エンドレス・ロード ~プレリュード~

エクスフォス・ストーリー 第2部 追い求める者 第4章 敵地潜入

第44節 異変

 ティレックスは貼り付けにされた。
「ぐっ、また始まるのか――」
「へへへ、そうだぜ。せいぜいいい夢でもみるんだな!」
 兵隊は引き下がり、部屋を出ていった。だが、その入れ違いに入ったのは――
「ユーシィ?! 一体、何がどうなっているんだ!」
 ユーシェリアは鞭を構え、ティレックスに向かっていった。そして――
「ユーシィ、一体何が始まるんだ?」
 それに対してユーシェリアは口を開いた。
「いいからティレックス♪ この私のムチに黙って打たれなさぁい♪ うふふふふっ――」
 ど、どういうことだ!?
「ユーシィ! 一体何がどうしたって言うんだ!?」
 しかし、ユーシェリアの様子が明らかにおかしい……。
「何って見ればわかんでしょ?  これから私がアンタをこの世で一番幸せな生き物にしてあげるって言ってんのよ♪  楽しみでしょう? うふふふふふっ――」
 なっ、なんだって……!? ティレックスはむしろ恐怖していた。

「ディ、ディアナリス、さん……?」
 ラクシスはビビっていた。
「うふふっ、私の名前をちゃんと憶えていてくれたみたいで嬉しいわねぇ……」
 ディアナリスは鞭を構え、なんだか妖艶な空気を醸し出していた。
「ティレックスの妹さん……ですよね……?」
「うふふっ、そうよ? もしかして……この私に興味がおありなのかしら?」
 どっ、どうしてそんな話に!? ラクシスはさらにビビっていた。
「それはそうでしょう?  出会って間もないのに私のことをここまで把握しているのですもの、そう考えるしかなくって?」
 と言われても――そもそもこの状況はどういう状況なんだ!? ラクシスは困惑していた。
「うふふっ、そんな私のことが大好きなアンタのためにイイコトを教えてあげるわ。 ラミア族の鞭に打たれた男はいい思いをするんですって!」
 そっ、それで!? というより、どうしてそんな話――ラクシスはさらに狼狽えていた。
「ふふっ、流石に話は見えてるでしょう?  私の母はラミア族との混血で、私もその血を強く受け継いでいるのよ♪ つまり――」
 ディアナリスは鞭を構えた、ラクシスは息を呑んだ――
「これからアンタは私のことを心から崇拝し、私のためならなんでも話すようになるのよ♪  さあ――痛くしないから素直にどんどんと白状なさいな♪」

「えっへへへへへへ♪」
「クレンス、一体、何がどうしたんだ!?」
 クレンスは鞭を持って楽しそうにしていた。捕らわれのアーシェリスはその光景に恐怖していた。
「うん、リスティーンお姉様に鞭の使い方を教わったのよ♪  だから、手始めにお兄ちゃんで試し打ちをしようと思って★」
 そんな! クレンスまで! 何がどうなっているんだ!?
「そういうワケだから、覚悟してね★」
 その光景をコルシアスは遠目に見ていて、すぐさま立ち去った。
「悪趣味な……あの女、特別待遇とか言っていたが――これがあの女の能力だとでも言うのか!?」

「どうよ? 何か喋った?」
「いえ、全然。少し疲れましたぜ、姐さん」
 リスティーンはバディファを尋問している尋問官のところへと向かっていた。
「そう――だったら休むといいわ。今度はこの私の鞭でこいつを癒してあげるから♪」
 尋問官は興奮していた。
「ゲッヘッヘッヘッヘ! そいつはいいですねぇ!  バディファの旦那め、姐さんの女王様の鞭で打たれるたぁなんて幸せなやつ!」
「うっふふふふふ……ああそうそう、あんたにとびっきりいい酒をあっちに用意しておいてあげたわ。」
「そいつはうれしいですねぇ、姐さんの酒を呑めるたぁ俺も幸せもんだぜぇ!」
 尋問官は外に出るとリスティーンは扉を閉め、鍵をかけた。
「うっふっふっふっふ、これで二人きりになれたわねぇ♪ さて、どんな楽しいことをしてあげましょうかしらん♪」
「くっ、今度はいろんな意味で手ごわい相手が出てきたな――」
「ふふふっ、わかっているじゃあないのよ。でも、これで晴れてあんたも私の虜ね♪」
「……危険な香りがする――」
 楽しそうに鞭を振りかざしている目の前の女に対し、バディファは息をのんだ。

 それからさらに数時間が経つと、コルシアスは異変を感じた。
「なんだ!? やたらと外が騒がしいな――」
 コルシアスは部屋から出て司令官室へと向かった。するとそこには――
「何!?」
 司令官は殺されていた、それどころか――
「レンティス! 貴様、あの女の術中にはまっていたのではなかったのか!?」
 そう、その場にはレンティスが――明らかに司令官を一突きにしている光景だった。
「何を言う? あの女の術中にはまっていたのはむしろお前たちのほうだろう?」
 するとレンティスは窓のガラスを突き破るとそのまま外へと脱出した! その下から雄叫びが!
 コルシアスは慌ててその下をのぞき込んだ!
「そんなバカな――」
 真下にいたのは自分が始末したはずのアルディアス軍だった。
「あんたはその程度の男だったということよ。」
 ”あの女”が現れた。
「貴様――裏切ったな!」
「あっはっはっはっは! 裏切りですって? 違うわね、私ははじめからこのつもりよ!  おかげさまで”エクスフォス・ガラディウシス”のこともセイバル軍の目的も、 そしてエダルニア軍の目的も全部わかったわ。」
「エダルニアだと!?」
「ええ、リベルニアがセイバルやあんたたち”エクスフォス・ガラディウシス”と結託し、 エクスフォスとシェトランドやアルディアスを葬り去ろうとしている理由がようやくわかったわ。 そう、エダルニア軍と取引して、この辺の国一帯をすべて支配しようとしていたってわけね!」
 コルシアスは高笑いした。
「ふん、そんなこと――俺にはどうでもいいことだ。 俺は”エクスフォス・ガラディウシス”の一員―― そう、すべては”エクスフォス・ガラディウシス”として目的を遂行するまでだ!」
 するとリスティーンは鞭を――
「あーぁ、そろそろ飽きた。」
 放り投げると謎の剣を引き出した――あれっ、あの剣ってまさか――
「あいにくだけど、私、あんたみたいなわけのわからないのは苦手なのよね。 異常というか変人というか狂信的なダメくさいやつ――苦手というかキライ。 仕方がないから私があんたを始末してあげるよ。」
「愚かな――この私に勝てるとでも? まあいい、たとえ女であろうと容赦はせん」
「はいはいどーぞごじゆーに。別に手加減とか要らねえし。 そもそも私、あんたみたいなのとにかくキライやし、なんつーか、こう…… ようわからんけどとにかくキライなのよね、具体的に言うと全部キライ。」
「そうか、それはよかったな!」
 コルシアスがリスティーンに襲い掛かった!