セラフィック・ランドへの調査団として、クラウディアスは先発隊にセディルをトライス島に向かわせた。
その後に王のリアスティンを中心としたメンバーで構成された調査団がセラフィック・ランドを脅かしている謎を探るべく、調査を継続した。
しかしその後は行方知れず、みんなどこへ行ったのかわからない状態となってしまった。
「その脅威とはどのようなものなんです?」
アリエーラはまったく知らなかったのでデュシアは説明した。
「セラフィック・ランドに魔物が集中したのよ、異常行動を見せたりとか、まさに地獄絵図っていえばその通りかもね。
それにしてもアリって当時のことを覚えてないとか、単にそもそも生まれていなかったから知らないとか、
そういうことでなくて、なんていうか……とにかく全然知らないって感じね――」
そう言われたアリエーラ、どうして自分はそんなことを知らないのだろうか、あえて避けて通ってきた?
少なくとも15年以上は生きているはずなので、そもそも生まれていなかったということはないだろう、
とにかく、どうして知らないのか気になるところだった。
「もしかして私はこの辺りの人間ではないとか?」
と、アリエーラは言うけれども、それに対してエステリトスが答えた。
「あの話はエンブリア中で話題になった話よ。
セラフィック・ランドはエンブリス神話において重要な土地だからね、
あそこで何かがあると、どこでも気にするもののハズよ」
それに対してデュシアが驚いた。
「……むしろ幻獣なのにそういう話をちゃんと知っていることのほうが驚きだな」
エステリトスは得意げになっていった。
「ええ、それはもちろん。
私はセディルについてから随分と長い時間が経ってますもの、
だから流石にそれぐらいはねえ――」
なるほど、長いことここにいればそれは当然と言えば当然か。
そしてクラウディアスの調査団が行方不明になったにも拘らず――
否、調査団の一員だったセディルもどこかへと消えてしまったにも拘らず、
セディルのエステリトスがいつまでも幻界に帰らずにここでいつまでも鎮座している状態なのはどういうことだろうか。
それについてエステリトスが答えた。
「本当ならクラウディアスに持ち帰り、クラウディアスの今の主に話すべき内容なんだけれども、
あっちに帰ろうにも帰れない状態なんじゃあ仕方がないわ。
新しい主のアリエーラに免じて2人に教えてあげるわ」
と、エステリトス自身も主無き状態でクラウディアスに渡る手段がなくて困っていた状態だったようだ。
「私に託されたのはメッセージよ。
世界はただただ脅威にさらされているわけではなく、終焉わりを迎えようとしているのだそうよ。
で、その終焉を画策する者というのがいて、そいつは世界の脅威を育む場と考えているみたいなのよ。
だから、この世界から脅威が生み出される前にその芽を摘んでしまうつもりなんだってさ――」
あまりに漠然としていてよくわからない。
それこそ、それを伝えるように託されたエステリトス自身も言葉以上のことは何も知らされていないため、
彼女自身がなんとも言ってみようもない状況らしい。
とりあえず、言葉通りに受け止めるとしたら、この世界には脅威というのがいて、
脅威が育ってしまう前に終焉わらせようとしていることだろうか。
でも、それってなんだか矛盾しているようにも聞こえる。
そもそも終焉わりを迎えようとしている世界から脅威が生み出されようとしている、
その”世界の脅威”がなんなのかわからないけれども、
いずれ脅威が生まれて世界を脅かす可能性があるというのならば、
その前に世界を破壊してしまおうとすることに何か意味があるのだろうか?
だって、”世界の脅威”がこの世界にいるのなら、
わざわざ終焉わらせようとしなくてもその”世界の脅威”のせいでこの世界が終焉わってしまうはずだ、まったく意味が分からない。
それとも、世界の終焉らせ方に何かしらの意味があるのだろうか、そこに拘る理由は?