――」
エイジはそう言った。
アール将軍と言えば遠隔攻撃部隊の運用全般と隠密兵器に長けた戦法が得意なことで定評があった。
遠くからの一方的な大打撃と、その影響下における自軍の部隊の防御が主な仕事となる遠隔攻撃部隊の扱いと、
相手の情報をかき乱しつつ、こっそりと進軍させながら相手に会心の一撃を与える隠密兵器の扱い……
相手の反撃を可能な限り阻止しつつ自軍の被害を最小限に抑える戦い方はまさにアールの得意な戦法である。
「それならば、私は上陸部隊を指揮します」
「私は潜水艦からの襲撃に対して警戒します」
ジェタとシレスはそれぞれそう答えた。作戦はかなり進んでいた。
「うん、2人とも、頼んだよ。
うちの潜水艦の指揮は私に任せてくれ。」
潜水艦も隠密兵器のため、アールの指揮下に入れるようだ。
ちなみに、ジェタは先にも触れた通りアンチ・エアーと呼ばれた戦車乗り、
かつては空挺部隊というのがあったが、それは今や飛来してくるミサイルや魔物ばかりであり、
戦闘機や爆撃機というものは悲惨な戦争を繰り返すうちに使いつくされ、それそのものが失われてしまった。
それはそれでいいことなのかもしれないが、空飛ぶ乗り物自体は世界復興にも使える可能性があるため、
失われてしまったのは実に惜しい。
とにかく、ジェタといえば対空兵器の運用全般に長けており、
対空兵器であるはずの対空戦車でも地上戦をやってのけた実績があるほどの実力者である。
それ以外では歩兵部隊による合戦の指揮が得意で、拠点の占領戦でも実力を発揮するようだ。
そしてシレスだが、アールとは打って変わって戦車などの直接攻撃部隊の指揮運用が得意。
特に注目すべきは反撃時の運用であり、敵は待ち伏せしている彼女の指揮下にある戦車にだいたいボコボコにやられている。
準備は着々と進み、作戦は決行された。
一方でラミキュリアはお留守番、足手まといになるから……ではない。
「ガレアの守りは私にお任せください!」
「うん、こういうときにラミキュリアさんは頼りになるからね、頼んだよ。」
はい、かしこまりました――ラミキュリアはそう返事をしようとすると、アールは思い出したかのように言った。
「あそうそう、あの例の輸送船の積み荷の話だけど忙しい中でリアクションが返ってきてね、
とりあえずロケットミサイルを返すことにしたんだ、多分、不在中に来ると思うけれども。
それでもし来たら、代わりに返してあげられないかな?」
「かしこまりました、とりあえず様子を見る、ということですね?」
「それしかなさそうだね。
この場合は下手に動くより、素直に応じて相手の正体を探ったうえでどうするか考える方がよさそうだね――」
そのロケットミサイルの規模からすると最悪のケースが考えられる。
すぐに攻撃ということはないと思うが、それを改造までしているのだからいずれかは行動を起こすハズ。
しかし相手が特定できなければ意味がないので今回は様子を見てから方針を決めることにしたのだそうだ。