ティレックスたちはその後、ベングルの指示通りにとある会議室へと集まった。
そのうちあの女子3人も入ってきた、とても仲がよさそうだった。
どうやら自分の正体についてうまく言えたのだろう。
しばらくすると、さらにもう1チームのメンツが入場してきた。
その最後に入ってきたのが――
「やあ! もしかしてティレックス君じゃあないか! キミも選ばれたのか! 奇遇だね! 私も選ばれたんだよ!」
と、カイトが言った。何て白々しい――お前、昨日話しただろうが――ティレックスは呆れていた。だが――
「えっ!? もう1チームってカイトのチームだったのか! そうか! それは心強いな!」
と、レイガスが言った――そういえば他のメンバーは知らないんだっけ――
「実はそうなんだよ! いやぁー、こんな心強いチームと共闘できるだなんて私らはなんて運がいいんだ! よろしく頼むね!」
ティレックスはこれ見よがしにと底意地が悪そうにふるまっているカイトのその態度に対して腹が立っていた。
そしてレンティスが入ってきたが、なんだか慌ただしいような状態らしく、
会議室の扉を開けるや否や、いきなり招集をかけていた。
「すまないがこんなところで話している暇はなくなった。早速現地で作戦会議だ」
現地とは先日の廃墟だった。
場所はルダトーラの東、そこのとある廃屋に彼らは集まった。
その廃屋にはきちんとした内装の作戦司令室が隠されていた。
「さて、まずは自己紹介からだな」
レンティスの口からそんな言葉が出るとは。
自己紹介って……現地についてから意外と悠長なんだなと思った。
しかし、それが実に重要だったことを彼らは思い知らされた。
それはレンティスからの自己紹介の内容からだった。
「知っているかもしれないが俺はレンティス、
”剛鬼のレンティス”と呼ばれたこともある通り、敵の矢面に立って接近戦を繰り出すのが得意だ」
そうか、自分で得意な戦法やポジションを申告するのか。
それもそうだ、みんなそれぞれを詳しく認識しているわけでないからな。
書類だけで判断したって、そんなことはあまり印象に残らない、
実際にその人を見て、その人の口や行動から判断しなくては。
とはいえ、レンティスぐらいになると流石に背中に背負っている大きな剣で正面の敵を一度に破壊するといった風に、
誰でも見た目だけでわかるような気もするが。
「じゃあ、次は俺。名前はティレックス、俺も接近戦担当で、見てのとおり敵の矢面に立って戦う重装兵タイプだ」
例の技は危ないので、今回の紹介では伏せておくことにした。
「私はトキア。魔法も接近戦もこなせるよ!
……まあ、矢面に立って戦うってほどのナリじゃないから――ミドルレンジからのヒット・アンド・アウェイってところかな?」
「カイト。彼女に同じ。でも防御フィールド展開する術もあるから無理に退避する必要皆無」
適当なやつだな。
「私はディアナリス! 私も一緒だよ! 攻撃は全部よけちゃうからね!」
便乗者2人目。攻撃は全部よけちゃうって――ティレックスは想像しがたかった。
「俺はラークス! 俺の前は走らせねぇぜ!」
わかりやすい。
「そうなのか! 奇遇だな! 俺はファイザ! 俺もスピードで勝負だ!」
ラークスに似たやつがもう一人。
「ワタシはチェリ! 敵を正面からばっこんばっこんだよ!」
彼女は格闘タイプのようだ。
「私はフレシアです! 聖騎士に恥じぬ鉄壁の守りで皆さんをお助けします!」
彼女はティレックスと共に敵の矢面に立って戦ってきたのだ。
「エメア、です。私もみなさんのことをサポートします」
こちらの方は後方支援といったところか。
「俺はレイガスだ。まあ――何でも屋ということで、不足している箇所があったら何でも言ってくれ」
レイガスは汎用戦士、得意と言えるものは特にないがなんでもそつなくこなせるのが強みだ。
「うん? あれ? カイト、シエーナさんが来るって言っていたんじゃあ?」
ティレックスは気になって言った。
「ああ、うん、もうじきにくるよ」
すると、
「遅くなってすみません、敵の動向を探っていましたもので。えっと――私はシエーナ、カイトと一緒です」
さすがは姉弟、互いに何をしていたかは把握済みってわけだ。
「ところで敵の動向って?」
レイガスは訊ねた。
「ああ、次の作戦のターゲットとなっている拠点についての動向だ。早速話をしようか――」
と、レンティス。敵の拠点を落とすとは本格的な作戦である。
いきなり実戦起用されてもうスタメンとして動くことになるなんて――なんか自分は既にすごい立場にいるんだとティレックスらは思った、カイトを除いて。
シエーナが話を始めた。
「それでは私から。ここからさらに東へ行ったところに敵の拠点があります」
そうなのか!? それは流石にみんなが驚いた、当然レンティスとカイトを除いて。
「とある偵察部隊がその存在を確認し、敵にやられてしまってはいるのですが、
生き残りがこのことを伝えてくださったものですからこの作戦が実現したのですよ」
生き残りか、そいつはまさに英雄だな。
「ちなみにその生き残りって?」
ユーシェリアが訊いた。
「ロッカクさんという人ですね――」
英雄といったけど撤回。
こいつは英雄と呼ぶには程遠いルックスだし、あいつのバケモノじみた体力なら絶対に生き残るに決まっている、ティレックスはそう思った。
というのも、ティレックスはロッカクとは知り合いだったのだ。
こいつにまつわる英雄譚ならいくらかあるが、英雄面って感じではないし、英雄張りの活躍をしているにも関わらず、そこまで目立つわけでもなし。
ティレックスも知り合ってからそんなに時間が経っているわけではないが、詳しい話はまた今度。