ローナフィオルは剣を引き抜き、メリュジーヌに取り巻く下僕共をあしらいつつ、メリュジーヌに接近していった。
「予想以上に敵が多いと思ったら……これ、私らと一緒に来たやつもあの女の毒香にかかってんじゃん!
ったく、これだから男は!」
ローナフィオルは自分のカバンの中から球体のようなものを取り出すとそれに魔力を込めながら地面に向かって投げつけた!
「ガレア印の特別製よ!」
すると、その球体から煙が勢いよく噴き出すと、辺り一面を覆いつくした!
ローナフィオルはその中をすいすいと進んでいくと、周囲には煙の影響で苦しんでいる男たちの姿が――
「ちょっと強力な魔法だったから、しばらくの間我慢してね。さてと――」
自分の魔力であるが故か、ローナフィオル自身には影響はなかった、流石はガレア製、便利な代物である。
「エレイア、聞こえる……?」
ローナフィオルは女王様の前までやってくると、そう声をかけた。
彼女もまた、煙の餌食になっていて、苦しそうにせき込んでいた。
その様を見ながら、ローナフィオルは少々戸惑いながらとどめを刺すことにした。
「エレイア、聞こえる? ”Dの40237AF”よ!」
すると、女王様はその言葉に反応したのか、その場に崩れるように倒れこんだ。
「なんか、あっさり過ぎて変な感じね、まあいっか……」
ローナフィオルは倒れこんだ女王様に心配そうに駆け寄ろうとしたが、
その途中、自分のスマートフォンが震えだしたため、そちらを確認していた。
「動いたみたいね――」
それは、ガレア軍が本格的にセイバル軍へ向けて動き出したことを告げるシグナルだった。
そして、彼女はスマートフォンを片付けつつ、改めて倒れている女王様の元へと駆け寄ろうとしたが――
「……うーん、一旦、様子を見ようかしら――」
そう言いつつ、煙の中から出てきた。
「ローナ! 大丈夫か!?」
煙の外に出てくると、イールアーズが心配そうにそう言った。
彼と対峙していた男たちは全員その場に気を失ったかのように倒れこんでいた。
「大丈夫……だけど――」
ローナフィオルには思うところがあったようだ。
そんな彼女に対し、イールアーズは、
「何でもいいけど、そんな便利なものがあるんだったら、最初から使えよな――」
と、苦言を呈していた。
「ごめん、こんなに強力なものだと思ってなかったからさ――」
と、そんなことよりも、何だか彼女の様子がおかしいことが気がかりだった。
”Dの40237AF”、命令コードの意味はバリアブル・コアの初期化、
ローナフィオルはそれを狙ってコードを放ったのである、それでどうなることやら……。
煙はすっかりと晴れると、メリュジーヌの毒香にかかっていた男たちは全員その場で倒れていることが確認できた。
そんなこんなでその場の始末をしている間、シェトランドの島から次々とシェトランド人が上陸してきた、
セイバルへの本格的な攻撃を開始したのである。
だが、それでもまだセイバルの牙城を崩すには至らない、
大きな施設故に大規模な展開が想定される、一筋縄ではいかないのである。
「ルイゼシア……待ってろよ、絶対にお前を助け出してやるからな――」
イールアーズはそう呟いていると、その傍らで、倒れている女王様がゆっくりと起き上がった。
「うっ、頭が痛い、ここはどこ……」
それに対し、イールアーズとローナフィオルはすぐさま反応した。
「エレイア!」
ローナは心配そうに言うと、女王様はその声に反応した、しかし、何だか怯えていた。
「だっ、誰!? 誰なの!?」
どうしたのだろうか、記憶がないのだろうか。
しかし、怯える彼女をそのままにしておくわけにはいかない。
「エレイア、大丈夫か!?」
イールアーズは強くそう言うと、女は反応した。
「エレイア! 私の名前、エレイア……!
もしかしてみんな、私のことを助けに来てくれたの!?」
それに対し、ローナフィオルも彼女に向かって心配そうに声をかけた。
「エレイア! 元に戻ったのね!?」
元に戻った……いや、そう言うわけでもなさそうだ、何というか、記憶がはっきりしていないような感じなのである。
「でも、それでもいい! エレイアが無事だったんだから! もう大丈夫、後はセイバル軍をこのまま攻めていくだけよ!」
ローナフィオルはそう言いながらエレイアに駆け寄った。
「ありがとう、みんな! ごめん、一人一人のことを全然覚えてなくて! でも私……」
「いいよ、気にしなくて! とにかく、無事でよかった……」
すると、女王様の毒香にかかっていた男共も意識を取り戻すと、
そこに調子よく、エイゼルが即反応、
「エレイアちゃん! 大丈夫か!?」
「みなさん、ありがとう! なんだか知らないけれどももう改造されるのはコリゴリ!
私はもう大丈夫だから早く、敵を倒しましょう!」
エレイアは元気よくそう言った。
「とりあえず、よかったというべきだな。
後は、ルイゼシアを助けるだけ、そのためにはセイバルの連中を――」
イールアーズは闘志を燃やしていた。