クラウディアスの現状はどうなっているのだろうか、
そもそも、何故エミーリアが女王陛下となっているのだろうか、
そして、先代の王であるハズのリアスティンはどうしたのだろうか。
アリエーラがその答えを知ったのは、スレアがクラウディアスへやってきてから1年後の話だった。
その日はフェラント沖にて、ディスタード帝国の軍艦が迫って来ているという非常事態だった、しかし――
「女王陛下! 帝国の軍艦から白い旗が!」
「えっ、白い旗? 戦うつもりはないってことでいいのかな?」
その帝国の軍艦には戦う意志がなく、フェラントからの上陸を求めているだけだった。
軍艦からは帝国軍のボートが一艘だけ排出されると、クラウディアス側へと向かってきていた。
そのボートには2人だけが乗船していた。
ボートの乗組員であるアリエーラとリファリウスはフェラントへと上陸すると、
すぐさまクラウディアスの兵隊たちが駆けつけてきた。
もちろん兵隊たちにも戦意はないが、警戒はしていた。
「あなた方はディスタード帝国の者とお見受けいたしますが、どのようなご用件でしょうか?」
兵隊の一人が話しかけてきた。その問いにリファリウスが答えた。
厳密にいえばアリエーラは帝国の者ではないのだが、面倒なのでその説明は割愛した。
「うん、クラウディアスさんのところへあいさつだよ。
新しくディスタードの四将軍に就任したんでね、だか、一応友好関係でも築いておこうかと思ってね。」
ディスタードの四将軍……周囲の兵隊たちは困惑した、お偉方が直接ここまでくるだなんて。
もちろんアポイントなど取っていないけれども、
そもそもクラウディアスの鎖国状況からコンタクトを取ること自体が難しいので、それは致し方がないことである。
すると、町のほうから誰かが2人のところへと真っ直ぐやってきた。
「わかった、では俺が案内しよう。ついてくるといい」
彼はヴァドス=ローグネスという名前らしい。彼に連れられ、2人はクラウディアスへと赴くことになった。
アリエーラとリファリウスはヴァドスに促されるままに歩を進めると、
フェラントからクラウディアスの南街道を通過し、そのうち、クラウディアス大平原に佇む城下とお城が見えてきた。
その光景は何とも見事な景色であるはずなのだが、今回は少々物々しい事態故にそこまで堪能する暇もなく、今回のその光景については残念だが省略することに。
またの機会で語ることとしよう。
クラウディアスのお城はメルヘンチックと呼ばれているが、確かに樹木に覆われた不思議な装いの城で、
メルヘンチックと呼ばれる理由もうなずける感じだ。だけど内部は流石にお城らしく、石やレンガ造りの内装で重厚感が満載だった。
そして2人は謁見の間の前にある部屋で、騎士団長と副団長、そしてヴァドスの3人と対面していた。
「港でもお伺いしたようにご用件はあいさつということですが――」
騎士団長のラシルがそう言った。
「へえー、キミが騎士団長かー。若すぎないかな?」
リファリウスはそう指摘するとラシルは口をつぐんだ。
「ごめんごめん、私もこんななのに帝国の将軍とか人のこと言えないよね。
でも――なるほどね、なんとなくそうなんじゃあないかなと思っていたけど、この国は人材が不足しているんだね。」
そう、この国が抱えている”ほかの国に侵略されたら押しつぶされてもおかしくない”という状況というのは他でもない、
人材が不足していることを指していた。
「ということは――今はリアスティンさんはいないということだね。ということは多分、次代の王様かな。
リアスティンさんと一緒にいた忠臣たちは、恐らくリアスティンさんと一緒にどこかへ行って、未だに帰ってきていないということに――」
何故そのことを!? ラシルは焦ってそう言うと、スレアとヴァドスは警戒しながら懐の剣に手を伸ばしていた。
確かにリアスティン不在なのは知っている者がいてもおかしくはないけれどもかつての忠臣がいないという点までついてくるなんて、流石に聞き捨てならなかった。
それに対してリファリウスは落ち着いた態度で話を始めた。
「ごめんごめん、驚かせちゃったというか、怖がらせちゃったというか――怒らせちゃったみたいだね。
実は――セディルさんの召喚獣”エステリトス”が――」
それに対してスレアが身を乗り出し、机に両手を突きながら言った。
「エステリトスがどうしたって!?」
アリエーラが事の次第を話した。
「お袋が……そんな、まさか――」
スレアはそう言うとラシルとヴァドスとで相談していた。
この2人なら女王陛下と引き合わせてもいいんじゃないかと。