エンドレス・ロード ~プレリュード~

悠かなる旅路・精霊の舞 第1部 先の見えぬ旅路 第2章 遠き旅路

第28節 黒船来航

 回答が返ってこず、途方に暮れていたハンターたち、リフレッシュ・ルームに一堂に会していた。 緊張感が漂うその中で、とあるハンターは回収作業をするための準備を進め、とあるハンターは建物の周りを警戒したり、 さらには学園内の他の施設の様子を見に行ったりと、落ち着かない様子が続いていた。
 一方でアリエーラは、既に破壊されている校舎からなんとか回収できた資料を整理と、 ”美しいアリエーラさんのためならなんでもやると豪語するアリエーラさん大好き信者” に破壊されている校舎からの回収と回収準備の荷造りを指示していた。 破壊されている校舎の資料ということもあって、自分たちで回収するのならともかく、 回収しないにしてもそのまま放置しておくわけにもいかない、 そう考えたアリエーラの意志によってやるだけのことはやることにしたのである。
 そうやって時間だけが過ぎていくが――それでも、ハンターズ・ギルドからは政府からの返答はない状態が続いていると言っていた。 現在、ギルド側から政府に直接掛け合っている最中であり、それから一向に動きがない。
 しかし、水面下での交渉に動きがない中、現場のほうで新たな動きが発生した、それは――
「おい、ちょっと! みんな、来てみろよ!」
 リフレッシュ・ルームにリーダーの男ハンターがあわててやってきた。
「どうしたんだ、そんなに慌てふためいて?」
 デュシアが不思議そうに聞いた。
「いいから、みんな来てみろって! なんか、とんでもないのがいるぞ!」
 とんでもないものとは?

 とんでもないものは建物の屋上から見えた、大きな黒い船が北東側の海に見えたのである。 その船は、明らかに軍艦のようである。
「えっ、あんなところに、あんな船がいていいのかよ!?」
「ん? どういうことだ?」
「あ、そういえばそうだな、あっち側は、ディスタードが支配権握っている海だから、 特に軍艦がいたらマズイ気が――」
 ハンターたちは驚きながら口々に言っていた。 確かにそうだ、あそこに船なんかあったら、ディスタード軍に――アリエーラはそう思った時、 その軍艦について気が付いた。
「いえ! あれはディスタード軍の戦艦です!」
 アリエーラの言ったことに対し、みんなはさらに驚いた。
「ディスタードの船だって!? でも、確かに、言われてみると、それっぽい気がするな――」
「でもさ、なんでディスタードが介入するんだ? 第一、ディスタードは手を引いたんじゃなかったのか?」
「だよな、ランスタッドは既に解体の危機、そもそもバランデーア相手に撤退を余儀なくされ、 ルーティスどころの話じゃなくなっているハズだったと思うが――」
 ハンターたちは再び口々に言っていた。その様な中、また驚くこと発生した。
「おい! あそこにも船がいるぞ!」
 別のハンターがその存在に驚きながら言った。 その船はクルーズ船みたいな船で、戦艦のほうからやってきていたようだ。 しかも、その船の進行方向からすると――
「おい、あの船、こっちに来ないか?」
 確かに、その船は、ルーティス島を目指して向かってきているようだった。 そして、その乗組員の一人が、大きく飛び上がり、真っ先にルーティスの地へと上陸した。
「なんだなんだ!? 今、飛び上がったのか!?  ともかく、誰かが上陸してきたぞ! ちょっと、様子を見に行かないか?」
 それに対し、慎重な意見も。
「待て待て、政府からの返答がないのに動いていいのか?」
 確かに、それはそれで問題もありそうだ。それに対してデュシアは苦言を呈すように言った。
「そんな、期日を守らないような連中を待ってたって仕方がないだろう。 第一、あれがルーティスの脅威になるとしたら、 非常手段の障害になるとしたら、尚更ここで動かないわけにはいかない。 だから、ここは手分けして――」
 と、彼女が説明する中、アリエーラはルーティスの地に降りたった人物のことがとても気になってしまったため、 わき目もふらず、さっさと先に行ってしまった。
「えっ、ちょっと、アリエーラさん!?  どうしたんだろう、いつものアリエーラさんにしては抜け駆けだなんて珍しいな――」
 リーダーの男ハンターはそういい、他のハンターも含め、彼女の立ち去った後を不思議そうに見つめていた。