エンドレス・ロード ~プレリュード~

最後の奇跡 第1部 光を求めて 第1章 すべてを失った時

第17節 惑い

 敵の数は減ってきたような気がするが、防衛システムだけは働いており、彼らの行く手を阻んだ。
「どうしたの!?」
「爆破だ! 裏口も正面玄関も爆破されてしまった!」
 閉じ込めたつもりか。しかし、出口はほかにもある、それは――
「ねえ、ディル、こっち!」
 エレイアはディルフォードの手を引っ張り、来るように促した。
「何だ、どうしたんだ?」
「私がつかまたっとき、こっちから逃げ出したの!」
 そうか、そう言われてみれば、エレイアは墓から暴かれ、 その後はここにつかまっていたってことになるわけか、ディルフォードは直ぐに把握した。
「ほら、こっち!」
 すると、エレイアはとある部屋へとディルフォードを促し、カードキーで部屋を開けた。
「なんだ、この部屋は、ここにエレイアは囚われていたのか?」
「そうなの」
 研究室の名前は”レディ・ベーゼ研究室”と書かれていた。 部屋の中は至って普通の研究室というか、中身は何でもないような部屋だった。 まあ、薄暗いから場所があまり把握できていないというのもあるのだが。
「レディ・ベーゼ?」
 だが、そんなことはどうでもいい、とりあえずここから出る方法を考えないと、ディルフォードはそう考えた。
「みんな、あと少しだよ!」
 エレイアはその研究室にある部屋の中をさらに先へと進むと、そこにはもう一つ扉があり、彼らを促した。すると、そこには――
「あれっ、ここは――」
 そこは、とても広く、如何にも豪華でエレガントな家具や天蓋付のベッドのある洋間だった。
「あれっ、ええっと、脱出口は、どこだっけ――」
 すると、どこからともなく声が。
「よく見ろ、その部屋には普通に玄関の出入口があるではないか」
 その声の言われるままに部屋を確認すると、 左手のほうに、確かに豪華な玄関があるようだった。しかし――
「くくくっ別に罠など仕掛けてはいないが……まあ、それ以上のことは本人に聞くんだな」
 本人にって? 何の話だ? シェトランドたちは困惑していた。
 すると、玄関から、大勢の人が一気に押し寄せてきた!  こ、こいつら、あの連絡船に乗っていた連中!? なんでここへ!? シェトランドたちは驚いていた。
「流石だな、予定通り、事を運んでくれたようだな、ご苦労だった、”レディ・ベーゼ”よ!」
 レディ・ベーゼ!? エレイア、どういうことなんだ!? ディルフォードはエレイアに訊いた。
「わっ、私は、私は! あなたたちなんかに屈しない! 私のことは構わないで! ほっといて!」
「ほっといて、だと? ククッ、芝居にも磨きをかけたな、レディ・ベーゼよ。 しかし、もう、その必要もないだろう、レディ・ベーゼよ!」
「やめてっ!」
 すると、ルーイがその声に反応してか、気が付いた。
「はっ! お前は、”ヴィーナス・メリュジーヌ”!?」
 ヴィーナス・メリュジーヌ!?

 ヴィーナス・メリュジーヌって、一体――
「私は、私は――」
 戸惑っているエレイア、ルイゼシアはさらに続けた。
「ディル、気を付けて! この女、あなたのことをたぶらかし、セイバル軍に引き込むつもりよ!」
 えっ!?
「違うわ! 私は、そんなことしない! そんなことするわけないじゃない!」
「ディル、気を付けて! それがこの女の本性よ!」
「ディル、私を信じて! お願い!」
「誘いに乗ったらダメよ、ディル!」
 わっ、私は、どうしたらいいんだろうか――ディルフォードは困惑していた。
「ディル……、私を護ってくれるって言ったじゃない――」
「ダメよディル! この女に騙されないで! 全部作戦のうちよ!」
 ディルフォードは迷っていた、しかし、エレイアを見ると――
「お願いよディル、私はあなたの幼馴染のエレイアよ! いつも一緒にいてくれたじゃない!  そして、私のこと護ってくれるって約束してくれたの、忘れたの!? お願い、信じて!  私はあなたを信じているから、ディル!」
 エレイアは涙ながらに訴えてきた。

「やっぱり、あなただけ、特別カッコいいよね!」
 酒場で出会った時の彼女の笑顔――
「やった! うれしいなー!」
 話を聞いてもらえることに対して嬉しそうな彼女の笑顔――
「私はあなたと離れるなんてイヤ! もう、独りは寂しいの、だから、だから、独りにしないで――」
 孤独に耐えられず、ディルフォードと一緒にいることを必死になって訴えてくる彼女のその呼びかけ――
「嬉しい! 私の名前を間違えずに呼んでくれた! しかも、初対面なのに、呼び捨ててくれるだなんて――」
 名前を正確に呼んだ時の彼女の笑顔――
「わあ! 嬉しい! 私、ディルのお嫁さんになれるように頑張るからね!」
 エレイアの嬉しそうな笑顔といい――
「私はあなたと一緒にいたいの。たとえ、どんな目に遭っても。 私はエレイア、あなたの幼馴染みと似た女、本物とは違うかもしれないけれども、 私があなたに出会えたのは彼女のお陰、そうでなければ、 私はあなたとこんな生活を送るなんてことさえ出来なかったでしょうね。 だから、あなたの幼馴染みのエレイアの住んでいた里も知りたいし、 何より、あなたから離れたくないの! だから、お願い!」
 何が何でもディルフォードと一緒にいたいと願う彼女の必死の訴え――
「ディル、私、怖かったの! すごく、怖かったの!」
 恐怖におびえていた彼女の必死の訴え――
「やった! ディルに認めてもらえた! 私、うれしい、すごくうれしい!  ありがとう、ディル! 私も、ディルのこと愛してるわ!  かっこよくって素敵なディル! これからもずっと一緒にいてね!」
 告白した際のその時の彼女の嬉しそうな笑顔――
「ねえ、ディル、私をしっかりと抱いて♪」
 それに、彼女のぬくもり――