第4防衛区に到着した。この先の区画からバランデーア軍が上陸している拠点があるという。
向かう先は二手に分かれていて、この先をどうするか考えていた。
「ここまでで当初の作戦通りうまくいってるな。で、本当に試して見る気か?」
エイジとアールが何やら話をしていた。
「もちろん、ここまで来て考えを変えるつもりはないよ。
それに、これまでの行動からしてもそうだし、
さっきみんなからちらっと訊いたアリエーラさんの能力に謎の召喚獣とか――思うところは多々あるし、
それに、ある程度は証明されているようなもんだから、
恐らく当初の予定通りにうまく事が運ぶことだろう、そんな予感がする。」
何の話だろうか、リーダーの男ハンターとデュシアが疑問に思い、訊いてみようとすると――
「まあ、そういうわけだから、予定通りに頼むよ。」
「わかった、こっちは任せておけ。そっちは”いつもどーり仲良く”うまくやってくれ」
エイジがそう言うと、男ハンターたち全員に自分と一緒に来るように促し、南東側のゲート、
第5防衛区側のほうへと早々に進み、話を打ち切った。
「”いつもどーり仲良く”――」
デュシアはそう言うと、それに対してアールが答えた。
「まあ、昔から女性受けはいいですからね。
さて、そう言うことだから行きましょうか、アリエーラさん。」
アールはそういいながらアリエーラに対して手を差し伸べた。
アリエーラは楽しそうにその手に自分の手をのせると、アールはその手を優しくつかみ、そのまま一緒に歩いて行った。
「まさに、”いつもどーり仲良く”ね。でも――」
デュシアはその2人の様子を見ていてもかなり不自然に感じていた、
それもそのハズ、少し前にアリエーラとアールとした話――
アリエーラとアール、2人のコンビネーションについては非の打ち所がないほど完璧と言えるほどのものだった。
本当に息がぴったりで、まるで、お互いがお互いのことを完全に知り得ているかのようだった。
「本当に、すごいコンビネーションね、まるで1人の人間が2つのことを同時にやっているかのようね!」
デュシアは2人の戦いぶりを絶賛していた。それに対してアリエーラは、
「はい! リ……アールさんと一緒に戦うと――」
そういうと、デュシアはすぐさま指摘した。
「そういえばさっきも”リ”まで言いかけていたね、どういうこと?」
それに対し、アリエーラは口を慌てて両手で押さえていた。
「まあ、いいですよ、別に。
私の名前はリファリウス、リファリウス=シルファーヌというのですよ。
そういう人物がガレアでアール将軍と名乗って活動しているだけなんですよ。」
と、アールは気さくに話を続けると、デュシアは驚いた。
「リファリウス……シルファーヌだと!? まさか、フリーのハンターが帝国の将軍をやっているだと!?」
アールこと、リファリウスは答えた。
「あっ、そっか、同業者なら知っていてもおかしくはないか――」
だが、デュシアの知るリファリウスとは似ても似つかぬ姿だったアール、デュシアはその点を指摘した。
「ちょっとした変装術を使って見え方を変えているだけですよ。
帝国の将軍をやる以上は素性がはっきりしすぎるのも何かと不都合ですからね。」
言われてみればその通りである。
ましてや、ハンターが将軍とは――他所の国の得体のしれない何者かが何故か急に国の大役を担う存在になるというのは確かに変だ。
だけど、そんな危険を冒して、どうして帝国の将軍なんかに?
デュシアは訊くと、その答えはあまりにも意外過ぎるものだった。
「簡単に言えば、ただの成り行きですよ。
本当は、ディスタード帝国の情報網を駆使して、
私自身が抱えている問題に決着をつけたかったから帝国軍に入隊したのですが、
それがあれやこれやと成績を修めているうちにいつの間にか上へ上へとのし上がり、
ついにはこんなことになってしまったんです。
で、せっかくだから、私の思う理想の国づくりでもしようかと考え、
手始めに現帝国のあり方を真っ向から否定するような感じで進めていこうかと考えているだけです。」
デュシアは開いた口が塞がらなかった、そんなことで帝国の将軍になれるのか、と――
「まあ、道は少し険しかったですけれどもね。
ただ、それなりの実力があったのを考えて帝国に入隊して成績を修めていて、
で、ランスロット将軍の目に留まり、取引をした結果に将軍になれたので、
私のこれはある意味、取引の内容の一つでもあるランスロット元将軍の悲願をかなえるためでもありますね。」
そういわれるとデュシアも納得した。
しかし、こいつの能力はそれほどのものなのだろうか、謎は尽きない。
話は続いた。
「それにしてもアリ、あなた、リファとは初対面じゃあないよね? リファリウスなんて名前も知っていたぐらいだし。
それに、初対面だったらあんな息ぴったりのコンビネーションはできないしね。
あと、あなたたちは話し方がどことなく同じように感じるし、絶対にどこかで通じているよね?」
デュシアにそう言われたアリエーラ、なんだか思い当たる節があるようだった。
「まあ……そうですね、確かに、リファリウスさんと一緒に居て、
なんというか、昔から仲が良かったように感じますね。」
すると、デュシアは意地悪く、茶化すように訊いてみた。
「なるほど、昔から仲良く、ね。案外恋人同士だったりして!」
アリエーラは反応したが、デュシアに向かって「えっ?」と振り返っただけの反応だった。
そこでデュシアは間に髪を入れずに話を続けた。
「わかった! あんたたち、きっと婚約関係にあるんだよ!
今は何か災難があって記憶がなくなっているだけだけれども、
実は将来は一緒に過ごすことを約束したカップルだったってわけよ! どう、思い出した、アリ?
というわけだからリファリウス! あんた、アリエーラという美女を嫁にもらう身なのよ!
こんなにキレイないい娘、滅多にいないんだから絶対に大事にしなさいよね! わかった!?」
しかし、それに対して2人は、デュシアの画策していた予想とは大きく異なるリアクションだった。
それに、さらに思いもしない付加要素も加わり、結果的にデュシアの頭が混乱する結果となった。
「私と……リファリウスさんが、ですか? 確かに、そうだったら素敵ですね!
だけど、そうならないのが実に残念ですね――」
アリエーラがそう言うと、リファリウスもそれに追随して言った。
「確かに……アリエーラさんほどの美人でお淑やかで優しい人が一緒なら嬉しいですね。
でも……残念ながら、私とアリエーラさんはそういう仲ではないんですよね――」
「ですね。でも私……リファリウスさんの妻になれるのなら、なってみたいですね!」
「もちろん私も、できることならアリエーラさんと添い遂げてみたいですね!
もっとも、今の世の中としてはありと言えばありかな。
でも――それとはやっぱりちょっと違うんですよね。」
「ですね。まあ、夢の中の話だけだとして心に留めておく程度にしておきましょう。」
と、2人はそう話し合いながら話を打ち切り、そのまま一緒に仲良く歩いて行った。
「……お互いにその気はあるし、
生涯を共にするパートナーとしても申し分なしと言っているぐらい仲睦まじいのに、それでも一緒になることはない?
それに、今の話も戦いのときみたく、お互いにシンクロしているかのようだった――どういうことなの?」
デュシアの中で更なる謎が増えてしまった。この2人、一体どういう関係なのだろうか、まったくわからない。