アサシンは流石に警戒した。
「な、なるほど、仮にも王族、召喚魔法はお手の物ということかっ!」
イフリートは灼熱の炎を放った。しかし、アサシンはそう言いながらとっさに何らかの構えを放った。
「あれは……フレイム・ガードか?」
シャナンはアサシンが使用した守護の構えに気が付いた。
イフリートは炎の使い手、炎の威力を弱めようという魂胆のようだ。
「ちっ、あんなバケモノの技、マトモに喰らったら命がいくつあってもたりゃしねえな」
アサシンはそれでも勝機があると考えているようだけれども、それなりに覚悟を決めていた。
「なら、仕方がねえな、炎が避けられればもう一つ出すしかねえな!」
リアスティンはもう一体、幻獣を呼び出した。
その呼び出し方にはある特徴があり、それはイフリートでもやったことと似ているものだった。
それについてはシャナンは直ぐに気が付いた。
「もしや、魔神召喚? 2体目も魔神?」
リアスティンは召喚しながら返した。
「おっ、よくわかったな! そうだ、男は黙って魔神召喚に決まっているだろ!」
どういう意味だ。
「いけ! 破壊の魔神・ギガンテス!」
そいつは暗雲の中から、大きくて鈍そうな魔神が大きな棍棒を片手に現れた。
そして、ギガンテスは棍棒を大きく振りかぶり、アサシンに襲い掛かった。
「くそっ、いちいち面倒なやつを呼び出しやがる!」
棍棒自体は当たらなかったが、地面に激突したと同時に稲妻がその大地を切り裂いた!
さらに周囲の大地が震動し、アサシンは感電し足をすくわれた――アサシンは少し焦り始めた。
「さて、フレイム・ガードにするか、サンダー・ガードにするか、よく考えることだぜ!」
リアスティンは得意げにそう言った。
ただでさえパワータイプの魔神であるのに、その上イフリートは炎、ギガンテスは雷と、
属性が違うのが2体いるのがアサシンとしては悩むところだった。
「しかし、よくも2つの獣を――」
シャナンは言った。
でも――そうか、そういえば、召喚壁の力を借りればこういう芸当も楽にこなせるのかと考え直した。
しかし、そんな中――
「へへっ、魔神召喚ってのが悪かったようだな!
確かに、能力は高いかもしんねえが、見るからにウスノロな連中を呼び出したところで俺の敵じゃねえ!
いずれにせよ、俺の敵はこいつらじゃなくてリアスティン、テメエだけさあ!
さあ、こんなデカイおもちゃで次は何をやってくれるのかな?」
確かに、魔神にもよるのだけれども、図体が大きいばかりにスピードで劣っている個体が多いのも事実である。
そんな中、シャナンが――
「なるほど、魔神召喚は攻略したと――
では、魔神と同時にこちらも攻略してもらいましょうか、できればの話ですがね――」
おもむろに何かを――リアスティンは首をかしげていた、何をするんだろうか、と。
「召喚王国の名は伊達ではないことをお教えしなくてはなりませんね――」
すると、その場には神々しいまでの大きな機械兵器のような存在が現れた。
まるで、一つの建物のような大きさの、機械仕掛けの要塞と思しきその堂々とした佇まいには圧倒された。
「魔神とも劣らぬサイズの召喚獣で、お察しの通り、こいつも動きが鈍いタイプです。
しかし――命中率だけは抜群ですよ?」
その召喚獣の姿にリアスティンが気が付き、驚いていた。
「おっ、おい! まさかそいつは!」
シャナンは機獣召喚を行っていた。
しかもその機獣、天より出でて地上のものをすべてを裁くといわれている伝説の機獣と呼ばれていた。
「アレクサンダー、攻撃をお願いします」
すると、アレクサンダーは砲門から眩いレーザーを発射し、アサシンを攻撃した!
「くっ、また面倒なやつを呼びやがって! 流石は召喚王国ってことか! かくなるうえは――」
アサシンは意を決し、リアスティンを狙うよりも先にシャナンに襲い掛かった!
