しかし次の施設は手薄らしく、楽勝そうだ。手薄というより施設の規模が小さいのだろう、
「なんだいあの施設は? さっきのに比べたら天地の差じゃないか?」
イリアがそう言うとレンティスは説明した。
「南側にはああいった小規模なものが点在している、今度こそ攻めようと思えばできなくはない相談だと思うが――」
すると、バフィンスが前に出た。
「そうかよ! なら面倒もねえ! この俺が片付けてくらあ!」
マジかよ。
「無理すんじゃないよ、あんた一人でどうやって片付ける気さね?」
「いいから黙ってみてな!」
バフィンスは突っ込んでいった――おいおい、正気か?
バフィンスが前に出ると、敵は銃を構えた。
「へっ! そんなものはこの俺には通用しねえ!」
バフィンスは闘気を燃やした、あれは?
「逝けや!」
その闘気を拳でぶっ飛ばし、敵一人を弾き飛ばした。
「くそっ! 喰らえ!」
敵はそういいながら慌てて反撃した。しかし、バフィンスの姿は既にそこにおらず。
「俺はここいいるぜ!」
バフィンスはいつの間にか敵の背後に回り込んでいた。
「面倒なやつらだぜ! 一度にぶっ飛ばしてやる!」
バフィンスはものすごく力をため、闘気を燃やした。何が発動するのだろうか、みんなで息をのんだがしかし――
「オラっ! このっ! 喰らえこのっ!」
敵の攻撃をなんとかかわしつつ、一人ずつ殴る蹴るでコテンパンにのしていた。
「えっと、なんか――すごい大技でも飛び出すのかと期待していたのですけど」
フレシアは率直な感想を述べた。ティレックスや他のメンツも同意見だが――
「あいつは自分の拳で直接叩かないと気が済まない性分でな……まったく、単純というかなんというか――」
レンティスは呆れながらその光景を眺めていた。シンプル脳だ……、シンプル脳すぎる……。
「どうだっ! もんくあるかっ!」
全部敵をぶっ飛ばした後、バフィンスはそう叫んだ。いえ、もんくありません。
「まったく――昔の人は良く言ったもんだ、バカにつける薬はないってね……まさにあいつのことだよ」
イリアは呆れていた。
調子に乗っているバフィンス。
「次も案外簡単に行けるんじゃねーか? この俺が全部片付けてやるぜ!」
しかし……
「次は南側で最大の拠点と言われている……俺たちでも未だに正確な数が把握できていないほどにな。
それでも行けるというのなら止めはしないが――」
レンティスはバフィンスにそう言った。
「や、ウソだウソ、みんなで仲良くやろうや……」
バフィンスは力無げに言った。すると、その南側最大の拠点の全容が。
「ふーん、あれで南側最大なのか。そういう割にはあまり大きくないな」
と、イリアが言った。それもそのハズ――
「そう簡単に侵攻させないように俺たちが頑張っているからね――」
ティレックスはそう言った。
確かに規模は大きいと言えば大きいのだがイリアの言うように、
あからさまに”規模が大きい”と言われて実際に見てみると拍子抜けしてしまうというような、こじんまりとした規模である。
「なるほどね、帝国もまだルダトーラ軍を脅威と思っているからあまり大きなことができないということか」
ただ、今やルダトーラはほぼ劣勢に置かれている、さらに大きな規模の拠点が作られるのも時間の問題――
今回の山脈の上の拠点がそのうちの一つだ。
しかし建物自体はそれほど大きくなかったのだけれどもやたらと警戒しているようだ。というよりも――
「なんか物々しい雰囲気だな――」
ラークスは気が付いた、何だか知らないけど帝国の連中は訓練なのだろうか、実戦さながらの活動をしていた。
「違うね、あれは訓練じゃあないな。むしろ確実に一戦交えている状態だな――」
今までずっと何も言わずに黙っていたカイトが突然そう言うと、みんなに注意を促していた。
とにかく、具体的に何が発生しているのか知る必要があるな、これは彼らにとって有益なことなのか、それとも――
入り口付近までやってくると都合よくあった岩の影に隠れて様子を見ている一行、
なんだろう――敵兵はどうも建物の中に対して警戒をしているようだった。
「問題は中で起こっているのか?」
レンティスはそう言った、どうもそうらしい。
「なあ……いきなりドカーンとか言わないだろうな?」
バフィンスが言った、そんなわけは――
「なくはないと思うけどね」
と、イリア……あり得るんかい! バフィンスと違ってなんか信じてしまうのが不思議だ。
ところがその時だった、ものすごく強烈な突風がこちらへ吹いてきた!
「ぶっ! 何この風!」
トキアが埃を舞った風を吸い込んでしまったらしく、そのまま咳込んでいた。
「ぺっ! ぺっ! なんなんだ、いきなり!」
それにファイザとチェリ、
「何これ最悪! どーなってんのよ!」
あのシエーナもが砂埃をかぶっていて、砂を払い落としていた。
「この風、とても強い風ですね――自然発生のようにも思えますが、恐らく風魔法か何かでしょう」
確かにそんな気がする――なんていうか、建物の入り口から吹いてきた気が――
「あれを見ろ……」
何気に風の被害にもびくともしなかったレンティスは、近くにいたティレックスの肩を押さえて話した。
「あっ、あれは――」
建物の外で身構えていた敵兵がすべて吹き飛ばされていた。
「いっ、一体何が――」
すると、今度は後ろからエメラが慌てたような声で訴えてきた。その方向を向くとバフィンスが――
「ぬうっ……くくくっ……」
吹き飛ばされてひっくり返っていた。
「ちょっと! 一体何なんだよ! ここまでの使い手が中にいるというのか!?」
イリアが声を荒げた。
「わからない。しかし、おかげで警備が手薄になっていることは確かなようだ」
レンティスは冷静に見ていた。言われてみればそんな気もするな……
そういったことで彼らは事の真相を探るべく、建物の中へと侵入していくことにした。
一行が入ると、シエーナとカイトはこそこそと話をしていた。
「中に入るのですね」
「ああ、どうやらそのようだよ。とにかく行きますか」
「ちょっと待って。今の風――どう思います?」
「どう思うって? そりゃあ――多分、そういうことでしょ?」
「やっぱりそうですよね、そもそも見えなかったことからも――ということは、やっぱり――」
「ああ、間違いないね、そういうことになるね。
見えないどころかこの自然発生型のような種類の仕業自体がほぼそうだと言っているようなもんだ、確実だろう」
「それなら、久しぶりに大暴れできそうですね」
「姉さまが暴れると手を付けられないんだから気を付けてよね」
「そんなことありませんよ。第一、大暴れしたら手が付けられないのは、私のほうではありませんよ?」
「いやいや、そんなこと言ったら――もう既に大暴れしているから手遅れだと思うけどね」
「そういえばそうでした、それでは仕方がありませんね――」
そう話し合いながらついてきた。
なんなんだこの姉弟はと言ってもいつものことなので、今更気にしないのが彼らの常識である。