リファリウスはラトラが持っていた似たような機械を数台まにあわせで作り上げると何人かに持たせていた。
「あれ? リファリウスさんたちのは?」
ラトラが訊くとリファリウスは得意げに答えた。
「原理はわかっている、作れたんだからね。
だから、わざわざ機械に頼らずとも、自分の能力を使えば同じようなことはできるよ。
それに――外から来ているんだから、それなりに違和感は感じているよ、この国の空気にはね。
ねえ、アリエーラさん?」
「そうですね、クラウディアス特有のものかとは思っていましたが、
それがまさか、そういう理由によるものだっただなんて――考えてもみませんでしたね。」
リファリウスとアリエーラは自らの手をかざして魔力もとい、精神の力の濃さを感知していた。
「でも、この場の力は静的なエネルギーですから意識していなければ気が付かなかったかもしれません――」
アリエーラがそう言うとリファリウスは頷きながら言った。
「確かに力がここまで寝ている状況じゃあ気が付くまでに時間もかかるし、
最悪、そのまま気が付かない可能性もある、あくまで違和感のままでしかない可能性もあるかもね。」
「場合によっては違和感にさえ気が付かない可能性もあります。
ですが、ラトラさんが持っていた機械があって初めて考えるきっかけにはなりました。」
すると、そのように話し合っているアリエーラとリファリウスの様子を見ていたエミーリアは、
リファリウスの元へとやってきた。
「ねえねえリファリウスさん! アリエーラさんって綺麗な人ですね! 恋人ですか!?」
エミーリアは興奮しながらそう訊いた。
「恋人? ……うーん、まあ、当たらずしも遠からずってところかな。
確かに友人としてはあれだけ美人すぎると放ってはおけなくてね。」
そう言われたアリエーラは顔を真っ赤にして照れていた。エミーリアはさらに話をした。
「やっぱりそうですよね! 私もアリエーラさんと一緒に居たいって思います!
それでリファリウスさん、お兄様って呼んでもいいですか?
アリエーラさんのこともお姉様って呼んでいい?」
エミーリアはさらに興奮してそう言った。
彼らとの距離が短くなるまでにはそれほど時間はかからなかった。
召喚壁についてわかったこと、それは幻界とこの世界とを結ぶトンネルのようなものであり、
それは間違いなく伝説の”幻界碑石”であるというアリエーラの説に間違いなさそうだった。
あの調査の結果、アリエーラとリファリウスには幻界碑石がもたらすトンネルからは”向こう側”というのがうっすらと見えたのだ。
あの奥に多くの幻獣が住んでいる……そういう気配を察したのだ。
そして、複数人による大規模な精神値計による調査により、重大なことが判明した、
それは”幻界碑石”はトンネルのための”標”ではあるけれども、
アリエーラとリファリウスがにらんだ通り、クラウディアスの土地自体が巨大なトンネルであることだった。
むしろ、の方が説明が付く、この大陸は召喚獣に守られていて外敵の侵入をも許さない土地なのである。
使い手が少ないこの状況では宝の持ち腐れではあるけれども、それでもほかの国にも引けを取らないような防御力があることは明白だった、
それで使い手がいるとすれば――確かにクラウディアスが屈指の強国と言われるわけである。
あの後、アリエーラとリファリウスは誘われるかのようにお城の5階のテラスへと赴いた。
「ここはいい場所だね! やっぱりこの光景、知っているような気がするよ。」
「確かにそうですね! なんだか懐かしい光景に思えます!」
リファリウスとアリエーラはその場所に懐かしさを感じていた。
そして、テラスにあったテーブルのベンチへとお互いに顔を向かい合わせながら座ると、
遠くの水平線に沈みゆく夕日を眺めながら話を始めた。
「えっ? 今、エミーリアさんについて考えていましたか?」
と、アリエーラはリファリウスが何を言うよりも前にそう言った、すると――
「やっぱりそうか……どういうことなんだろうか、
私とアリエーラさんとではまるで意識を共有しているような気がするんだ、
完全に共有しているわけではないけれども、なんというか、
”意識の中で共有している”部分があると言えばいいのか、そんな感じがする――」
すると、アリエーラも言った。
「私もそう思っていました。
確かに”見えている”ような感じなのに、一方で”見えていない”のかなって感じることもありましたが、
”意識の中で共有している”部分があるということなら納得です、
”見えていない”のは共有していない部分ということになりますからね。」
「とにかく、恐らくだけれども私とアリエーラさんとはシンクロしている気がする。
この前ルーティスで戦った時なんかがまさにいい例で、あの時なんかはすごく戦いやすかったしね、
私たちはつながっているのかな?」
「つながっているのならいいじゃあないですか?
普通の人間同士ならつながっているハズはないので、つながっている私たちは幸せってことですよ、そう思いません?」
「確かにその通りだよね! なんていうか、こう言うのも変な気がするけれども、これからもよろしくね、アリエーラさん!」
「はい、リファリウスさん! これからもよろしくお願いいたしますね!」
そのシンクロのおかげで何を言わずとも意思の疎通がとれているというのか、特殊な2人である。