しかし、その魔性の女の色香に逆らえず、ディルフォードはその女を抱いて寝てしまっていた。
だが、そこへ――
「ねえ、ディル♪」
ディルフォードは無我夢中だった、彼女のその楽しそうな声が聞こえるだけでも楽しかった、
これが、誘惑魔法の効力か――ディルフォードは完全に彼女の虜と化していた。
「本当に楽しい? 私とこんなことして、本当に楽しいの!?」
うっ、なんで、そんなことを聞いてくるんだ、さっきの魔性の女・メリュジーヌ、
それとは偉くかけ離れていたことにディルフォードは驚いていた――あれ、何故だろうか、意識がある?
誘惑魔法にかかってしまえば、そんなもの、なくなるはず――そう思っていたディルフォードだが、これは一体どうしたことか?
「私、ディルとこんなことまでできて、とっても嬉しい――」
「うん? まさか、エレイア!?」
エレイア! ディルフォードはむしろ、そのエレイアに夢中だった。
「ふふっ、ようやく、ディルが私を受け入れてくれた♪ ねえ、このまま何も言わずに訊いてほしいことがあるの」
訊いてほしいこと?
「私は間違いなく、あなたの知るエレイアで間違いないわ! だけど、ちょっとした問題があって――」
問題?
「うん、実はね――」
魂は二つの御魂のためか無事だった、しかし、
身体はひどく損傷しており、セイバル人の手によって、身体の大半は、
ここの研究所に安置されていたプリズム族のものが使用された。だが――
「身体の中に、変なものを埋め込まれていて、多分、そのせいだと思うんだけど、
私、連中に操られちゃっているの――」
彼女がメリュジーヌに変貌するのはそういうことらしい。
「元々、核を改造して、人造人間的なものを作る技術はあったみたいだけど、
それを生体として動かすことはできなかったみたいなのよね」
それでバリアブル・コアが採用されたのだそうだ。
傷ついた二つの御魂は再結合する、その際に彼女を操作するためのコントローラを混ぜておけば、
彼女は連中の意のままに操られてしまう、まさにそういう状態が今のエレイアには起きていることだった。
「プリズム族って誘惑魔法が得意な種族で、なんかそれを利用して男を集めているのよ。
それにこんなことだってプリズム族の身体だから……」
なんということだ、これは、偽のエレイア、メリュジーヌの誘いか?
違う、これは、エレイアで間違いない、私は信じる、エレイアを。
もう、何があってもエレイアを信じる、たとえ、彼女に騙されても――ディルフォードは完全にエレイアに夢中だった。
「ねえ、お願い、私をもう一回抱きしめて――」
エレイア――ディルフォードは、彼女の言われるがまま、再び彼女を――
「メリュジーヌ、万人斬りはどうした?」
「うるさいわね、よくわかんないのよ、記憶が飛んでんの、だからもう、なんでもいいじゃないのよ!」
「何でもよくない! やつをこちらに引き込めば、我々の勝利は確約されたも同然!
それなのに、やつはどこに行ったんだ! あいつは万人斬り、我々にとっての切り札なのだぞ!
だから、お前の持つ魔性の力で、あいつの心を縛り付け、調教させておく必要があるのだぞ!」
「うるさいわね、男の1人2人でギャーギャー言うんじゃないわよ。
男だったらこの世界にごまんといるじゃないのよ、このアタシのための従順なる下僕共がね。
それに、万人斬り様はイイ男なんだから、ちょーっとぐらい羽を伸ばさせてあげたってバチは当たらないんじゃなくって?
だから心配する必要なんてないのよ、そもそもこの世のすべての男はこの私のもの、
万人斬りだって、この私からは逃げられなくってよ――うっふふふふふふ――」
ディルフォードはエレイアに助けられ、あの研究所を後にしたのだった。