その夜、とある会議室にて、”腹黒い連中”が話し合っていた。
「昼間のリアスティンの話を聞いたか!?」
「ああ、私も聞いたぞ、やつは言っていたな――」
「どうしたのだ、ラケシスにシューテル、そんなに何を慌てている?」
話をした順にシューテル、ラケシス、ローファル、そして、このほかにジャミルの4人の臣下たちと、
他の格下の臣下たちが、何やら話をよからぬ話をしているようだ。
「あいつは言っていたぞ、”臣下にとって俺は邪魔な存在だ”とな!」
ラケシスがそう言うと、ジャミルが訊いた。
「なんだと? どこからその話が漏れたんだ?」
しかし、ローファルは落ち着いていた。
「ふん、あのリアスティンなら、それぐらいのことは考えるだろう。
朝方、レーザスト様と争うところを見たぞ、確かに、リアスティンは王の器としてはどうかとは思うが、
レーザスト様よりも社会経験があるようだ、だから――クラウディアスにとっては不要な要素、
異国の考え方を持ち込むなど言語道断! ますます邪魔な存在といえよう――」
というと、その4人の臣下と、ほかの格下の臣下たちに紛れて話をしていたレーザストがなんだか後悔している様子で言った。
「うっ、すべては僕のせい――」
そして、その場に居合わせた者全員はため息をついていた。
それに対し、ローファルは諭すように言った。
「レーザスト様はリアスティンに近づかなければいいのです。
悪いのはリアスティンが近づいたこと、だから、つい、かっとなってしまわれた、
そう、愚民風情のあの男と一緒になってしまったからこそです。
それさえなければ問題はなかったはずです、違いますか?」
そう言われたレーザストは開き直るかのような態度に改まって言った。
「そっ、それもそうだね! そうであれば、リアスティンには注意しよう!」
「はっ、仰せのままに――」
ローファルはかしこまりながらそう言った。
それに対してレーザストは機嫌をよくして、その場から召使に連れられ、自分の部屋へと戻って行った。
その様子を確認したローファルは、態度を改めて話を続けた。
「ふん、確かにリアスティンの言った通り、レーザストは所詮は傀儡、
しかしどんな手を使おうとも、最後に勝つのは我々だ!
我々がこの国を動かし、これまでクラウディアスを維持してきたのだ!
それを邪魔立てしようという者はたとえ第1王子であろうとも許さん! いいな!」
ローファルがそう言うと、臣下たちは奮起した。
「しかし、どうする?
王位継承権は第1王子のリアスティンが握っている、これでは流石にレーザスト様では太刀打ちできまい……。
法の面でもこればかりは難儀だろう、これまでのことからしても異例となること、
レーザスト様の即位について大衆を唸らせるにはそれなりの根拠を考えねば――」
シューテルがそう言った、彼らにとってはそこが問題だった。すると、ジャミルが――
「そうだ、その話なんだが、一応、考えがある。これは昔から成されていることだ。
要は、王位継承権で最優先のものがいなくなれば良い、ということでしかない。つまり――」
すると、ラケシスが言った。
「結局、王室を王族の血で汚すしかないということか?」
「違う、王室を汚す必要はない。
そう、リアスティン……いや、リアスティン様は不慮の事故で亡くなられてしまうのだ。
リアスティン様の訃報に国民は悼み、そして、兄上の決意を胸に、レーザスト様が……と、それなら問題あるまい?」
と、ジャミルは言った。さらに計画の全貌を説明した。
「なるほど、それならうまくいきそうだ。
しかし、その場合は他のやつがそれを妨害する可能性があるな。
たとえば――ジェレストが特に厄介だ、あいつはリアスティンに付きっ切りだ」
ローファルが悩みながら言うと、シューテルが眉間にしわを寄せながら言った。
「セディルもすぐに目を光らせるだろう。
それから騎士副団長のアルドラス、ウィンゲルからクラウディアス一帯を見張っているティーグルもどうにかしないとな」
しかし、ローファルには考えがあった。
「アルドラスは問題ない、ヤツが気が付いたころには後の祭りだ。
ジェレストも、あのリアスティンのことだから完全に付きっ切りというわけにはいくまい」
それを聞いたシューテルは考えながら言った。
「セディルはなんとか手を打とう、少々強引だが、他に策はない。しかし、ティーグルが――」
「ティーグルなら任せておけ、計画を実行するうえでは必要なことがあるのでな」
と、ジャミルが言った。彼らの計画を妨害する者たちの問題はクリアーされたようだ、
何やらよからぬことが起こりそうな予感がする――