「で、ところであんたはやっぱり魔法系なの?」
デュシアとの話は続いた。
確かにアリエーラの見た目ではそう言われても仕方がないのは事実である、
いかにも接近戦をこなすファイターのような装いではなく後方から前衛を支援するサポーター、
つまり、どこからどう見ても魔法使い系のような印象なのでそう思われるのも仕方がない。
しかしアリエーラの実力については発行してもらったライセンスが物語っていた。
どういう立ち回りが可能なのかはすべてハンター・ライセンスに表示される。
あえて”スピリット・ライト”を用いられているのは持ち主の意志に呼応してそれが列記されるためであり、
虚偽の内容やハッタリで記載されることはない。
それを踏まえたところで。アリエーラはライセンスを見せると、
まずは何といってもたくさんの内容がずらっと書き並べてあったことでデュシアは圧倒された。
「えっ? ええっ!? あんたなんなの!? 何者なの!??
なんか、見たことも聞いたこともないのが書かれているんだけど!?
ライセンスの不具合とかじゃないよね!!? ”エレメンタル・マスター”って何!??」
そう言われても――アリエーラも実はよくわかっていないという始末。
というか、これが普通だと思っていたアリエーラのほうこそそう言われると困惑していた。
そして、次に驚いたのが――
「あっ、そうなんだ! あんた”魔法剣士”もしてるし、”ウィング・マスター”も心得ているんだ!」
魔法剣士というのは名前の通り魔法も剣も心得ている”クラス”だけれども、
それだけではなく両者の力を組み合わせて更なる力を発揮するという非常に優れた使い手である。
ここでそれを詳しく説明すると大変なため、それはまたの機会に。
一方で、”ウィング・マスター”とは――
「ごめん! さっきのはナシ! ”絶級ウィング・マスター”の使い手ということは腕っぷしのほうも覚えがあるってことね。
ずいぶんとキレイな顔してるクセしてなかなかやるじゃん。腹立ったら男をしばきあげる性質でしょ?」
……アリエーラは一切否定できなかった、本当にやっちゃってるし――。
「やっぱり! こういう女が特にキケンなのよね、男が甘く見る女の典型って意味でね」
アリエーラはもはやどう返答していいのかわからなかった。
”ウイング・ソード”、身軽さを売りとする軽戦士系クラスの一つで、
軽戦士系の中でも特に身軽でフットワークに長けたクラスのことを指す。
かつてアリエーラは”とある友人”と体術の特訓をし、
その技を修得したことで身についた結果がその”ウイング・ソード”の極意である、それは一応覚えていた。
しかし、具体的にどこでどうやって――その”とある友人”というのが誰なのかとかは覚えていない、
その人は大の親友のハズなのに――。
そして”ウィング・マスター”は”ウイング・ソード”の上位のクラスのことである。
つまり、アリエーラはより優れた使い手であることは確実なのである。
対してデュシアは”上級グランド・ウォーリア”の使い手で、
”グランド・ウォーリア”というのは”ウイング・ソード”とは対照的に身軽さよりも頑丈さを売りとする重戦士系クラスの一つで、
重戦士系の中でも特に堅牢な守りに長ける使い手であるクラスのことを指す。
早い話、アリエーラとデュシアの2人は正反対の性質なのだ。
さらに、ライセンスには初級・上級のような能力級がわかるように、
それぞれのクラスの背景の色で違いを表している。
通常はスピリット・ライトの基本色である薄暗い黒い色だが、
持ち主に呼応することで”スピリット・ライト”は淡い黄色を発するようになる。
それのやり方は単純で、ライセンスとして加工してもらった”スピリット・ライト”を受け取った時に一晩肌身離さず持っているだけ。
すると、心得ている”クラス”名と共に、そのクラスの背景に適切な色が付くのだという。
初級は黄色――つまり色なしだが、上級が緑で絶級が青である。
他には上級と絶級の間である超級が赤などと、はっきりと色分けされるらしい。
そして、絶級ウィング・マスターというとおり、
アリエーラの能力は例の寝そべっていた男がバカにすることなど言語道断な能力者だということである。
それこそ、本当に殺されたってもんくが言えないような実力者であり、
手加減してもらえただけでもありがたいと思うべきなのであり、
とにかくアリエーラさんに謝れということである。