エンドレス・ロード ~プレリュード~

最後の奇跡 第1部 光を求めて 第2章 再起への誓い

第33節 傀儡

 そして、他のシェトランド人は、敵の拠点内に侵入してからというものの、 セイバルを制圧するためと暴れまわっていたのだが、次第にその流れがあらぬ方向へと向かっていることに気が付き、 危険を感じていた。
「な、なんかおかしくねえか? 急に敵の数が増えているような――」
 エイゼルはビビりながらそう言うと、他のシェトランド人が話をした。
「増えてるっつーか、ぶり返しているみてえだぞ――」
 ぶり返し!? どういうことかとエイゼルが訊くと、目の前にはアイゼルが――
「アニキ! 無事か!?」
 しかし、そのアイゼルの様子がおかしい――
「……すべては、女神様の意のままに――」
 そう、なんと、再びあの時のように目が虚ろになっていたのである。 そして、そのエイゼルの目の前にはイールアーズまでもが――
「イール! なんだ、どうしたんだ!?」
 エイゼルは訴えるように聞くと、イールアーズは――
「俺は……ルイゼシアを守る――お前たちの手から妹を守る――」
 あからさまにおかしかった。 その時、イールアーズの背後からセクシーなアイドル姿のエレイアが――
「うっふふふふふ……作戦通り、こいつは愛する妹のためなら何でもするの、知っているでしょぉん?  そう、こいつの目には、この私が自分の愛する妹に見えているのよ、ねっ、お兄ちゃん♥」
 エレイアは可愛げな声でそう訴えると、イールアーズは――
「ああ、ルイゼシア、俺のルイゼシア――」
 虚ろな目をしながら彼女のことを見つめるとそう言った。
「だからお兄ちゃん、お願いがあるの! こいつら、私のことをいじめようとするの!  それをセイバルの人たちが助けてくれたのに、こいつら、セイバルのことをやっつけようとするんだよ!」
 エレイアは訴えるようにそう言うと、イールアーズは剣を持ちながら言った。
「それはよくないな、お兄ちゃんが何とかしてやろうか――」
 だが、エレイアは――
「うふふっ、大丈夫よ、私はあなたの可愛い可愛い妹だもの、でしょ、お兄ちゃん♥」
 と、無邪気な表情で言うと、イールアーズは――
「そうだ、俺のルイゼシア、お前はすごく可愛い、とても可愛い、この世で一番可愛い――ルイゼシア、俺のルイゼシア――」
 再び虚ろな目で彼女に対してそう訴えた。すると、エレイアは――
「うふふっ、そうよ、流石はお兄ちゃんね♪  私はこの世で一番可愛いのだからそのことをこいつらにもきちんと教えてあげるわ、うっふぅん♥」
 と、エレイアは色っぽい仕草でどこか邪悪な感じ面持ちでそう言うと、エイゼルたちの前に立ちはだかった。
「くそっ、これがぶり返しの真相かよっ! だが、今度はそう簡単に毒香にかからんぜ!  どうして命令コードとやらが聞いてないんだかわからんが”Dの40237AF”!  それとも”Bの8A50D13”がいいか!? ローナちゃんが俺に託してくれたコードだぜ!」
 ”Dの40237AF”はやはりバリアブル・コアの初期化、エレイアの状態が元に戻るコードである。 一方で”Bの8A50D13”は、バリアブル・コアの活動を一旦停止させるためのコードで、 彼らにとっては第2の切り札的なコードそのものだった。
 だが、しかし、そこへ――
「お前たちがここまでやってこれたことについては褒めてやろう。 それに、わざわざ”鬼人の剣”と呼ばれる手練れまで手に入れることもかなった、 万人斬りは惜しくも逃してしまったが、とにかく、私の計画通りに事が進んでいるようで何よりだ――」
 その男の登場にエイゼルをはじめ、何人かのシェトランド人たちは驚いていた。

