ラミキュリアはいろいろと調べ始めてもらっていた、まずは口の中から体液を採取したり髪の毛を採取したりと。
ただ、その髪の毛自体がなかなか特殊な性質で、エイジは不思議そうに観察していた。
「こいつはヴァイオレット・カラーとでもいうのか、
その中にラメ……光沢を発する粒みたいなものが含まれているようにも見えるがどういう髪の毛の構造だろう?」
「調べてくれるのですよね?」
「もちろん。だけどこれまでの経緯も確認しないとな、
自然じゃあこれはそう簡単に起こりえないから話も聞かせてもらいたいもんだ」
エイジはラミキュリアからいろいろと聞きながらいろいろと調べていた。
その話の流れでラミキュリアはエイジに訊いた。
「あの、そういえば前もって採取したサンプルの結果ってどうなっています?
今日あたり聞けるって伺っていますけれども――」
サンプルは血液だった。
「ん? ああ、実は俺もまだ見てないんだ……
以前アールのやつに”本人の許可なしに何勝手に先に見ているんだ? キミにはデリカシーがないのか?”とか、
とにかくボロクソに言われたからな、だから今回も本人が来るまではまだ見ないことにしたんだ――」
エイジもなかなかの苦労人のようだ。
「ああそうそう、なんたって美女の秘密だからね、だから調査の結果については他言無用だ。」
アール将軍が去り際に言っていたこのセリフ、
その結果というものについてはまさしく美女の秘密――アール将軍の徹底ぶりときたらなかった。
ただ、ラミキュリア当人としては、本来であれば秘密にしておいてもらいたい内容である。
そのことを物語るかのように、数分後、奥の部屋からものすごい音が聞こえてきた、
ラミキュリアはあわててそちらの部屋へと向かうと、そこには尻もちをついてひっくり返っているエイジの姿があった。
「どう……されましたか?」
ラミキュリアは心配そうにエイジに訊ねた。
「えっ……あのさ、この血液、本当にラミキュリアさんから採ったものだよな?」
エイジが調べるサンプルを間違えなければそれは間違いなくラミキュリアのもののハズである。
ラミキュリアはそう言うと、エイジはサンプルを間違ってないか何度も何度も確認していた。
しかし、どう見てもサンプルを間違えようがない状態だった様子である。
「それで――どうされたのでしょうか?」
ラミキュリアは改めてそう訊くとエイジは間髪を入れずに訊いてきた。
「あのさ、ラミキュリアさんってさ、何か変な病気とかかかったことがある?」
「病気ですか?」
病気といえば……彼女はある意味病気といえるものが1つ、心当たりがあった。
いや、それこそがエイジがひっくり返っている原因なんだろうとラミキュリアは予感していた。
しかし、エイジとしては病気云々の話はあっても、
このサンプルの結果は病気によってもたらされる現象としてあり得るのだろうか、そこに疑問を抱いていた。
そのため、エイジは意を決し動揺しながら訊いた。
「実は……アールから染色体の検査をするように言われていてね、
今はその結果を見ていたんだけど、
それがどういうわけかラミキュリアさんが生物学的には男であることを示して――」
そう言い切ったエイジは震えていた。しかしラミキュリアは優しく諭すようにふるまいながら言った。
「なーんだ! そんなことだったんですね!
私が変な病気に侵されているんじゃあないかって心配してしまったじゃないですか!」
エイジは目を丸くした。
「そっ、そんなことって――いやいやいや、この結果だと――」
ラミキュリアは男であることになる――それについて彼女はどう受け止めるのか、
エイジはそう聞き返すとラミキュリアは改まって話をし始めた。
「ええ、それはもちろん事実として受け止めますよ。
第一、私・ラミキュリアは元々は男ですからそんな結果が出たって不思議ではありませんよ」
という返答に対してエイジは尻もちをついたまま「な、なんだってー!?」
そう、彼女……ラミキュリアが”悩殺担当の誘惑美女”という地位を確立するまでには、
それはそれは長くて遠くて果てしない道のりがあったのである。