ディルフォードは気が付くと、家の中のソファに寝かされていた。目の前にはあの女――
「うふっ♥ さあディル、あーんして♥」
女はご飯をスプーンで口の中に入れようと待っていた。彼の名前をどうやって仕入れたかは知らないけれども――
「なっ、なんのつもりだ!?」
と、彼は言うと、女はまた怒り出した。
「あーんっつったら素直に口開けりゃあいいんだよ!」
女は彼の口に無理やりスプーンを突っ込んだ!
とにかく、場は彼女のペース、ディルフォードは降参した。
「うふっ♥ ねえディル、私が作ったご飯、おいしい?」
……拒否したり無視したりしようもんなら間違いなく殺される。
別に野垂れ死ぬのであれば、願ってもない相談ではあるけれども、
この期に及んでディルフォードは恐怖感を抱いていた。だからだろうか、彼はおいしいと言った。
「ああっ、よかった、あなたの口に合って。
さあ、今日はもう疲れたでしょう、今日はもうゆっくりと寝ましょう。」
すると、女はベンチ引きずり、彼が寝ているソファにくっつけ――えっ!?
「うふっ♥ ねえディル、私と一緒に寝ましょ♥」
そっ、それは――
「あん? この私が一緒に寝ようって言ってやってんのがそんなに気に入らねえってか!?」
いっ、いや、そういうわけでは――ディルフォードは困惑していた。
「つべこべ言わず、この私と夜を共にすりゃあいいんだよ! このイケメン男が!」
女というより、ただの恐怖にしか見えなかった、しかし、そんなこと言おうもんなら、
彼女を拒否しようもんなら、死よりも恐ろしい恐怖が待ち受けているに違いない、
なんだかわからないが、とてつもない恐怖を覚えた彼は、素直に彼女の言う通りにした。
見た目は完全に美女、エレイアみたくふるまっていれば男受けしそうな感じのいい女だと思うが、
こんな態度を見せるところ、彼個人としても残念感がぬぐえなかった。
しかし、朝起きたディルフォードは彼女の豊満なバストの中で目を覚ました!!?
「えっへへへへへ♪ 万人斬りとか言いながら、アンタも所詮は男ね♪」
自分は彼女の胸の中で寝ていた……のか!? ディルフォードは困惑していた。
「うふふっ、嬉しいわね、こーんなイケメン男さんが私の大きな胸の中で寝てくれただなーんて♥
ちなみにあんたの彼女とどっちが胸が大きいよ?」
……答えたくない問だが、間違いなく、この女の胸のほうが大きいだろう、エレイアのとは違いが大きすぎるが――
そういえばエレイアも大きくなっている気がした、プリズム族の体質のせいだろうか、
そう考えると、プリズム族って結構胸のサイズが大きいということになるのだろうか――
まあ、ディルフォードとしてはそこにはそんなに興味がないため、正直どうでもいいのだが。
参考までに言うと、プリズム族は基本的に大きい反面、シェトランド人は控えめなのが多い。
恐らく、そういう民族的な体質によるものだと思われるが、シェトランド人でも例外なのがローナフィオルで、
彼女はシェトランド人では割と大きい部類に当てはまるようだ。
そして――
「ちなみに大きいのと小さいの、どっちが好き? やっぱりシェトランドさんなだけあって小さいほうがよかった?」
その問いには答えたくなかったディルフォード、何も言わなかったら怒られるかもしれないと考えていたが、それは甘かった。
「そっか! 甲乙つけがたいってことね! つまりはどっちも好きなのね、まったくもう、このド変態さん♥」
なんでだよ! ディルフォードは困惑していた。
「まあ、それはそれとして、昨夜はよく眠れたかしら? まさか、この私に抱かれてダメとか言わないだろうな――」
うっ、またしても殺意が……。
「いえ、言いません。おかげさまでよく眠れました――」
しかし、男女が2人で何とかというようなことはなかった、それがディルフォードとしては幸いだったのだろう。
「何を寝ぼけているのよ? プリズム女の巨乳に抱かれながら寝られてとってもいい思いをしたって言えばそれでいいんだよ!」
「はい! そうです! 貴重な体験をどうもありがとうございました! おかげさまでとても嬉しかったです!」
「あらん♥ ありがと、ディル♥ だからと言ってキスとかしねーからな。」
「ああ、そうですか。いえ、全然差支えありませんが――」
「はあ? 私とキスできて残念ってか!?」
「いえ! あなたとキスできなくてとても残念です!」
しかし、彼女は小悪魔的な態度で、舌を出しながら「えへへへへ♪」と言って笑っていた。
もう、女というやつはわけがわからん!
プリズム族の彼女はレヴィーアという名前らしい。何度も言うが、見た目は確かに美人で間違いない、のだが――
「うふっ♥ ねえ、ディル♥」
美人で間違いない……のだが、しかし――
「つべこべ言わず、私と一緒に寝りゃあいいんだよ!」
理不尽に怒るし、とにかく怖かった。素直に従うしかない。
「ねぇディール♪ 私の大きな胸の中で眠れて嬉しい?」
また、フラグが立った。ただでさえ答えづらいのにどう答えようか――
「あんたから見て私ってどんな? 恋人? 妹? 姉? 母親?」
なんだその選択肢は。だけど――そうだな、しいて言えば姉というところがちょうどいいだろうか。
不思議と恋愛感情はない、エレイアとは違って。
母親という感じでもなく、何というか、面倒見のいいお姉さんという感じがする――ディルフォードはそう言うと、
レヴィーアは――
「じゃあ、私のこと、今度から”お姉ちゃん”って呼びなさいな♪」
と、ディルフォードは即効でフラグを回収するハメになってしまったようだ、ど、どうしよう――
「ねえ、”お姉ちゃん”って――」
優しそうにそう言う彼女の裏側には殺意がしみだしていた、これは――観念するしかない!
「お、お姉ちゃん、ありがとう――」
すると、レヴィーアは優しそうな眼差しで楽しそうに答えた。
「うふふっ、いいのよ、私のディール♪ お姉ちゃんがいい子いい子してあげるから♪」
とにかく、ディルフォードはドキドキしていた、女性の胸の中で寝ているからというのもあるが、
それ以上に、彼女の存在が怖かったからである。果たして翌日、彼は目覚めることがあるのだろうか。