 その男に対し、エイゼルらは――
「貴様、ドライアス! てめえ、今日という今日こそ決着をつけてやるぜ!」
 そんなことを口々に言っていた。 そう、その男はドライアス、やはりというべきか、シェトランド人にとっては因縁の敵そのものだった。 ところが、ドライアスは全く動じていない――
「くくっ、なんだ、今の命令コードがどうしたというのだ?」
 えっ――エイゼルたちは呆気に取られていた。
「お前たちの確認したすべてのコードだが――この女は今では異常なコードとして認識するように設計しなおしてある。 つまり、この女にはそんなものは通用しないのだよ!」
 と、得意げに言うドライアス、さらに続けた。
「そもそもそんな古臭いコード……今ではもっとシンプルな命令コードが主流なのだよ!  なあ、メリュジーヌ……いや、”シュリーア”よ! 今すぐここでこれまでのことを報告せよ!」
 すると、エレイアはその場で畏まると、説明を始めた。
「”道徳死天使・ヴィーナス・メリュジーヌ”はシェトランドの一団の進撃をトリガーとし、 そして、命令コードの異常を検知しましたため、ドライアス様の仰せの通り、彼らの仲間を装う事といたしました」
 なっ、まさか、茶番だったのか!? エレイアの話は続いた――
「そして鬼人剣・イールアーズを偽の”テラ・パワー・コア制御室”へと誘導すると共に、 この服装を身に着けることに成功、この時点で”シュリーア”への進化条件を満たすことに成功。 ”テラ・パワー・コア制御室”へと移動し、鬼人剣・イールアーズがエレベータから迂回している間、 鬼人剣・イールアーズが目視した”テラ・パワー・コア”のホログラムを消去、 同時にホログラムが投影されていたベッドの上にシュリーアが横たわり、 ”シュリーア”の力を持って”テラ・パワー・コア”に成り済ますことにも成功。 それにより、鬼人剣・イールアーズの獲得にも成功いたしました」
 なんだって!? それじゃあイールアーズは――
「”シュリーア”の力を行使したことにより”シュリーア”化が進み、 私の誘惑魔法効果も現在上昇中でございます――」
 なっ、誘惑魔法効果、ということは――
「現在、施設内の誘惑魔法効果は58%まで上昇中、これより、完全”シュリーア”化に移行後、 施設内を完全に取り込むまでにあと1分あれば完了いたします。 同時に、これまで私の色香を経験した男たちの再下僕化についても3分で完了いたします」
 再下僕化!? ということはまさか――
「ふっ、どうやらすべては順調だということのようだな、よろしい!  では”シュリーア”よ! これより”悩殺破壊女神・ヴィーナス・シュリーア”への完全進化のロック解除を許可する!  そして定刻通り、早速事を運ぶのだ! それによってこの私が! この世界の新たなる支配者として君臨する!  そのために”シュリーア”よ! 今後はこれまでに以上に私のために尽くすのだ!」
 すると、”シュリーア”は邪悪な笑みを浮かべると、服装がだんだんとセクシーな装いへと変わっていった。 服装のシルエットについてはほぼ変わっていないのだが、レース地であった生地の透け感がさらに透明化していき、 隠すところは隠しているということ以外はもうほとんど裸みたいな感じだった。  また、シュリーアへの完全進化により、身体つき自体もこれまで以上のセクシーな身体つきとなり、 胸も大きさと腰の括れ、お尻の大きさに至るまで拡張されていった……
 そして、シュリーアは――
「うふふふふっ、すべてはドライアス様の仰せのままに――、シュリーアはドライアス様の従順なる下僕にございますわ。 さあ、このわたくし目に何なりとお申し付けくださいませ、私の愛しのド・ラ・イ・ア・ス・さ・ま♥」
 と、シュリーアはドライアスのことを猫なで声で誘惑しながら言うと、ドライアスは興奮しながら言った。
「シュリーア! やはりお前はとても美しい! 最高の女だ! さあ、そうと決まったら早速宴を開くとしよう!」
「はい♥ ドライアス様♥」
 と、シュリーアはドライアスの腕にがっしりとしがみつきながら猫なで声でそう言った。 そして、辺りはその女の色香が充満し、シェトランドの男たちは再び彼女の毒香に――
「やっ、やっぱりダメだ……、エレイアちゃん、やばすぎる――」
 エイゼルをはじめとする男連中は、完全に彼女の下僕へとなっていった。
 そして、ドライアスの恐怖政治が始まることとなった、 そう、シュリーアの能力を使い、先ほどのセイバルの総司令官たちを片っ端から――
「さてシュリーアよ、それが終わったら次は――わかっているな?」
「はい、ドライアス様♥ うふふふふっ、 私から離れて行ったボウヤたち――そろそろこの私の色香が恋しくなってきたころじゃあないかしらぁん?  ウフフフフフ――」
 離れて行ったボウヤ――そう、ガレア軍によって一旦救助されている者たち! ローナフィオルたちが危ない!
「うっふふふ……あっははははははは! さあ、私の従順なる下僕共! 私のために死ぬまで働き続けなさい!」