男は改めて高僧に一例をし、後ろを振り向くと、そこには――
「いいわね、賢者ディスティア、さしづめ、ディア様ってところね!
いいじゃないの、今度、ウチに来てゆっくりとしていかない?」
はぁ? ディスティアは相手の女のそのセリフに対し、呆気に取られていた。
「安心して、別に取って食おうなんて考えているわけじゃあないから。
あんたが新たに賢者ディア様になったからよ。
賢者様は丁重に扱わないと罰が当たるって、自覚してる?」
そういえば――ディスティアはそういうしきたりがあったことをなんとなく思い出していた。
「ということは――賢者らしく振舞うべしと、そう言うことになりますかね?」
と、ディスティアは改まり、畏まりつつそう言うと、相手の女はニヤッとしながら答えた。
「まーた随分と角が取れたもんね。昔のあんたとは到底思えないわね。」
「ははは、そうですか……」
ディスティアは少し照れていた。
「それにしても、どうしてここへ?」
ディスティアは訊ねると、女は答えた。
「連絡を受けたからよ、あんたがここを出るってさ。
だから、いの一番にここに飛んできたってワケ。”約束”のために足がいるでしょ?」
それは――確かにその通りである。
「ま、そういうわけだからさ、四の五の言ってないで、さっさと激戦地へ行くわよ、ディア様♪」
ディア”様”って――ディスティアはさらに照れていた。
「いいじゃないのよ別に、イケメンの賢者様とか超高額物件じゃないのよ。
そんな相手とこんな会話ができるなんて――エレイアが羨ましいわね。」
と、女はとても楽しそうに言うが、ディスティアはずっと照れていた。
「そ、それよりも――なんてお呼びすればいいでしょうか?
”お姉ちゃん”のほうがいいでしょうか? それとも――」
ディスティアはそう聞くと、女は言った。
「そうね、”お姉ちゃん”ってのもそそるけど――いつまでもお姉ちゃんにべったりっていうのもアレよね、賢者様的にもさ。
だから――まあ、賢者様になったわけだし、今後は好きに呼んで頂戴な。
もちろん呼び捨てでも……お姉さん大歓迎よ♥」
と、嬉しそうに彼女は言うと、ディスティアは狼狽えていた。
「わ、わかりました。
ではセイバルの島までよろしくお願いいたします、リリアリスさん!」
ということで、ディスティアはリリアリスが運転する傍らに停めてあった四輪駆動のオフロードカーに乗り込み、
そのまま西に向かって爆走、その途中でガレアの高速艇に乗り換え、セイバルの島へと赴いた。