カノン砲から次々と魔法弾がはなたれては敵を何度もけん制し、そうこうしているうちに船は接岸した。
すると、船から見慣れない人たちが上陸してきた。
「さてと、任務開始と行きますか。
衛生兵、対象の救助を! それから救助を行っている間、戦闘兵は防御を固めろ!」
「承知いたしました!」
なんか偉そうな人が他の兵隊に対して指示を出しているようだ。
そして、その偉そうな人と衛生兵が港の建物へとやってきた。一行は建物の出入り口へとすぐさま赴き、身構えた。
「お前はまさか――」
レンティスは身構えながらその偉そうな人に話しかけたのだが、その人物に見覚えがあったようだ。
「私たちはあなた方を救助しに来たのですよ、レンティス殿」
その相手もレンティスに見覚えがあったようだ。それにしても救助?
レンティス以外はその人物に心当たりがなく、どこの誰だかわからないのに救助とか怪しい感じだった。
すると、その人の声に反応した人がいた、リスティーンだ。
「えっ、まさかおじ様なわけ?」
おじ様?
「おや、まさかあなたは――」
おじ様と呼ばれた人はその場を振り切り、建物の奥にいたリスティーンを発見し話をした。
「なんと、脚を痛められたのですか、それはとんだ災難でしたね――」
「そうよ。痛いのなんのってたまったもんじゃあないわ。
だから早く抱っこして……お姫様抱っこで♪」
リスティーンは最初は愚痴っぽく言ったが、
抱っこをせがんだあたりから嬉々として楽しそうにそう言った。
「わ、わかりました、いいでしょう――」
おじ様と呼ばれた人は少し困った様子でそういいつつ、リスティーンをお姫様抱っこした。
「やった★ イケメンのおじ様にお姫様抱っこしてもらえるだなんて超嬉しー♪
王子様♪ 私をお城に連れてって♪」
リスティーンは嬉しそうにそう言うと、おじ様は困惑していた。
「さ……さああなた方も、早くここから離れましょう!」
おじ様は全員にそう言った。
「説明は後。大丈夫よ、この人たちは敵じゃあないわ、私が保障する!」
リスティーンはそう言った、いずれにせよこれ以上はどうにもならず、
もはや誰しもが抵抗できるほどの能力を残していないため、素直に従うことにした。
「敵来る。早くお姉ちゃんたち船収容する」
さらに船からは兵隊に交じって小さな子供が出てきた。なんでこんな小さな子供が?
おじ様に話しかけた声の主の姿は明らかに小さな女の子、一行は目を丸くした。
「あっ、はい――そうですね。少しだけ時間を稼いできてもらえますか?」
「言われなくてもそのつもり」
すると、その女の子はいきなり凄まじいスピードで走りだし、敵へと突っ込んだ。
「待って! ほら、これ! 使って!」
リスティーンは自分が腰に携えていた剣をその女の子に向かって投げつけた。
「……お姉ちゃんの分まで頑張る。そして私も後でおじ様からお姫様抱っこしてもらう」
女の子は剣をキャッチすると、さらに勢いを増してダッシュした。
だが、シャナンは最後に彼女が言っていたことに対してさらに困惑していた。
「さ、さあ! あなた方は早く中へ!」
一行はその人に促されるままに船へと乗船した。
「トキア、大丈夫!?」
先ほどぐったりと倒れたトキアが気が付いた。
「えっ、何がどうなったの?」
「助けが来たのよ! だからトキアも早く行こ!」
回りは見知らぬ兵隊たち、だけど、目の前にいる友人のユーシェリアの言葉を信じてトキアは立ち上がると、
ユーシェリアが促すままに船へと向かっていった。
「ねえ、あの女の子は大丈夫なの!?」
クレンスは衛生兵に向かってそう言っていた。
「ああ、あの人なら大丈夫ですよ、用が済めばすぐにでも戻ってきますから」
すると、遠目にあった戦車の車体がいきなり崩れ去った!
「何だ!?」
アーシェリスは驚いた。
「ああ、彼女の仕業ですね。どうやら戦車隊を破壊しに行ったようです」
「破壊って、あの戦車をどうやって?」
「決まっているじゃない、あの娘のやり方は一つ――自分の剣と私がさっき委ねた剣、そして自分自身の業ね。」
リスティーンは当たり前のようにそう言った、そんなことって――
「ねえ、あの娘……剣だけで全部斬り飛ばしているよ――」
クレンスが驚きながらそう言うと、2つ目の戦車がまるで刺身のごとくバラバラに切り裂かれていた。
「よし、総員退避! 彼女が最後の戦車を破壊したら出発するぞ!」
あまりにことは順調に運びすぎているため、一行はなんとなく不安だった。
予定通り、あの幼げな女の子が最後の戦車の破壊に成功すると、
彼女は敵をかく乱させながら白船へと戻ってきた。
さらに、追手が来ないように戦闘兵は射撃で彼女の退路の跡を封じていた。
そして船は無事に出航し、彼らはリベルニアを脱出したのであった。