アリエーラはそのまま、この2人をハンターたちのいる場所へと案内した。
なんだかよくわからないけれども、アリエーラはこの2人のことを完全に信用していた、
自分が信頼している知り合いのような気がしてならない、そのためか、絶対的に信頼できたのだ。
当然、2人が帝国内で使っているコードネームでハンターたちに紹介することにした。
「私はディスタード帝国の新生ガレア軍の将軍を務めることになりました、アールというものです。
以後、お見知りおきを。」
「俺はエイジ。同じく、ガレア所属総合研究所の最高責任者だ」
と、2人は簡単に挨拶した。すると――
「ガレア軍のアールだと!? アールって確か――」
「てか、軍のトップが直々に? 本当に、本者か?」
第一、ガレア軍のトップとしてこの2人が来ていること自体に問題がある、何故なら――
「ガレアってランスタッド軍の管轄だろ? ランスタッド軍はどうしたんだ?
あんた、そこの副将軍じゃなかったか!? ランスロット将軍は失脚したのか?」
ランスタッド軍はディスタードの孤島ランスタッドを本拠地として構えている軍だったが、
ランスタッド軍はガレアを占領し、そこに本拠地としての機能を一部移しているハズだった。
そして、ランスタッド軍にはディアス=ランスロットという方が将軍の座に長らく鎮座していたのだ。
それなのに、今はガレアという別の軍がガレアにおり、そこには元はランスタッドの副将軍だったアールという別の将軍がいる――
「ランスロットも将軍やるには流石にもういい歳なんでね。
だから、その代わりにこの私が務めさせていただいているのだよ。」
アールは得意げにそう言った。それに対し、ハンターからも指摘が。
「なかなかそうは見えないな。
第一、あんまり将軍っていうような、歴戦を駆け抜けてきたようなガタイをしていなけりゃ、
将軍をやるにしてはあまりに若すぎる気がするが?」
そのハンターは、アリエーラがハンターになるときに否定的だったあのハンターである。
アリエーラにとっては第一印象こそ最悪な存在だったが、あの出来事の後はすっかり打ち解けて、
今や信頼関係にある状態、何があるかわからないものである。
話を戻すと、確かに、アールの印象はそう言われるとそうかもしれない。
ディスタードの将軍と言えば、いずれも結構それなりに年齢を重ねていて貫禄がある。
そして、体格もがっちりで、まさに威厳のある風貌――
ランスタッド軍のディアス=ランスロットはまさにその典型ともいえる存在であった。
対して、アールは線が細い優男風で、年齢もほかの将軍とはかけ離れた若さ、
一国の将軍という感じには全然見えない。
「いいんだよ。ランスロットの代わりにやってるってことは、
ランスロット本人が認めた人物ってことだろ、元々副将軍でもあったんだしさ、そうは思えないかな?
それに、将軍は見た目でやっているわけじゃあない、実力でやっているんだからね。」
そう言われると、否定する要素がなさそうに見えるが、
こいつの実力は一体どんなものなのだろうか、気になるところである。
アールが来たことで、事態は一変した。
そう、こいつはガレア軍を動かす将軍、つまり、ガレア軍がハンターに加勢しに来たのだった。
「……だそうだ、だから後は現場で直接指示を仰いでくれってことらしい――」
リーダーの男ハンターがほかのハンターと一緒に何やら話をしていた。
すると、そのリーダーの男ハンターがアールに対して恐る恐る話をし始めた。
「すると、やはりあんたは本物の将軍だというのか?」
それに対し、アールは思い出したかのように何かを取り出し、話をし始めた。
「そうそう、忘れてたよ、こいつを預かっているんだ。
ルーティスのお偉いさんからセラフィック・ランドの政府経由で届いた親書だよ。」
親書の内容はアールにあてたものだけれども、その中に、
ルーティスの協力の要請に対してディスタードのガレア軍が手を挙げたため、
非常手段の提案は一旦保留にすることが記載されていた。
リーダーの男ハンターたちが話していた内容は、ハンターズ・ギルドから返ってきた返事であり、
ガレアの将軍と共に事に当たってくれという内容だった。
「俺たちも一緒に?」
リーダーの男ハンターは不思議そうに聞いた。
「だって、ここまで来て、それで終わりだなんてキミらだって納得はいかないだろう?
当然、強制はしない、自分たちの仕事はこれまでだと思った人は帰ってもいい、
当初のキミたちの任務は果たされた、だからこれ以上のことはする必要はないわけだしね。」
確かに、最初にギルドで受けた仕事の内容は、
ルーティスの協力の要請に応じる勢力が現れるまでの間、
ルーティスを侵攻してくるバランデーア軍からルーティスを守ること、
バランデーア軍撃退できる勢力が現れなければ非常手段をとること、それだけである。
その勢力と共にバランデーア軍を殲滅する事については全く触れられていなかった。
だが――
「いや、どうかな? 確かに、あんたらと一緒にバランデーア軍を倒せって言われてないが、
非常手段の件については保留になっている、つまり、その返事が来ないから、
それまでは守り切れってことになるだろ?」
リーダーの男ハンターはそう言い返した。さらに、デュシアが話を続けた。
「それに、あんたたちがバランデーア軍を撃退できるとも限らない。
だって、ディスタード軍はバランデーア軍に一度負けているじゃあないか?
まだ私らが非常手段をとる必要があるかどうか見極めなければいけないってことになるのさ」
確かに、それもそうである。この2人の言ったことに対し、ハンターたちは全員賛同した。
そう、何があろうと、自分たちの手でルーティスをやつらの手から守りたい気持ちはみんな一緒なのである、
ルーティスは学園都市、このハンターの中にもこの学校出身ものも数多くいることだろう。
そうでなくても、ハンターの仕事などで何かしらでお世話になっているものも多いハズ、多かれ少なかれ――
「話は決まったみたいだね。だったら早速、あいつらを撃退しよう!」
と、アールは得意げにそう言った。
アリエーラはそのアールの様子、リファリウスの様子をニコニコとしながら見ていた。
そう、アリエーラの場合は他のハンターたちとは異なり、リファリウスと一緒にいられるのが嬉しそうな様子だった。