ハンターの仕事は絶えることなく、毎日のように何かしらの仕事が舞い込んでくる。
しかし、それでもやはりクラウディアスへ行くための手がかりとなりそうな話については全くやってこなかった。
どの国とも一切国交を断絶しているクラウディアス、依然として沈黙を守っている状態、
どうしてそうなっているのかは知らないけれども、仕方がないことだろう。
そうこうしている間にとうとう1年が経ってしまった。
しかし、1年も経つと、周囲の状況が割と変わっているものだ。
特に、女性のハンターが活躍しているなんていう話は割と聞くようになった。
聞くようになったって……わざわざ聞こえるぐらいの話なので、まだまだ始まったばかりという感じではあるけれども。
ただ、そのパイオニアたる人物がアリエーラであることは忘れてはならない。
確かに、アリエーラよりも先にデュシアという存在もいるけれども、このような世界遺産クラスの美女で、
なおかつ、ライセンスに記載されている内容もある意味デタラメに近いオーバースペック児というインパクトの強さと、
それに見合った理解不能な強さ、そして、今もなお語り草となっている”美しすぎる女教授の歴史的大発表”の件と、
これほどまでにカリスマ性を高めている要素満載な彼女の存在、まさに女ハンターの代表と言っても過言ではないことだろう。
そのため、あまりに目立ちすぎた自分という存在に少し窮屈な思いをしているアリエーラだった。
そして、この1年の間、アリエーラとしては思わしくない事態が起こってしまった、
それは、ルーティスはディスタード帝国のランスタッド軍が出入りしていたのだけれども、
そのランスタッド軍がルーティスから手を引いたことにある。
それは、当時、長らく戦線を維持していたバランデーア軍との戦いに敗れたためであり、
ランスタッド軍は帝国内でも非常に追い込まれている状況となっている。
ということは、このままだとルーティスは――
ということで、アリエーラの次の仕事は、今や窮地に立たされているルーティスに関する仕事である。
内容が内容なので、当然大型窓口経由であり、しかもハンター全体司令の通達が打診されている。
このような通達が出されている仕事については主に非常事態を意味しており、
それだけに、原則、最優先で事に当たる必要がある仕事であることを意味しているのである。
ただ、出身地ですらわからないアリエーラとしては、3年もの間お世話になった地であり、
思い入れもひとしお、そのため、ルーティスには半ば里帰り気分でやってきたのだった。
だが、かつての学び場は彼女がここを発った状態からそんなに変わってなかった、なんとも嘆かわしい状況である。
「ここがルーティス……かつての栄光もないような状況だな」
デュシアはこの学園の卒業生なのだが、ルーティスのこの惨状に対し、
具体的な言葉として出さないまでも憤りを感じていたようだ。
「デュシアさん! こっち!」
アリエーラはデュシアの気持ちを察し、彼女を呼んだ。呼んだ先には辛うじて戦火を免れた建物があった。
「こんな荒れ果てた中でもちゃんと残っているのね――」
デュシアはそう言いながら、少し安心したような感じだった。
アリエーラはそれに対して答えた。
「ええ、そうですね。この建物は――」
アリエーラにとっては、それは思い出深い建物だった、
そう、この建物は――アリエーラが長らくお世話になっていた、エンビネル教授の召喚魔法研究棟、
つまり、アリエーラが長らく滞在することになった研究室のある建物なのである。
この建物が残っていただなんて――