そんな調子で、彼女――お姉ちゃんとの暮らしはかれこれ1か月が過ぎようとしていた。
そんな頃、ディルフォードの身体には異変が起きていた、それは、お姉ちゃんが朝ごはんの支度のためにキッチンに立った時――
「身体が、軽い――!?」
気が付いたら、ディルフォードは家の外へと歩いて行っていた。
すると、お姉ちゃんもまた外へ出て、何かをやっていた。
「うまく歩けた? 前に比べてだいぶよくなったんじゃあない?」
確かに、あの時の調子ならどうにもならなかっただろうディルフォード、思えば傷の治りも早かった気がする。
「私も、プリズム族として一人前ね!」
つまりはディルフォードはプリズム族の癒しの力に抱かれながら寝たということだ。
これは、お姉ちゃんに感謝しないと、しかし――
「うふふっ、いいのよ、私のディール♪ いつでもお姉ちゃんに甘えたっていいのよん♥
でも、次からはできれば彼女からしてもらいなさいな♪」
お姉ちゃんは可愛げにそう言ってくるが、彼女――そこはディルフォードとしては一番悩むところだった。
「腕はどう?」
すると、お姉ちゃんはいきなりディルフォードに襲い掛かった!
ディルフォードは慌てて懐の剣を構え、お姉ちゃんの包丁に対抗した、だが――
「ふふっ、いい感じに治っているじゃあないのよ♪」
お姉ちゃんが持っていたのは包丁ではなく、おたまだった。
「言っとくけど、あんた程度の能力じゃあ、今のこのおたまの私にすら勝てないんだから、よく覚えておきなさいよ。」
何!?
「まあまあいいから、そんなことよりも先に、お姉ちゃんがご飯作ってあげるから待ってなさいな♪」
お姉ちゃんは朝食を作る状態へ戻った。
食卓、お姉ちゃんが作った朝食はとてもおいしかった。プリズム女というのはこういうものなのだろうか。
「私はラブリスの里育ちじゃあないんだよね。」
そもそも論として、プリズム族らしい生活はしたことがないという。だけど、
「でも、ま、一応こういう身だからね、プリズム族らしい修行でもやっとこうって思ったわけ。
その相手が、あんたみたいなイケメン男で超ラッキーだったけどね♪」
それは光栄なことで。それにしてもさっきのあの動作、かなりの気迫だった。
もしや、お姉ちゃんはプリズム族の中でもかなりの使い手なのだろうか?
そういえば、聞いたことがある。一族の中でもプリズム族の使い手として優れた者がおり、
プリズム族の使い手”プリズム・テラー”と呼ばれるものがいるということを。
それから、”プリズム・ロード”と呼ばれる、プリズム族の使い手の中でもその技を極めし者がいるということも聞いたことがあった。
お姉ちゃんは、もしや――
「まあ、それなら、”プリズム・ロード”と呼ばれるかもね。
”プリズム・テラー”だと特に里と外とを行き来し、里を護る”プリズム族の番人”というのが通例っぽいから、
そこからはみ出している私の場合は間違いなく後者かもね。」
それはまた、たいそうな――
「うふふっ、だからイケメンさん、容赦しなくってよ♪」
レヴィーアは色っぽくそう言った、再び殺意が――怖い。