夜、2人はその場で野宿をすることになった。
昔、エレイアと一緒に野宿で過ごしたことがあり、その時もこうしてたき火を囲って、
2人で話したことがあった、ディルフォードは思い出していた。
「私、あなたの知るエレイアでいいのね?」
何故か彼女は記憶が欠落しているようだが、顔立ちも似ていて、あの魔法が使えるとなると、
ディルフォードとしては間違いなく、あのエレイアしかいないと確信した。
問題は記憶はもちろんのこと、どうして彼女の身体がプリズム族になっているのかだが、
それでも彼女は間違いなくエレイアであると思った。
「そう、ふふっ、よかった! 私、あなたに認められたのね!」
認めるというか……、記憶がないから結局はそう言うことになるのかと思うが、この際、それでもいいかとディルフォードは思った。
「たき火、温かいね!」
エレイアは顔をにっこりとさせながらそう言った。
なんだ、寒いのか、仕方のないやつだな、ディルフォードはそう思うと、エレイアに言った。
「隣、来るか?」
「うん!」
エレイアは嬉しそうに彼の隣に座り、ぴったりとくっついた。
「うん、なんていうか、こうしていると――本当に、あなたのことをずいぶん前から知っていたような気がする」
ディルフォードも彼女の温かみを感じていた。
エレイアとは家族のようなもんだ。兄と妹、そういう間柄に近いものだった。
ディルフォードには家族がほかにおらず、いつもワイズリアに世話になっていた。
ワイズリアはいつも家を留守にしていて、エレイアの面倒を見るのはいつもディルフォードだった、
幼いころはそういう感じで毎日過ごしていた。
しかし、エレイアはディルフォードのことを好いていた、それは流石の彼でもわかった。
ディルフォードがエレイアのことで驚かされたのは、傭兵として雇われていた時代の頃、
どこの国だったかまでは忘れたが、その国の傭兵としての雇用契約が満了し、オウルの里に帰ってきた時のことだった。
ディル、お帰り、と、彼にとっては見知らぬ女性が、急に抱きしめてきたのだった。ディルフォードはドキっとした。
そのリアクションに対し、エレイアは「私のこと、覚えてないなんて言わないよね」と、念を押すように訊いてきた。
そう、彼女はエレイアだった、その頃は傭兵として、各地を転々としており、4年は経っていたハズである。
その時のディルフォードと言えば、普通のヒューマノイドでいえば24歳ぐらいの年齢だが、
彼女の年齢もそれぐらいになっていて、つまり……まだ子供だったエレイアも、
大人の女性らしくなっていて、まるで見違えるようだったようだ、こ、これが、私の知るエレイア、と。
もちろん見た目は随分変わったとはいえ、彼女のディルフォードに対する思いだけは変わることがなかった。
ディルフォード自身も妹・エレイアという存在は既にいなくなっていており、彼女のことを一人のエレイアという女性として認知していた。
だが、ディルフォードとしてはあくまで友人としての間柄でというくくりでしかなかった。
そういう彼の考えを察してか、エレイアはことあるごとにディルフォードを気にするようにふるまい、
好かれるように努力していたようだった。
もちろん、彼女は魅力もあるし、何より、シェトランド人の中でも美人として有名ではあった。
だから、ディルフォードも、彼女の魅力もそうだが、いつも明るい彼女が好きになっていた。
妹・エレイアでも女性・エレイアでもいい、エレイアはエレイア、
いつも一緒にいたあのエレイア、これからもずっと一緒にいてやりたい、ディルフォードはそう思っていた。
とにかく、いろいろとあったが、長い時間をかけ、2人は一緒になることを決意したのだった。
しかし、その矢先――エクスフォス人との戦いで彼女は命を落とした。
だけど、その死んだはずの彼女が、今こうして自分の肩に寄り添い、いつの間にか眠っている、
まさか、エレイアには2度も驚かされるとは夢にも思わなかったディルフォードだった。