そして、その監視の目はセイバル軍の本部内を映していた、
エレイア率いるシェトランドの軍が、エントランスに侵入していたのである。
だが、その際の侵入の方法が、まさにドライアスの言う女神様のお戯れと言わんばかりに、
エレイアがセイバルの番兵に訴えかけると、番兵は彼女の言う通りに従っていたのである。
「すげえなエレイアちゃん! 流石はエレイアちゃん! まさに女神様のなせる業だぜ!」
そんな様に、シェトランドの男共はひどく興奮していた。
一方のイールアーズは呆れており、この始末、どうつけてくれようか――酷く悩んでいた。
そんな彼に対し、エレイアが話をした。
「やっぱり、私はこのために身体を改造されていますからね――」
「そうか、でもまあ、敵も、むやみやたらに俺たちのことをなめているとこういう目に合うってことが身に染みてくるってところだろうな――」
イールアーズは片手で顔を押さえつけたままそう言うと、エレイアは改めて話をした。
「そういえば、あなたがイールさんですか?」
それに対し、イールアーズは相槌をうつと、彼女は訊いた。
「つまり、テラ・パワー・コアさんのお兄さんです?」
そのセリフを聞き捨てならなかったイールアーズ、態度を一変させ、エレイアに訊き返した。
「ルイゼシアはどこだ!? 知っていたら教えてほしい!」
それに対し、エレイアはにっこりとしながら答えた。
「やっぱりそうなんですね! 私、彼女がどこにいるのか知っていますよ! ついてきてください!」
あまりの大所帯では目立ちすぎる、ただでさえ目立っているうえ、すでに侵入していることがバレているハズなのに。
そのため、シェトランドの一団は敵の本部内で散開し、個人個人で行動を始めることにした。
そんな中、イールアーズはエレイアが案内するままに、本部内を歩いていた。
そして、本部の研究棟という場所にやってきて、エレベータに乗り込んだ後――
「やだっ、そう言えば私、こんな恰好――」
エレイアは、今更ながら自分の恰好に気が付くと、とても恥ずかしそうにしていた。
その様子に、イールアーズは何を今更と思いつつ、再び片手で頭を抱えていた。
「ど、どうしよう私――」
エレベータは到着したが、その場で完全に立ちすくんでしまったエレイア、
イールアーズは通路を見渡すと適当な部屋を見つけたので、
その部屋の中の様子を探って異常がないことを確認した後、エレイアを促した。
「ほら、この部屋に何かないか?」
それに対し、エレイアは部屋の中にそそくさと侵入した。
「の、覗いちゃダメよ?」
エレイアはそう言うと、イールアーズは「はいはい」
そして、部屋の扉が閉まってから5分ほどたち、イールアーズがイライラし始めると、
扉の中からなんだかやたらと可愛げな服装のエレイアが飛び出してきた。
「おっ、おい! なんだその服は! もっとマトモな服がなかったのか!?」
イールアーズはそう言った。
彼女の服装は、ピンクと白だけで構成されている、あからさまにどこかのアイドルのような服装だった。
それこそ、かつてのレディ・ベーゼが着用していたような可愛らしいセーラー服のような恰好に近いものがあり、
布地の面積は確かに増えていると言えるのだが、短いスカートで綺麗な御御足が拝める服装であることには変わりなく、
さらに、肩と背中が大きく開いていて、腰の括れも開いているような姿であることには変わりなかった。
さらに生地は全体的にレース地であり、透け感が……。
それに対してイールアーズ、前と何が違うんだと悩んでいた。
「う……ん、どうみてもこれが一番マトモな感じだったんだよね……。
でも、これならとりあえず我慢できるし――」
我慢できるのかよ、イールアーズは呆気に取られていた。
まあでも、それで妹が助けられるのなら……エレイアさえよければイールアーズは全く気にしていなかった。
「とにかく、急いで妹さんを助け出しましょう! 彼女はこの近くです!」
言われるがままにイールアーズは進んでいくと、そのうち、”テラ・パワー・コア”という文字が確認できる部屋までやってきた。
「ルイゼシア! 今行くぞ!」
それに対し、エレイアはその部屋の扉を開けた。
「開いてますよ。さあ、はやく妹さんに会ってあげて!」
エレイアは扉をあけながらそう言うと、イールアーズは意を決して部屋の中へと入り込んだ。
そこには、確かにルイゼシアの姿が、ベッドに横たわっていた!
「ルイゼシア!」
だが、そこは研究施設らしく、イールアーズのいる場所は彼女がいる階層よりも上の方の階層だった。
イールアーズは目の前のガラス越しに見える下の方の彼女に向かって訴えていた。
「ルイゼシア! 待ってろよ、今行くからな!」
それに対してエレイアが申し訳なさそうに言った。
「ごめんなさい、下の階だったわね! でもとにかく、彼女に早く顔を合わせてあげて!」
すると、イールアーズは急いできた道を引き返し、エレベータへと再び乗り込んでいた。
その様を見届けていたエレイアは、ただニコニコとしながらその場で佇んでいた。
イールアーズは下の階のほうに移動すると、今度こそルイゼシアのいるところまでやってきた。
状況が状況なだけに誰もおらず、イールアーズは真っすぐルイゼシアのいるところまでやってきたのである。
そして、イールアーズは――
「ルイゼシア!」
部屋に入るや否やそう叫ぶと、彼女が横たわっているベッドへとすぐさま駆け寄った――
「ルイゼシア、しっかりするんだ!」
イールアーズは必死に訴えかけると、ルイゼシアは次第に意識を取り戻していった。
「うっ、うん……兄さん、私――」
イールアーズはその声に反応し、再び彼女に声をかけていた。
「ルイゼシア、大丈夫か!」
すると、ルイゼシアは目を見開き、イールアーズの姿を確認していた。
「兄さ……ん? 兄さんなの!?」
ルイゼシアはイールアーズの姿を確認すると、とても驚いていた。
そんな彼女に対し、イールアーズは大事そうに抱えていた。
「よかった……お前が無事で本当によかった――」
それに対し、ルイゼシアは嬉しそうに、イールアーズのことを抱いた。
「兄さん、よかった、兄さんこそ無事で……私のために――」
「何を言うんだ、俺はお前を助けるためにずっと頑張ってきたんだ、
引き下がるわけがないだろう――」
とにかく、イールアーズはとても安心していた。
そして2人は一旦離れ、マジマジと顔を見合わせると、ルイゼシアから話をし始めた。
「ふふっ、ありがとう、兄さん!
でもね、私、本当は兄さんが助けに来てくれるんじゃないかって本当は期待していたんだよ、
どうしてかわかる?」
どうしてって? イールアーズは訊いた。
「うん、実はね、夢を見ていたの、兄さんが私のことを助け出してくれる夢をね!」
そうなのか、イールアーズは軽くそう言おうとしたが、
ここは一旦堪えた、自分の大事な妹が話をしているんだ、少しぐらい話に付き合ってやらないと。
確かに、ここは敵地のど真ん中、とにかく脱出したいのは山々だったが――