エンドレス・ロード ~プレリュード~

紡がれし軌跡 第2部 Rの名を冠する者 第3章 Rとの馴れ初め

第35節 メイド・イン・R

 2人を乗せた船はそのままアルディアスの南岸へとやってきた。 そこにはガレア軍の輸送用トラックが待ち構えていた。
 リリアリスはあの恰好の上からローブを羽織っており、そのまま上陸していた。
「おおっ、予定通りやってくれましたな! これでしばらくは安泰です!」
 アルディアスの水産業界のお偉いさんも一緒にいて喜んでいた。
「意外にもあっさりと食いついたよ。予定通り”クイーン”はクラウディアスに運んであげて。 残り2匹はそれぞれガレアとアルディアスで分けて食べてちょうだい。」
 リリアリスはそう話すと水産業界のお偉いさんはなんだか嬉しそうに答えた。
「クラウディアスですね! 手配済みですのでさっそく運びましょう!」
 すると、ガレア兵のシレスが部下に水揚げするように命じていた。 しかし、それには1時間近い時間を要した――とてつもない大きさゆえに、全員驚いていたのである。 その大きさはトラック電車一両分はくだらない大きさ――まさに一戦交えるバケモノクラスのガタイだったのだ、世の中にこんなデカイ魚がいるのか……。
「あれ、本当に1人で仕留めたんだよな――」
 この仕留めるというのは釣り上げるという意味ではなく、魔物を倒すという意味である。 もはや漁師や釣り師ではなく、バトラーというカテゴリの所業である。
「海の中で直接攻撃を繰り出せられる人はそうそういないからね。」
 そういうことでなくて。 でも、確かに海の中で戦闘態勢をとれるというのは結構な能力だと思う。 リリアリスは海の中でも力を発揮できる人だということはわかった。
 そうだったのか、今回のはドレッドノート・イエローテール・クイーンを釣り上げるというハンターの仕事だったようだ。 だったら初めからそういえばいいのにティレックスは誤解をしていた、単に鰤が食べたいあまりに釣りに来ただけじゃないかと。 しかし、それでも本人はまったく気にしていないようだ。
 1時間かけて鰤を水揚げしている最中にトキアが運転するトラックがやってきた。 助手席にいたフレシアとトラックの荷台に乗っていたユーシェリアが積み荷を覆っていたブルーシートを外していた。 積み荷はやたらと大きなもののようだが、一体何だろう?
 鰤の水揚げ作業が終わると、今度は別のトラックから重機が動き出し、 その積み荷を船の上に載せようとしていた。
「えっ、この船に載せるんですか!?」
 ティレックスは驚いているとリリアリスは答えた。
「何も驚くことはないと思うんだけど、そもそもこの船に載っていたのを戻すだけなんだし。」
 マジですか……。でも、載せたら少々狭くならないものだろうか……? ティレックスは考えているとリリアリスは言った。
「鰤運ぶのに邪魔かと思って外したのよ。 まあ、鰤大きすぎて船に乗せらんなかったから、外す必要もなかったみたいだけどね。」
 リリアリスはそう言いつつは船体の上のカバーをいくつか外すと、 積み荷を置く作業をしているガレアの帝国兵にその上へ積み荷を置くように指示を出していた。 カバーを取り外すと何やらへこみがあり、ちょうどその積み荷が置けるようになっていた。
 その作業はわずか5分、鰤を降ろすよりも早く終わっていた。
「おっけー、これで完璧ね。」
 リリアリスは少し得意げだった。
「お姉様、気を付けてくださいね!」
 ユーシェリアは再び元気よくそう言った。
「お姉様! ティレックスのことをよろしくお願いします!」
 トキアはそう言って見送っていた。
「ティレックスさんも頑張ってくださいね!」
 フレシアにも見送ってもらった。
「みんなも元気で!」
 このまま旅に出るのだろうなと思ったティレックス、覚悟を決めてみんなにそう言った。
「みんなもあんまり無茶しないでね。んじゃシェミア、あとはよろしくね。」
「はいっ! リリアリスさんもお気をつけて!」
 リリアリスが言うとシェミアも元気よく応えた。
「ようし、それじゃあ改めてはいよー、シルバー!」
 すべての準備が整ったみたいだ。リリアリスの一声でティレックスとリリアリスは再び船で発った。 でも、なんでその掛け声?

「どうよ、お風呂一緒に入る?」
 いっ、一緒って! なんで一緒! てか、風呂!? ティレックスは焦りつつも疑問を抱いていた。
「ユニットの動力を一旦切った関係でエネルギーを新しく生成しなおさないと使えないのよ。 ただ、今のところ動力を切る前の1回分ぐらいのエネルギーが残っているからギリギリお風呂に入れそうな感じだけど、 そのあとは20時間ぐらいエネルギーチャージしないと使えないのよ。」
 そもそもお風呂ってどういうことかと思ったら、さっき取り付けた積み荷もとい”ユニット”は”バス・ユニット”というもので、 つまりはお風呂の設備なんだという。
 20時間風呂無し――その間の予定を聞かされると、どうやら結構時間がかかる船旅らしい。 今度は西に向かっているそうだが現状の西の海の状態はあまりよくないらしく、到着も少し遅れそうである。
「いいから、女の人と一緒にお風呂入れるだなんて夢のようじゃあないのよ? 素直に喜んどきなさいよ♪」
 ってか、あんたはなんでそれでノリノリなんだよ、ティレックスの悩みは尽きない。