ディルフォードは、エレイアを裏切ることなどできはしなかった。
そうだ、ディルフォードは、エレイアを護ると約束した、
エレイアは自分のことをずっと待っていたんだ、それを裏切ることなどできはしない――
だから、ディルフォードはエレイアを抱きしめて言った。
「そうだ、エレイア……、私はお前を護る、そう約束したんだ。
今更、お前を疑うもんか、だから私はお前を信じる、さあ早く、ここから離れよう」
これでいいんだ……、しかし、そうやって安心した私の行動とは裏腹に、エレイアの背中からいきなり紐状のものが飛び出し、
ディルフォードの身体をぐるぐると縛り付け、動けないようにした、これは一体!?
「ごめんなさい、ディル。私は、こうするようにできているの――」
と、エレイア、こうするようにできているって!? すると、再びどこからともなく声が――
「フン、天下の万人斬りと言えど、所詮は男であることに変わりはないということだな!
そうとも、貴様にはその女の色香がジワジワと効いている、つまりはお前はその女に抗うことなどできない身体になっているのだよ!」
なんだと……ディルフォードは顔が引きつっていた。
「くっ、既に遅かった、というのね――」
ルイゼシアは悔しそうに言うと、再びどこからともなく声が――
「さて、レディ・ベーゼ、よくやった! これでお前の役目は終わった!
そうとも、今後お前はお前自身として生きることを許可する! 目覚めるのだ”ヴィーナス・メリュジーヌ”!
今すぐ、その許可コードを与える! ”Eの40832QZ”だ!」
すると、エレイアは顔を下へ向けた。どうなるんだ、シェトランドたちは息を呑んだ。
そして、彼女は次第に不敵な笑みを浮かべると――
「うっふふふふふふふ……、あっははははははは! 遂に! 遂にっ! この時が来たのよ!
そうよ、このアタシはヴィーナス・メリュジーヌ!」
突然、狂ったかのように笑いだすと、今度は態度を改め、
「男という男の心すべてをもてあそび、虜にするために生まれてきた魔性の女、
道徳死天使・ヴィーナス・メリュジーヌ様とはこの私のことなのよぉん♥」
と、その女は、突然これまでにないほどのセクシーなポーズでシェトランドの男たちにアピールしていた。
そっ、そんな、エレイアがっ――ディルフォードはその場で肩を落とし、愕然とした、エレイアに裏切られたのである。
さらに、メリュジーヌは自分の服装、身にまとっている服装の端っこから一部からひも状のものを取り出すと、
上着がスルスルとほどけていき、さらにはスカートまでスルスルとほどけていき、それは鞭へと変化していた。
そして、トップスは下着姿なのかビキニ姿なのか、オープンショルダーで腰の括れもしっかりと拝めるという際どい姿へと変貌しており、
ボトムスの可愛らしいスカートはさらに短くなっていて、セクシーな美脚の映える姿だった。
これまでの可愛らしいセーラー服姿から打って変わり、セーラーのコスプレをしたエロい女豹という存在に変貌しており、
まさに男たちを悩殺するため、自らの体つきを強調し、魔性の女と化した姿だった。
「うっふん♥ どお? アタシのセクシーなボディ、そそるでしょう? うっふふふふふふ♥
特に万人斬り様、あんたの大好物な短い短いスカートだけはちゃんと履いているのよ、超嬉しいでしょおん♥」
メリュジーヌは両腕を頭上で組み、自分の細い曲線美と胸の大きさを強調するかのようなセクシーなポーズでウインクをし、
男たちを誘惑した。
すると、連絡船に乗っていた男たち全員と、ディルフォードの背後にいた何人かの男たちから雄叫びが!
シェトランドの同胞たちまでもがどうなっているんだ!?
そして、メリュジーヌは取り出した鞭をふるいながら言った。
「ほらほらぁ、アタシの従順なる下僕共よ!
ボサっとしてないで、このアタシのためにシェトランド人全員をさっさと捕まえなさいよ!」
すると、彼女の虜と化した男どもは全員その通りに動き出し、ディルフォード以外のシェトランド人をすぐさま拘束した。
さらに、何人かのシェトランド人たちは、自ら進んで檻に入って行った――
「うっふっふっふっふ、それでいいのよ、哀れなおバカさんたち★」
「はい、美しきメリュジーヌ様のためなら何なりと――」
下僕と化した男たちは目がうつろだった。
「エレイア、こいつら、まさか――」
ディルフォードは息をのみながら訊いた。
「うっふふふ、そうよ、アタシの命令でついてきたのよ。
そもそも、このアタシの任務は、ディル、あなたをここにおびき寄せるためなのよ♪」
やっぱり、そう言うことか。
しかし、気が付いた時には既に完全に彼女の色香にはまっていたディルフォード、もはや手遅れだった。
「だ・け・どぉ~、あんたって男はなっかなか私の術中にはまってくれなくってね、
堅物というかなんというか。んでも、エレイアちゃんにメッロメロのあんたのことだから……」
メリュジーヌはエレイアの演技を始めた。
「ディル! 私を信じて!」
さらに続け、今度は彼を抱きしめてきた。
「ディル! 私、あなたを信じてるわ!」
エレイアはメリュジーヌに戻った。
「うっふふふ、所詮は男、バッカみたいに”お前を守ってやる”とか、”お前を愛している”
とか言ってくれちゃって~★ こんな色男にそんなこと言われちゃったら……イヤ~ン♥
ちょーうれしー♪♪♪」
メリュジーヌは滅茶苦茶楽しそうだった。
エレイアという存在は、すでにそこにはいなかったのだ、
そこにいたのは、かりそめの、エレイアという女性の仮面をかぶった魔性の女・メリュジーヌだったのだ。
プリズム族たるその身体から放たれる誘惑のオーラで、異性を意のままに操るというが、
メリュジーヌはその能力を以て、これまでディルフォードと共に歩んできた道のり上の男を誘惑し、
虜にし、下僕として従えていった。それに誘惑と言っても、ただ誘惑魔法を浴びせただけではない――
「うふっ♪ そうねえ、今のところ、一番だったのは、あのアスダルとかいう男――
ふふっ、彼ったら、すごいのよ? 本当に、とーっても楽しかったわ――」
そんな、まさか――
「それから――そうねえ、どっかの廃屋であんたが閉じ込められたときかしら?
あん時は一度に5人とプレイすることになって超楽しかったわぁん♥」
なんだと!? そんな!
「ふふっ、そのアスダルなんだけどさぁ、
あいつねえ、アタシと寝たらすぐにこのアタシのために仲間を裏切るって約束してくれたのよおん♥」
なんだって!? あれはアスダルの仕業、この女の色香というか毒香というか、それにかかったあいつの仕業だというのか!?
ディルフォードにとっては信じられないことだった。
「ふふっ、またあの男と楽しい夜を過ごしてみたいものね♪
となると、やっぱり一番気になるのはあなたかしらん♥」
すると、メリュジーヌはディルフォードの傍らに寄り添って言った、まさか――
「お前たち、万人斬りをベッドへセットしろ!」
仰せのままに、女王様……下僕共が口々にそういいながら、ディルフォードをベッドの上にセットした、そして――
「さあ、アタシの愛しいディルフォード様♥ 今宵はこのアタシでたあっーぷりと楽しんでくださいな♥」
やっ、やめ、やめろぉおおおお!