ラクシスとディアナリスも一向に加わった。
その後、リスティーンは先陣を切って施設の中を縦横無尽に駆け回ると、施設内の敵をあらかた始末していった。
ほかもそれに続いて進んでいく。
「あの人、殺しがニガテなんじゃなかったっけ? 片っ端から殺戮しているのは……?」
「それは――この際、捨て置こう……」
アーシェリスの疑問はもっともだけれどもバディファの言う通り、とりあえず従っておくことにしよう。
一応、混戦具合をなるべく避けるべくして進んだ結果――
「さーてと、道に迷った挙句、屋上に来てしまったわね。
これじゃあプロジェクトどころか、ただのちょっとしたミステイクじゃないのよ――」
リスティーンは迷ったようだ。しかもここは恐らく建物の12階相当、彼女はどうする気なのだろうか。
「まあいいわ、考えていてもしゃあないしね。とりあえず、これを使って脱出しましょう。」
リスティーンはロープを取り出し、ちょうどいい引っかかりを見つけると、そこに括り付けた。
「定員2名様までってところかな。そういうわけで……女の子から先ね。」
「そんな! このロープで降りる気ですか!?」
バディファは訊いた、確かに不安そのものである、12階相当の高さだというのに――
「この際、贅沢言わない! さっさと降りる! はい!」
すると、バディファがあわてていた。
「待った! それなら私が先に降ります! 降りた先が敵陣のど真ん中では元も子もありませんから!」
バディファはロープを使って軽快に降りて行き、下で敵の襲撃に備えていた。
「ひゅ~! 早いね! 流石は年長者ね。あ……ごめん、レンティス――」
「確かに私のほうが年上と思うが気にしなくていい、私はあそこまで早く降りることはできないからな。
最後までここに残るさ」
というと、リスティーンは即拒否した。
「ダメ。最後まで残るのはこの私、この計画を練ったのは私なんだから責任者が最後に決まっているでしょ?」
すると、大勢の敵が屋上へと昇ってきていた。
「やっぱり来たね、一戦交えるかいな。」
一行は剣を引き抜いた。
「私も残ります!」
ディアナリスは構えた。しかし――
「ダメ。特にディアナリスは先に降りて。歴戦の勇士って言っても手負いの戦士一人じゃあいろいろとキツイでしょ?」
するとディアナリスは少しだけ考え、剣を片付けると頷きつつ、ロープのほうへと向かった。
「ほら! お姉様の指示だからディアナリスが先に行って!」
「そうよ! ディアナリス! お姉様の言う通りにしよう!」
「そうだよ! さあ早く! 女子組は私が最後に行くから!」
クレンス、ユーシィ、トキアはそれぞれそう言った、女性陣の団結力強っ!
なんとか持ちこたえつつ、女子組は最後、トキアが最後の魔法を放った後にロープで降りることにした。
「うわーっ! 怖いなこれ――」
トキアはビビっていた。
「がんばれー! トキアー!」
「トキアちゃーん! 頑張ってー!」
下界のディアナリスとクレンスからトキアへの声援が聞こえる。
それに応えるかのようにトキアは意を決して降り始めた。
「あと何人?」
リスティーンがしきりに降りた人数を気にしていた。
「女性陣でいえばあとはあんただけだ。最後まで残るのだろう?」
レンティスはそう返した。
「うん、もちろん。じゃあ、次は野郎から順次降りて。」
「そうだな、なら次は――」
レンティスはティレックスの肩をたたいた。
「えっ、俺!?」
「下の守りを考えるのなら次に行くのはお前が適任だろう。いいな?」
「わ、わかった……」
ティレックスは剣を取り下げ、定員2名という通り、
トキアの前に降りていったユーシィが着地したのを確認すると、ロープで下へと降りて行った。
しかし、それからだった。
「何だ!?」
アーシェリスは妙な地響きを感じた。
「いや、これは――ものすごい数が押し寄せてくる!」
兵隊が一挙に屋上へと押し寄せてきた!
