こうして、ディルフォードは彼女との出会いを果たし、それからと言うものの、長らく過ごすこととなった。
そうなるまでに、ほとんど時間はかからなかった、それなりの理由があったからである。
「そう言えば、名前、まだ知らないよね、私たち」
「私はディルフォードだ」
「へえ、素敵な名前ね! 私の名前はエレイアっていうの!」
エレイアだって!? ま、まさか、彼女と同じ名前なのか――ディルフォードは驚いていた。
しかし、冷静に考えてもみれば、人の名前なんて、同じ名前なんていくらでもいる。
だがしかし……顔もなんとなく似たような顔立ちをしているあたりも、なんていうか……。
ディルフォードは悩んでいた。
「エレイア、最初の元カレが亡くなったのはいつの話だ?」
ディルフォードはそう訊くと、彼女はいきなり喜んだ。
「嬉しい! 私の名前を間違えずに呼んでくれた!」
え?
「しかも、初対面なのに、呼び捨ててくれるだなんて――」
迂闊だった、確かにエレイアなんて名前、昔はよく呼び間違えてエレイアを怒らせたりしたもんだった。
そう言うこともあってか、今では間違えることなく普通に呼ぶことができる、
とはいえ、この場合はどう言うのが正解なのだろうか、ディルフォードは再び悩んでいた。
「わ、悪かった、今のは――」
流石にいきなり呼び捨てはまずいか、そう思って繕おうとしたディルフォードだったが、今更遅かった。
「いいの、私のことはそう呼んで。だから私も、あなたのことはこう呼ばせてもらうわ、”ディル”」
声も似ているし、その呼びかたも、彼の知るエレイアとしか思えなかったようだ。
そんなこともあって、彼女と暮らし始めることになった。
気がついたらルシルメアの南にあるフェルダスの港の空き家で過ごしていた。
その暮らしは少々不便なところもあったが、ディルフォードとエレイアはお互いに仲良く過ごしていた、
イールアーズあたりがこれを知ったらどう思うだろうか。
「ディル♪ ご飯できたわよ♪」
「エレイア、おはよう。おいしそうだな」
「うん! ディルが採ってきてくれたおかげだよ! やっぱりディル、流石だね!」
「エレイアがいるから私も頑張れるんだよ」
「わあ! 嬉しい! 私、ディルのお嫁さんになれるように頑張るからね!」
ディルのお嫁さん――そういえば、あのエレイアも、そんなことを言ってたっけ、ディルフォードは思い出した。
「俺はこういうオヤジだからな、あんまりあの娘には懐かれもしなかった。
だが、エレイアはお前にゃあすげぇ懐いていたからなぁ、
だから、いつでもこんなオヤジからさっさと持ってってくれればいいって思っているぜ」
それはワイズリアのセリフだった、エレイア――私は――そんなことを考えていると、
彼女は気になって話しかけてきた。
「どうかした?」
ディルフォードは我に返った。
「いや、なんでもない。せっかくだから温かいうちに食べてしまうか」
「はーい! いっただきまーす♪」
その日の夜は、ディルフォードは窓辺に立って、またオウルの里の方角のほうを向いて目を瞑り、腕を組んだままじっとしていた。
「ねえ、ディル、どうしたの……?」
しかし、ディルフォードは微動だにしなかった。しかしそれに対して、エレイアは、ディルフォードを誘うように言った。
「寂しいわ、こっちに来て、私をしっかりと抱き締めて――」
そう言われたディルフォードは、考えるのをやめ、エレイアのほうを向いた。
「そうだな、今はエレイア、お前と一緒にいるべきか」
そう言いつつ、ディルフォードは彼女の背後へと入り込み、後ろから優しくエレイアを抱きかかえた。
「おやすみ、エレイア」
「お休み、ディル♪」