エンドレス・ロード ~プレリュード~

紡がれし軌跡 第2部 Rの名を冠する者 第3章 Rとの馴れ初め

第51節 ディフェンダー

 ティレックスとシャナンはドレイク1体を見事に討伐し、さらに順調に魔物を倒していった。すると――
「また大きいのがいましたね、あれは少しばかり骨が折れそうです」
 奥に大きな魔獣が待ち構えていた。
「でも、やるしかない!」
 ティレックスは剣を構え、その魔物に突進した!
「はい、行きましょう! ティレックスさん!」
 シャナンもそれに続いた。

 ティレックスのファースト・アタックは決まり、魔獣の注意はティレックスに向けられた。 しかし、魔獣の力は強く、受け身になると一転してティレックスは魔獣の前足の一撃だけで体勢を崩され、不利になっていく。
「くっそ……なんの、これしき――」
「ティレックスさん! いけません、こうなれば――」
 シャナンはとっさに機転を利かせ、ティレックスの前に立つと、見事な剣裁きで魔獣をいなしていた。 すると魔獣の注意はシャナンに向けられ、魔獣の猛攻は徹底的にシャナンを狙い続けていた。
「シャナンさん!」
 その様を見たティレックス、シャナンが危ない! と考えるのは早計だった。
「凄い、あの魔物の攻撃を全部交わし切っているのか――」
 伊達に”蒼眼のシャナン”と呼ばれたほどの存在ではない、そこは流石は伝説の英雄、ティレックスとは格がダンチであった。
「おじ様のディフェンダー・ロールは回避盾、敵の攻撃全部見切るの得意」
 と、後ろから巫女さんのような恰好をした幼い女の子が現れるや否や、そう言っていた。 そんな見た目にティレックスも何気に気になっている彼女がカスミだった。
「回避盾――シャナンさんの戦い方はそういう能力だったのか」
「それだけじゃない。おじ様、魔法も使う。召喚魔法も得意。とにかく強い」
 言われてみれば見た目は魔導士とみてもいいような風貌の持ち主、 その見た目とは裏腹に、剣術の腕前はとにかく驚愕の一言であった、そこは流石は”蒼眼のシャナン”である。
「ティレックス、自分に防御魔法を張る。防御盾としての能力高まる」
 と、カスミは言うがティレックスは――
「俺はそういった魔法は使えないんだ、まだ練習中で実用できないんだ――」
 そう言うと、カスミはティレックスが持っている剣を指さして言った。
「その剣から防御魔法の力を感じる。多分防御魔法の力で強化されてる。うまく使う」
 えっ、この剣に!? ティレックスは驚いた――そうか、リリアリスはティレックスが使うことを想定して委ねたというわけか――
 そういうことであればさっそくティレックスは剣に秘められている魔法を利用し、自らに魔法をかけた!
「よし! これならあの魔物の攻撃にも耐えられるぞ!」
「うまく使う。そのうち自然と自分の力で使えるようになる」

 ティレックスは再び魔獣に切り込み、注意を引き付けた。
「さあ! 来い!」
 魔獣の前足による攻撃! ティレックスは今度こそ前足の攻撃を受け流した!
「ティレックスさん! やりますね、流石です!」
 ティレックスはテレていた。そして、その後ろからカスミが現れた。
「ディフェンダー・ロールばっか」
 ティレックスの防御盾にシャナンの回避盾、 継戦力は強いが決定打に関しては今一つのため長期戦になりがち、そんな感じのメンバーであった。
「確かにそうですね、これでは長期戦は免れませんか。 では、ご助力願えますか、カスミさん!」
「おじ様のためならなんなりと」
 決定打が強みのアタッカー・ロールな女の子が戦闘に参加した!

 魔獣の目前には2枚のディフェンダー・ロールがおり、とにかく魔獣はその2人に翻弄されていた。 その背後でカスミは曇りなき眼でその戦況を見定めると、魔獣への攻撃導線を瞬時に判断し、 その軌道に従って瞬時に移動、敵を”風精かまいたち”と呼ばれる刀で的確に切り上げ1回、 さらに流れるような剣裁きで4回切り裂いた。
 それによって魔獣はカスミに注意を向けるが、カスミはそのまま2枚の引き付け役の後ろへと逃亡、 まさにヒット・アンド・アウェイ戦法である。
「お前の相手はこっちだ!」
 ティレックスはカスミの前に立ちはだかった!
「そうですよ! 小さな女の子を狙うのはこの私が許しません!」
 シャナンは魔獣の側面から激しい突きの一撃! さらにそこへティレックスの月読式破壊魔剣術の簡易版による遠隔攻撃で追撃!  しかし魔物はなかなかタフで、この布陣でも結構時間がかかりそうであった。
「しぶとい。おじ様、転ばせてみる」
「なるほど、それは名案ですね」
 転ばせる!? こんな大きな魔物を!? ティレックスは困惑していた。
「小さいのでも割と有効でしたから大きくてもいけるかもしれません。 では、私は今度、アタッカーになりましょう。 その代わりティレックスさん、ディフェンダーを一手に引き受けてもらってよろしいですか?」