「これ、きっついなー。いったいどっから湧いて出てくんのよ――」
「まったくだ、これではキリがない」
リスティーンとレンティスは話をしていた。
「やれやれ、痛い目見ないとわからないみたいねぇ……」
「そのようだな」
リスティーンとレンティスは改めて剣を構え、敵に立ち向かっていった。
下界のほうも敵がちらほらといたようだが、こちらはある程度終結しつつあった。
しかし、それよりも屋上のほうの敵の数が異様に多い。屋上の面積に異様な密度の敵の数だった。
「残りは!?」
「後はそこのエクスフォスだけだ」
つまり、リスティーンとレンティス、それからアーシェリスだけである。
アーシェリスは指示通り、先に降りることになった。ところが――
「レンティス! 危ない!」
リスティーンはレンティスを吹っ飛ばした!
「くっ、俺たちを生かして返すつもりはないということだな――」
ロケットバズーカで狙ってきたのだった。するとアーシェリスは大変なことに気が付いた。
「ちょっと! お二人さん! 今のバズーカ、ロープの引っ掛かりに被弾したんですけど!」
リスティーンはすぐさま後ろを振り向いて確認した。
「ついてないわねぇ、あの調子じゃあ運が良ければ2人までというところか……私の分がないな――」
そして再び敵のほうへと向き直り、応戦していた。
「そうか、ならば話は簡単だ! お前が降りろ! 残るのはこの私だ! お前は生き残り、あいつらを助けてやってほしい!」
しかし――
「……いや、実はこの場に来てちょっと試したいことがあるんだけど――だから先に降りてくんないかな?」
「何をするつもりだ!?」
「うん、自分でもわかんないのよね。」
アーシェリスが着地すると、レンティスが次に急いで降りてきた。しかし――
「ああっ、レンティス!」
その途中でロープが引きちぎれ、レンティスは4階ぐらいの高さから落ちた、うまく着地できたようだが――
「大丈夫ですか!?」
「ああ、なんとか間に合った、大丈夫だが――」
問題はリスティーンだ、あの人どうする気だろうか――
下界の敵は数が少なく、残党はまだいるものの、制圧は時間の問題だった。しかし、あの人どうする気だろうか。
「彼女は必ず来るって言っていた、あと2~3分かけて気持ちの整理をつけるから待ってほしいと言っていた」
はぁ? 気持ちの整理って何だ?
「まさかお姉様、あそこから飛び降りる気じゃあ――」
ええっ? 言ったって、あそこから飛び降りるにはちょっと高すぎやしないか!?
「無謀ですね、冗談でしょう?」
バディファはそう言った。
しかし、その時――
「なあ、あれ……屋上から何か飛び出してきたんだけど――」
屋上から何やら落下物が。だがそれは、明らかに人の姿を成している――
「えっ!? あれってまさか――」
ラクシスは息をのんだ、そう――その落下物はまさかのリスティーンである。そして――
「クラーッシュ!」
着地と同時にものすごい衝撃波を発生し、周囲にいた残党を一度に吹き飛ばした。
「お姉様!」
女性陣はすぐさま彼女に駆け寄った。あの女――マジでやりやがったな……。
「お姉様! 大丈夫!?」
クレンスが心配そうに見つめていた。
「うん、何とか無事。心配かけてごめんね、それより――」
屋上の敵はこちらを狙っていた。
「しつっこいわね――面倒なことにならないうちにさっさと退散しましょ――」
再びリスティーンの先導により、今度は軍の港へと侵入した。
ところが彼女の歩き方、あからさまにおかしい。
左足を非常に痛がっていて、その場でうずくまってしまった。
「おい、まさか――」
レンティスは訊いた。
「痛っ――残念ながらそのまさかね、うまく降りれたけど着地には失敗しちゃったみたい。」
着地失敗は間違いなさそうだけれども、
あの高さから飛び降りて生きていることを着地失敗と言っていいのかは判断に迷うところである。
それはさておき、そんな余裕なことを言っている場合でもなかった。
「リスティーン! ここまで来て諦める気か!」
弱気な表情を見せるリスティーンに対してレンティスが激励した。
「ううん、そういうのじゃなくて――予定より遅いなと思って……」
遅いって何だ? その疑問はすぐに解けた、一行が乗る予定の船が港になかったのだ!
「くそっ、小型のボートならあるけれども、これじゃあ逃げきれない!」
ラークスが叫んでいた。
「おい! 敵が来たぞ!」
今度はラクシスが叫んでいた、まさに万事休すである。