エンドレス・ロード ~プレリュード~

悠かなる旅路・精霊の舞 第1部 先の見えぬ旅路 第2章 遠き旅路

第32節 異能なる存在

 アールの指示により、ハンターたちは一旦防衛ラインから下がった。 その後、アールはレシーバーを用いて戦艦側に指示を発令!  艦隊砲撃が発せられ、敵の基地に被弾! 勢いよく敵の基地が吹き飛んだ!
「よし! 行くのなら今しかないな!」
 リーダーの男ハンターがアールに向かって確認するようにそう言うと、アールは頷いた。
「そうだね、今なら敵もパニックになっているハズだね、さあ、行こう!」
 リーダーの男ハンターが率先して走ると、どういうわけか、アールは彼を追い抜いていった。
「お先に!」
 そのスピードにアリエーラも続いた。
「私も行きます!」
「なっ、あの2人、早え――」
 男ハンターは茫然としながら走っていた。
「喰らえ!」
 アールはその場から走りながら剣を巧みに操って風の刃を飛ばした。 それを見ていたアリエーラは――
「あら? その剣は? なんだか違うような――」
 なんだか違和感を感じていた。それはともかく――
「リ……アールさん! 気を付けて!」
 アリエーラは指先から魔法を発射し、銃を構えていた敵めがけていち早く発射した。
「ありがとう! アリエーラさん!」
 2人はゲートまで進むと、その場で止まった。
「なにやら嫌な予感がするね――」
 アールがそういうと、ほかのハンターたちが息を切らせながらたどり着いていた。
「お前たち、2人とも早いよ――」
 別のハンターがそういうと、アールは答えた。
「それよりも、戦う前からそんな状態で大丈夫?」
 すると、目の前から戦車が現れた!
「言い合っているところ悪いけれども、アール、お前のヤな予感が的中したみたいだぞ」
 エイジは戦車が3台向かってきていることを知らせるため、それらの場所を指で刺した。
「待ち伏せ? いや、こんな状況でそれはないな、偶然とはいえ、厄介なことになってきたな、 ガレア軍の追撃はどうなっている?」
 デュシアはアールにそう訊くと、アールはやはり得意げに言った。
「うん、ガレア軍の追撃はもちろん、この私の攻撃だよ!」
 すると、ハンター一同は唖然としていた。
「えっ、何!? なんか問題でも!?」
 いや、問題も何も――という感じである。
「大丈夫、対人に戦車砲をぶちかましてくることはないさ、 やってみるとわかるけれども、弾の値段が高い上にあまりに大振りすぎて当たらない確率のほうが高いからね。 だから、メインは副砲として装備しているマシンガンの攻撃をかわすことになるだろう。 もっとも、生身としてはそっちを使われた方が厄介なんだけれどもね。」
 すると、アールは使っていた剣をどこかにしまい、それと同時に、 別の剣を――いや、何といえばいいのだろうか? 槍? 長い棒? ともかくその”兵器”を取り出した。
「その剣は!」
 アリエーラはその武器を見て何やら思い出したようだった。
「さて、私にこいつを使わせるんだからもう容赦はしないよ。後悔するのならあの世ですることだね!」
 アールは左手から1台の戦車めがけて雷の魔法を飛ばした!
「対魔法装甲なんてムダだね。私の能力を思い知るんだ。」
 敵の戦車に被弾! 恐らく、搭乗員は車内で感電していることだろう。 しかし、そのセリフを言ったアールはすでにその場にはいなかった。
「とりあえず、1台はおしまい。さて、次は――」
 なんと、その戦車を自慢の”兵器”で両断してしまった! その光景に、ハンターたちは圧倒されていた。
「ったく、相変わらず、加減というものを知らないな――」
 エイジはやれやれという態度で呆れながら見ていた。
「なんだよ、だったらやってみろよ。」
 アールはやや怒り気味にそういうと、エイジは戦車の前に立った。
「言っても、俺だってお前ほどうまくやれないからな、少しは勘弁してくれよ、どーせ”運動音痴”だからな」
 それに対し、アールは言い返した。
「あーあ、そうやって逃げるのねキミは、ヤなやつだね。」
「言ってろ」
 そう言いながらエイジは剣を引き抜いた。その剣はどういうわけか、機械仕掛けのものだった。
「まあいい、死んでも恨むのなら自分だけにしてくれよ」
 と、それに対し、戦車から銃撃が!
「やれやれ、弾がもったいないだろ、そういうの――」
 エイジは左のポケットの中から何かを取り出した、それは――
「あれは、対遠隔攻撃シールド発生装置!? 戦車の重機銃までも防いでしまうのか!?」
 リーダーの男ハンターが驚きながらその光景を見ていた。
「こいつは俺が作ったものだ。 軍に所属している以上は需要も多いと思ってありあわせの材料で作っただけにすぎないんだけどな。 さてと、防戦一方ってのも柄にあわないからな、もう、そろそろいいだろう――」
 エイジは右手の剣を戦車に向かって勢いよく振ると、その剣から雷が発射された!
「雷の攻撃だったら俺の得意分野だ」
 さらに剣を後ろから思いっきり前に向かって振ると、そこから強烈な衝撃波が繰り出された!  さらにそれを立て続けに次から次へと繰り出した――
「……しばらく目が覚めないかもな」
 衝撃波には雷の成分が含まれているため、搭乗員は感電により意識をなくしている状態なのだろう。
 そして、最後の戦車は――
「ここから先は私が通しません!」
 アリエーラが立ちはだかった。
「敵としてはつらいだろうね、あんな美女を相手にしなければいけないなんて、 攻撃を躊躇うことになるだろうね。」
 アールは得意げにいうと、エイジは言い返した。
「……でなくてさ、恐らくだけど、アリエーラさんもやっぱりアレなんだろ?」
「ああ、そうだね、間違いなく私らと同じだ。 そうでなければ私と彼女に起きているこの不可思議な現象、キミにも思い当たる節があるようだけれども、 その現象の説明が付かないだろう、だからあの戦車も――」
 その戦車はやはり、アリエーラ相手に銃撃を発射したが――
「やっぱり、アリの能力って高いよね、重機の攻撃ですら受け付けないのだから――」
 と、デュシアは言った。こちらは装置ではなく、自分自身の魔力で展開したシールドで銃撃を無効化していた。
「俺より強いな。あの力は異常ともとれる能力だ、お前と一緒だな」
 エイジはアールに向かってそう言うと、アールは苦言を呈した。
「おいおいおい、私とアリエーラさんに向かって異常とは失礼なヤツだな、 そんなこと言ったらキミは異常で根暗なヲタクだろう。」
「根暗でもなければヲタクでもないけどな」
 そうこう言っているうちに――
「雷ならこれでどうでしょうか!」
 アリエーラは雷の魔法を唱えた! 上空から雷が一閃! 戦車を貫くと、戦車の上部が破裂した!
「つ、強ええ……アリエーラちゃ……じゃなくて、アリエーラさん強すぎる――」
「アリエーラ”様”だな、むしろ――」
「アリエーラ様、というより、そもそもあの3人はどうなっているんだろうか――」
 アリエーラ様をはじめ、3人の強さに脱帽しているハンターたちだった。

