イールアーズらはシェトランドの後続部隊が来ると、セイバル軍を本格的に攻撃するため、とある作戦を打ち立てた。
それは、とにかくセイバル軍の施設をド派手に攻撃を繰り返すことであった。
それはそれはもう、セイバル軍にとっては大きな痛手であろう。
グレート・グランドが幅を利かせ、セイバルと協力関係を結んでいた勢力はあったが、
関係を解消しているところだらけなため、セイバルはほぼ孤軍奮闘を余儀なくされているのである。
とはいえ、それ自体はどの国にも当てはまることでもある。
「こんなもんでいいだろ、さて、問題はどう出るかだな――」
そう言うイールアーズに対し、ローナフィオルが指摘した。
「イールにしては珍しいじゃない、きちんと作戦を考えて指揮を執るなんてさ」
イールアーズは半ばムキになりながら答えた。
「仕方がないだろ、いつもだったらこういうのを考えてくれるハズのやつが揃いも揃っていねえんだからな。
それに、お前が調べた通りなら、エレイアを元に戻すことが可能かもしれない、そういうことならその方がいいだろ?
巷じゃあいろいろと言われている俺だが、流石にそう言うことは考えてる、勘違いしないでもらいたいもんだ」
それに対し、ローナフィオルはただニコニコとしながら話を聞いているだけだった。
しかし、その2人の様子を見ていたエイゼルは悔しそうに震えていた。
「ローナちゃん、なんでイールと仲がいいんだよ……」
イールアーズたちの作戦がうまい具合に進んでいると、そのうち敵のほうから動きが出てきたようだ、それは――
「あいつ……アイゼルじゃねえか?」
セイバル島の西側の建物の中からアイゼルが現れた。
その様子を見ながらイールアーズはそう言うと、さらに続けた。
「セイバル軍の兵隊の待機所、アタリだったようだな。
ここを押さえてしまえば敵の戦力は完全に無力化する――」
そこへ、エイゼルが――
「アニキ……本当に敵に取られてしまったのかよ、だったらせめて、俺の手で……」
自分の剣を握りしめながらアイゼルの元へ――
「エイゼル、早まるなよ! ターゲットが現れるまで持ちこたえろよ!」
イールアーズはそういうと、エイゼルは「わかってらぁ!」と言いながらそのままアイゼルの前に立ちはだかった!
「アニキ! 今日こそテメェをぶっとばしてやらあ!」
それに対し、アイゼルは――
「俺は――メリュジーヌ様のために――」
目が虚ろなまま、剣を引き抜くと、エイゼルに襲い掛かった!
イールアーズはその拠点から島の中央にある拠点に向かって進むと、
その途中でローナフィオルと合流した。
「始まった?」
ローナフィオルはそう聞くと、イールアーズは答えた。
「あっちはとりあえず、エイゼルに全部任せてきた。
俺らはこのまま敵の本拠地に向かうぞ」
「りょーかい。でも、エレイアってばどこにいるのかな?」
「十中八九、敵の本拠地、つまりは俺らが向かう先にいることだろう。
あいつら、重要なものほど大体一番重要な施設に隠したがる、今までもそうだった、悪いクセだ」
それに対し、ローナフィオルは「ふーん」と言いながら納得していた。
しかし、その途中で――
「なんだ!? 追われている!?」
イールアーズは異変に気が付き、急にその場で立ち止まった。
それに合わせてローナフィオルも立ち止まる――
「えっ、何、なんなの!?」
すると、イールアーズの背後からアイゼルの姿が――
「貴様ら……誰一人として逃がさん、すべてはメリュジーヌ様のために……」
その様に、イールアーズは驚いていた。
しかし、彼の驚きはそれで終わりではなかった。
「なっ!? どうしたんだ、エイゼル!?」
なんと、アイゼルの隣にはエイゼルが現れた、しかも――
「エイゼル!? 目がおかしいよ!?」
ローナフィオルはそう言いながら驚いていた。その時……
「ウフフフフ……まったく、私の庭でオイタをするなんて、イケナイ子たちねぇ……」
2人の背後からセクシーな女王様が現れると、女王様は不気味に笑いながらそう言った。
「何っ、まさか……」
イールアーズは自分の剣に手を差し伸べ、構えながら言った。
「もしかして、エレイア!?」
ローナフィオルは訴えかけるようにそう言うと――
「エレイア? 誰? 私の名前はヴィーナス・メリュジーヌ、
この世界に存在するすべての男を統べるために遣わされた唯一無二の存在よぉん♥」
と、女王様は胸が大きく開き、非常に短いスカートのドレス姿でとてもセクシーなポーズを決め、
いい香りを立たせながらながらそう言った。
女王様の顔は確かにエレイア、しかし、これまでの彼女の印象とは縁遠い非常にセクシーな服装で身を包んでおり、
男たちの目の保養たる存在となっていた。
「ちっ、ふざけやがって! 俺たちシェトランドをなんだと思ってやがるんだ!」
イールアーズは怒りをあらわにしながら剣を引き抜くと、次々と迫ってくる女王様の下僕をあしらっていた。
その様を見ながらローナフィオルは――
「……ホントなのかな、イールに色香が効かないって……。
でも、イールにとってエレイアってほとんど身内同然の付き合いでもあったから、
実際にはそのレベルなのかも……」
心配そうにそう言った。
「ローナ! こいつらは俺が引き受ける! だからさっさとエレイアを元に戻せ!」
イールアーズはアイゼルとエイゼルの剣を受けつつそう言うと、彼女にそう促した。
「わかった! イールも気を付けて!」