「気が変わった! テメエが先に死ねえ!」
ところが――
「相手の実力を見誤らないことです、死ななくてもよいところで命を落とすことになります」
シャナンはアサシンが持っていた得物を左手一つで受け止めていた。
「白刃取りだと!? ほほう、やるな、所詮は城の雑兵の一人と思って油断したぜ。
だがな――俺はアサシンだ、殺るときは念入りに殺るもんだぜ、どういうことだか――わかるだろう?」
それに対してリアスティンはすぐに気が付き、焦りを感じていた。しかし、シャナンは表情を変えずに言い返した。
「もちろん、確実に相手を絶命させるために剣に毒が塗られているってことですよね?
確かに刃に触れた時のこの感じ、神経毒か何かでしょう――」
そしたら何と、シャナンはアサシンが持っている得物をがっつりと握りしめると、それを力づくで取り上げた!
「何っ!?」
アサシンはうろたえていた。そして、シャナンはその刃物をその場に投げ捨てると、右手で左腕をつかみながら言った。
「この程度の毒では私を殺すことはかなわなかったということですね――」
一方のリアスティンは驚きつつ、心配そうに訊いた。
「お、お前――毒が効かないのか?」
「毒にも依りますが、たいていのものは効きません。
特殊な身体というよりは特殊な種族でしてね、古来のクラウディアスより長らく存在している固有種ですね。
それこそ、初代のエミーリア様と同じ種族のハズです」
シャナンは話題を変えた。
「とりあえず、詳しい話はまた後日としましょう。
それよりも、この男はこのままにしておくわけにはいかないことは確実だということですね、
リアスティンを殺しに来たとあらばなおさらです。ですから仕方がありません――」
シャナンはアレクサンダーにこの男を裁くように命じた。
「くっ、よりにもよって手練れが付いてやがったってことか! 仕方がねえ、一旦出直しだ!」
と、アサシンはその場から離脱しようと試みた、ところが――
「おっと、そうはいかねえぜ!」
リアスティンは2体の召喚獣を巧みに操り、アサシンの退路を封じた。
「なっ!? くそっ、そう来やがったか! 仕方がねえ、腹くくるかっ!」
そして、アサシンは覚悟した。それに対してシャナンは――
「いい覚悟です、それでは受けてみてください、悪しき者を裁くための光、”聖なる審判”を!」
アレクサンダーは備えている砲門すべてからレーザーを発射、それがすべてアサシンに襲い掛かった!
「くっ! おのれえええええ! これが召喚獣の力というのかっ――」
さらにアレクサンダーは最後に全身から一気にレーザーを発射し、
それがすべてアサシンめがけて襲い掛かると、アレクサンダーはその場で消滅した。
ただ、それをやってしまったために、一つだけ問題が。
「すみません、あまりに目に余ったのでつい力を出しすぎてしまいました。
相手はアサシン、誰がこの刺客を差し向けたのかが問題だというのに、
これでは立証できなくなってしまいました、申し訳ありません――」
と、シャナンは召喚したアレクサンダーを送還しながら言うと、
リアスティンも召喚獣を送還しながら答えた。
「んなこと気にすんな、俺はどうやらお前に助けられたようだしな。
たとえ俺がやったとしても、お前と同じ末路になっていることは明らかだ。
だけど――お前、強いな! お城の兵士で腕も立つし、あれだけの召喚獣従えられるほどの魔力も持っているんだな!
すげーなー!」
リアスティンはシャナンを褒めちぎっていると、シャナンは恐縮していた。
「さてと、そうしたら、俺も負けてらんないな!」
そう言いながら、リアスティンはイフリートを再び召喚しながら言った。
「な、なにを――」
シャナンはうろたえながら訊くと、リアスティンは答えた。
「俺がわざわざ魔神召喚にこだわった理由ってのを教えてやる、アサシンを殺しても大丈夫なようにするためだ!
つまりはこういうことだぜ!」
さらにリアスティンは続けざまに言った、
とにかく、アサシンの生死はどうでもいいのだ、その場合はシャナンが言ったように、
リアスティンにアサシンを差し向けたやつが誰なのか立証が困難になるし、
そもそもリアスティンにアサシンが差し向けられたのかどうかという話にもなってしまう。
しかし――この場所で魔神と大きな機獣を呼び出す召喚行為が行われた、大きな獣が3体も呼び出されたのである。
ということはつまり、これだけ大きなことをしていれば――