 とにかく、3台の戦車を再起不能にした一行は、そのまま第7防衛区、そして、第4防衛区の目前まで進軍していた。  それにしても、アリエーラとアールのコンビネーション攻撃は息がぴったりだった。 呼吸が噛み合うペアはよくいるものだが、この2人の呼吸は、本当によくかみ合うコンビネーションだった。 ここまであうペアも珍しいほどである。
「アリエーラさん、今だ!」
「任せてください!」
 と、アールの攻撃に合わせてアリエーラが攻撃を行うと、
「とどめお願いします!」
「はーい。さーてと、何人が生きられるかなー?」
 と、次から次へとお互いが繰り出す技を把握しているようだし、それによって連携もうまい具合につながっていた。
「すげーな、あの2人のコンビネーション。息がぴったり過ぎる。 まるで、今まで一緒に戦ってきたことがあるような感じだな」
 リーダーの男ハンターがそういうと、別のハンターが羨ましそうに言った。
「本当に、いいよなー、あのアール将軍ってのは。 あのアリエーラ様と息ぴったりとかおかしいんじゃねーの?  むしろアリエーラ様が俺とタッグ組んで戦ってくんねーかなー?」
 それに対してデュシアが苦言を呈した。
「バカ言ってんじゃないよ、アリがあんたみたいなのと一緒に居たいと思うわけがないだろ。 でも、そうね――アールは見た目は優男風の色男で調子よさそうな感じの印象だったけれども、 アリのあの感じだと、そうでもなさそう――むしろ、アイツと一緒に居たがっている感じすら受けるわ。 だから、アンタたちみたいな男ばかりが集っているギルドにいるよりはアイツのいるガレアにいた方が、 あの娘のためにもいいかもしれないわねきっと――」
「そっ、そんなぁ! アリエーラちゃーん!」
 何人かの男ハンターたちはデュシアの話を聞いて号泣していた。 その様子に、デュシアは「ざまあみろ」
 とにかく、どういうわけかは知らないけれども、アリエーラはリファリウスに会えたことがとても嬉しかったようで、 リファリウス自身も、アリエーラに会えたことがとても嬉しそうだった。
 その後は、恐らくバランデーア軍の潜水艦を制したガレア軍の戦艦による艦隊砲撃によって、 バランデーア軍の兵器などをしらみつぶしに破壊していく作業が続いていた。
「あんまりこういうことをするのって好きでないんだけどね、この際仕方がない。 ルーティスを保護するのが最優先だ。」
 そういうアールの顔も辛そうだった。アールこと、リファリウスの決断にもつらいものがあった。