エンドレス・ロード ~プレリュード~

最後の奇跡 第1部 光を求めて 第1章 すべてを失った時

第11節 二つの御魂の記憶

 ディルフォードとエレイアの2人はオウルの里につくと、早速ワイズリアと話をした。
「”二つの御魂”……確かに、エレイアがそうだっていうことなら、まさにその通りと言えるか――」
 ディルフォードはそう言うと、ワイズリアは頷いた。
「”二つの御魂”なんて伝説、”神授の御魂”よりも出現率が低いって噂だからな、 それに、”神授の御魂”と違って見分けもつかねえし、正直、どうしてそう生まれてくるかもわかんねえ。 それでもだ、あのエレイアを見る限りはそう思うより他にねえ――」
 ワイズリアはそう言い切ると、態度を改めて言った。
「いやー、それにしても、エレイアもディルも、本当に無事だったんだな!  ったく、ディル! てめえ、心配かけさせやがってよお!  でも、エレイアが無事でよかったぜ、セイバルにパクられたかと思いきや、 こうして帰ってきてくれるだけでも俺は嬉しいぜ!」
 だけど、エレイアには記憶がない。ワイズリアが父親であることも――
「記憶なんてどうだっていいっつーの。 死んでいたと思っていた人間が生きていた事実に比べりゃ、そんなこと些細なことでしかねぇ」
 正論だ。確かにその通りである。
「オマケにディルとべったりで、これなら俺ぁ思い残すこともねえし、万々歳じゃねえか!」
 そう言われたエレイアは赤くなって、そのままディルフォードから離れようとしなかった。
「わ、私は、記憶はないけど、多分、ここで育ったんだなって思う。なんというか、身体が感じるの。 それに、ディルがいてくれる今が一番幸せだよ!」
 エレイアがそう言うと、ワイズリアはどこかへ行った。多分、”男泣き”のためだろう。

 ディルフォードはこの里に起きている問題をすぐに把握した、 シェトランドの民の墓が荒らされているのである、セイバル人がシェトランドの身体を利用し、研究するためだ。 酷いことに、エレイアの墓以外の躯はすべて身体から核だけが取り出され、 エレイアの墓は身体ごとなくなっていたのである。
 そんな中、エレイアは自分の墓を眺めていた。
「私のお墓――」
 エレイアは、彫られている自分の名前をみつめていた。
「なんか、思い出したことでもあるのか?」
「うん、多分だけど、私、ここに埋められていたんだよね」
 埋められていたということは間違いなくエレイアはエレイアで、やはり二つの御魂――
「きゃっ! いやあ!」
 えっ、どうしたんだ!? どういうわけか、エレイアはその場で頭を抱えていた。

 誰かと、誰かが会話をしている光景がエレイアの脳裏に浮かんだ。
「どうだ? 間違いないか?」
「ええ、本当にいたようです、”バリアブル・コア”、シェトランドの”二つの御魂”伝説は本当のようです」
「くくっ、”テラパワー・コア”についで”バリアブル・コア”までもこの手に入るとは」
「しかし、かなり扱いが難しいと思います」
「確かに、そうかもしれんな、なんせ、寄りによってこの女だからな。 ”テラパワー・コア”だけでなく”バリアブル・コア”までもが――面倒な」
「さらに、”バリアブル・コア”は無事とはいえ、身体のほうはひどく損傷しているようです。早急に手を打たなければなりません」
「それは流石に厳しいな。それなら――」

 その後、処置はされたらしく、事なきを得たはずなのだが、何やら問題は起きていたらしく。
「どうした? 何があったのだ?」
「レディ・ベーゼが言うことを聞きません」
「直ちに対処するのだ」
「いやっ! やめて、やめてぇ!」
 レディ・ベーゼと呼ばれる第3者が介入してきた、レディ・ベーゼは被験者のようである。 ということは、ここは何かの実験施設か。

 その後、対処もされたらしく、事なきを得たはずなのだが、問題は続いているようだった。
「レディ・ベーゼはダメです、言うことを聞きません。ただ――」
「ただ? 何だ?」
「ええ、実は――」
「なるほど、では、それで行こう」
「えっ、そんなんでいいのですか!?」
「問題ない、あとはこの私のほうで処理をしておく、ご苦労だったな」
 何がどうなったのだろうか。

 そして、大きな問題が発生した、それは――
「何だ? 今度は何があったのだ!?」
「そっ、それが実は、レディ・ベーゼが逃げ出しました!」
「何だと!? 場所は!?」
「それがどうやら、身体に取り付けた拘束装置一式をすべて破壊してしまったようでして、発信機も――」
「この役立たずが!」
「す、すいませ――」
 その時、別の者がやってきて、状況を聞きに来た。
「何事か」
「はっ、はい、実は、その――」
「逃げた、だと?」
「大変申し訳ございません!」
「そうか、逃げ出しおったか」
「は?」
「”バリアブル・コア”たる存在はそうはいまい。何、そのうちすぐに見つかるだろう。 だから、この件については何もしなくていい。お前たちは別の件について取り掛かれ」
「で、ですが――」
「レディ・ベーゼとしても必要なことを成さねばならんのだ。 だから、この件については私が引き継ぐ、それでいいな?」
「わ、わかりました――」
「そうとも、それでいい、それでいいのだ、ククククク――」
 なんだか、不穏な空気が漂う――