3人で現場に到着すると、別動隊として動いているガレア軍の一部隊がそこに到着していた。
「将軍! 予定通り着いたよ!」
と、その隊の隊長らしき人が気さくな感じでそう言った。
その人は女の人らしく、しかもアリエーラはその声に聞き覚えがあったため、その人物を見てみると、
「えっ、まさか、シャトさん!?」
まさかのその人だった。
「久しぶりね、アリ。さっさとバランデーア軍なんて倒してしまいましょう」
シャトがそう言うと、デュシアは思ったことを訊いた。
「着いたよ? 一応将軍相手なのに……。
それに、あんたはランスタッドの軍だったハズだが――ガレアに鞍替えしたの?」
シャトが答えた。
「将軍の要望よ。
ランスタッドの軍は解体してほとんどが本土軍に吸収されたけど、
一部はガレアに留まってガレア軍に再配置されることになったのよ、私なんかがそうね」
「シャトさんは旧ランスタッド軍時代から所属していた諜報部員だからね。
だから、彼女には表沙汰にはできないけれども、引き続き諜報部員として――
逆に表側の任務として特務戦闘隊長をやってもらうことにしたんだよ。」
ディスタードとしては異例すぎる人事だった。
そう、ディスタードとしては非常に珍しい女性の階級人事である。
しかし、女性の階級人事については実は彼女はディスタード内では二例目、一例目もやっぱりガレア内での人事だという。
「将軍になってからというもの、ディスタード内にとどまっている暇があまりなくてね。
ガレアを発ってから本土、ヘルメイズ、マウナにあいさつに行ってからガレアに一旦戻り、
その足で一部の人を連れてルシルメアに向かったんだ。」
しかし、ディスタードはルシルメアだけが相手ではなかった、
ガルバートという軍隊が北部からミサイルで猛攻撃してきているのである。
ルシルメアとの交渉の席では、これについても引き合いにされたのである――
「そもそも、ガルバートを攻撃しているのはマウナ軍だ。
でも、連中にとっては攻撃目標がルシルメアだろうと知ったこっちゃない、
全部、ディスタード帝国のせいだといって責任をおっかぶせればそれで終わりになるわけだしね。」
リファリウスはそう話を続けた。ミサイルでの猛攻撃自身はディスタードのせいではないのに、あまりに理不尽すぎるのだが――
「残念だけど、ガルバートの周辺諸国、特にガルバートと仲がいいエダルニアなんかもそうだけど、
ガルバートが攻撃をすることになったのは全部ディスタードのせいだと思っているぐらいよ。
聞いた話だけど、この辺は昔からそうらしいのよ、ディスタードが帝国になる前の時代から。
まさに因縁の仲ってところね」
シャトはそう説明した。
「ったく、世界レベルでの主権争いだなんて嫌なもんだね。それに参加しているディスタードも同類と言えば同類なんだけれどもね。
それはともかく、ルシルメアでのミサイル攻撃の回避を維持しつつ、ルーティスの件についても言われたから、
一旦ガレアに帰り、そこでちょうどよくいたシャトさんを連れてこうしてやってきたってワケさ。もう休まる暇もないよね。」
「そんなんで、きちんと休めていますか?」
リファリウスが調子よく話をしていると、アリエーラが指摘した。
「うん、そうだね、まったく休めてないね。最後に寝たのはいつだったかなー?
将軍になってからはまだ1度も――いや、ルシルメアの時にちょっとした事故にあって3時間ほど気を失ってたかな。
将軍になる前は確か――3か月寝てない気がするね。
これでも一応精霊族だから、ある程度は持つっちゃ持つんだけど――」
しかし、それに対してアリエーラが柄にもなく、半ば怒りながら言い返した。
「もう! そんなこと、自慢気に言うことじゃあありません!
万が一のことがあったらどうするんですか!
そんなに無茶しないでちゃんとしっかりと休んでください!」
その時のアリエーラの光景は、シャトにとってもデュシアにとっても珍しい光景だった。
「……はい、ごめんなさい、まーた怒られちゃった――」
と、リファリウスは申し訳なさそうに言った。
「そうよ、リファリウス。いくらなんでも休まなすぎは身体に毒よ。
美容にもよくないんだし、気をつけなくちゃ」
シャトにも苦言を呈された。そこへ、デュシアが訊いてきた。
「精霊族? そんなに寝なくても持つというのか?」
「精霊族でも普通は1日か数日、長いものでもせいぜい1週間程度しか持たないみたいです。
私とアリエーラさんが特別というか、特殊な種というだけですよ、
最高では何百年ともつとも言われているらしいけれども、実際にはよくわかっていない。
まあ、そんなこと言ったらアリエーラさんが黙って――」
「そうですよ! 絶対に今夜はちゃんとお休みください! 3時間仮眠したとかじゃなくて!」
リファリウスが説明を続けようとするも、アリエーラがムキになってそう言った。
「なんか、あの2人、やっぱり仲良さそうだけど――」
デュシアはシャトとこそこそと話をし始めた。シャトもこそこそと話をした。
「私もそう思った、まさか……リファとアリがこんなに仲の良い関係だったなんて――」
シャトはアリエーラも知っていたし、帝国時代からリファリウスも知っていた。
「やっぱり2人とも、恋仲とか何かかな――」
デュシアはそう言うが、シャトは――
「この2人が恋仲!? いやいや、まさか! ただの友達同士でしょ!?
だから絶対にありえないわね……ってことは、まだデュシアは訊いていないみたいね。
多分、あとで話してくれると思うから、今はバランデーア軍を退けることに専念しましょう」
そう言われたデュシア、しかし、そのバランデーア軍を退ける作戦について、
これまで気になりはしたけれども、やっぱりどう考えてもおかしいと思っていたことがあった。
それについて、みんなにも聞こえるように訊いた。
「そういえば――この人数でバランデーアの軍を退けるの?」
敵は恐らく多数いると思われるが、それにしては、やたらと数の少ない人数だった、
ざっと数えても全部で10人程度、相手の数はその100倍以上はくだらないだろう、どうする気だろうか?
すると、リファリウスが答えた。
「あ、そうそう、そういえば説明していなかったね、これからの作戦をさ。
というよりも、実は作戦なんて何も考えてなくて、
ただ単にこのまま真正面から突っ込むことしか考えていないんだよね。」
ウソでしょ――デュシアは耳を疑った、しかし、それに対してシャトが――
「でも――私は、私自身を知りたい――」
その時のシャトの面持ちはなんだか意味深な感じだった。それに対し、アリエーラも――
「そう、ですね……まさかとは思いますが――」
「うん、要はそう言うこと。ついでにこれだけいるからね、試し甲斐があるってもんさ。」
と、リファリウスは言った。それに対してデュシアは――
「まさか、そういうこと? ということは……シャト、あんたもそうなの?
だとすると……私は、とんでもないメンバーと徒党を組むことになったってワケね――」