一行の話は決まったようで、とにかく秘密裏に進撃することを開始した。
進撃は秘密裏に、恐らく最重要拠点であろう建物に通ずる配管施設を潜り抜け、一行は地下から侵入した。
「誰もいないみたいだな」
「では、行きますか」
バディファは早々に抜け出し、出てきた部屋の入り口を見張っていた。
「誰もいない、今がチャンスです!」
それに合わせて次々と床の中から出てきた。
それにしても妙だ、静かすぎるというかなんというか。こんなに簡単でいいのだろうか?
そして、階段へとたどり着いた。エレベータもあるけれども――
「エレベータは危ない、階段で行こう」
もちろん。そして、司令室を目指して進み始めた。
しばらく進むとやはりというべきか、リベルニア兵が待ち構えていた。
「くっ、やっぱり簡単にはいかないか!」
一行は剣を引き抜いた! しかし!
「あら! 残念ね! この女の命、どうなってもいいのかしら?」
後ろから女の声が! その女は――
「ディアナリス!」
「アニキ――」
リベルニア兵に混じって一人の女戦士が――ティレックスの妹であるディアナリスの首に剣を突き当てていた。
「くっ、卑怯な――」
つまり、これは彼らをおびき出すための罠だった、そう考えればしっくりくる話だった、こんなに簡単に侵入できるだなんて。
一行は拘束され、敵の司令室へとやってきた。するとそこには――
「また会ったな、ガキども」
「なっ!? コルシアス!?」
リベルニア軍の一部拠点を破壊したやつがなぜリベルニア軍の司令室に平然といるんだ!? 一行は驚いた。
とにかく理解不能だった。すると司令室の机の向こう側の回転椅子に向こう側を向いて座っている人物が、
高圧的かつ上からものをいうような態度で話をしてきた。
「何、すべてはウジ虫どもを排除するためだ」
その司令官はこちらに向き直るとさらに偉そうな態度をしてきた。
「コルシアス、魔王計画はうまくいきそうか?」
「ああ、順調だ」
どうなっているんだ?
「お前らの知ったところで意味をなさないとは思うが……まあいい、遺族には知る権利があるというものだ」
司令官はそう言った、遺族だと!? するとコルシアスは少々得意げに答えた。
リベルナ監獄のあの一件は氷山の一角に過ぎなかった。
コルシアスの目的は、アルディアス軍が秘密裏に集めている軍隊の一斉排除だった。
そのため、自分たちの拠点をいくつか破壊していたのだそうだ。
「そんな! 自分の仲間をも巻き込んで施設を破壊するというのか!?」
ティレックスは訴えるようにそう言うと司令官は何それとなく言った。
「例によってあの面倒なアルディアスの民族なのでな、多少の犠牲は止むをえまい」
しかし、それとは反対にリベルニア軍がコルシアスに対して攻撃を仕掛けたのも見た、それは――
「雑魚に用はない――。その程度の出来事で命を狙われたのではたまったもんではないな」
と、コルシアスは言った。リベルニアの方針的には内部抗争が発生していたというのが実情だった。
そもそも今回の戦争についてはガラディウシスが持ち掛けた内容であり、
それによって賛成派と反対派に分かれると、反対派はガラディウシスに対して強く反発をしているのだという。
そのため、反対派は此度のコルシアスの行動によって粛清されたのだそうだ。
「さて、反乱分子とともに邪魔な者共は……あとはお前たちだけか」
リベルニアの司令官がそう言った――緊張が走る!
「ちょっ、ちょっと待って! 自分たちの拠点をいくつか破壊したって!?」
トキアが叫んだ。
「そうとも。何度も言わせるな」
「つまり、私たちの仲間は――」
「ああ、死んだ。というか、俺が殺してやった。
あとはヴェイルバーン家のディアナリスとティレックス、そしてその仲間たちといったところか?
放っておいたらここに潜り込んだバカ共も一緒とはなんと都合のいい――
都合よくエクスフォスもいるようだし、いろいろと手間が省けた。
先ほどは気が進まなかったから見逃してやったが――今度こそみんなまとめてあの世に送ってやろう!」
コルシアスは剣を抜こうと、剣の柄に手をかけた。すると女戦士が言った。
「ちょっと待って。」
「ああっ! なんなんだ一体! 何を待つと言うんだ!」
コルシアスはもどかしそうに叫んだ。
「まだ肝心なやつが残っているでしょ? ルダトーラのレンティス――」
「やつはすでに捕らえた! あいつは間もなく死ぬ!」
コルシアスと女戦士の言い争いが始まった。
「果たしてそうかしら? 逃げだしていたらどうするというの?」
「何をバカな? あそこをどうしたら逃げ出せるというのだ?」
「さあ? 仮にもあのルダトーラをまとめあげていた人物、甘く見ないほうがいいわね。」
「貴様に何がわかるというのだ! 抜かりはない!」
「どうかしら? だって、こいつらがここまで来たのよ?
私が止めに入らなければこいつらに好き勝手されていたのよ? それをお忘れではなくって?」
「なっ、何をっ!」
それに対して司令官は怒りながら叫んだ。
「やめんか! こんな時に言い争いをしている場合ではなかろう!
確かに外の者が自由に出入りしているさまやそもそも反乱分子共がいる以上は一応確認する必要がありそうだ、
リスティーンの言うことにも一理あるのではないか!?」
女戦士の名前はリスティーンというのか――はて? どこかで……
「そっ、それは――」
「それに問題はレンティスだけじゃあないわ。
そもそもアルディアスは今やディスタードの支配下にあるハズ――なのに、
なんでアルディアスの精鋭共がこのリベルニアの地に容易に流入してきているワケ?
エネアルドのエクスフォスと一緒にやってきているわよ?
そう考えるとレンティスが例えおとなしく捕まっていたとしても……それには何かしらの裏があってもいいと思うけど?」
リスティーンがそう言うと司令官は大いに頷いていた。
「なるほど、確かにその通りだ。
そもそも連中が何故この地にやって来たのか?
アルディアスの連中とエクスフォスがこうして共にいることも妙だ――
だとすると、レンティスが捕らわれていること自体がやつらの作戦の一つとも考えられるな」
「ええ、そうね、こいつらがこんなにいとも簡単にここに来られるってことはそう考えるのが妥当ね。
つまり、レンティスが捕まっていること自体がそもそも作戦の一端であり、
たとえレンティスを切り捨てたとしても事はうまくいくハズ――そういう筋書きが見えそうね。
そうなると、こいつらの作戦については実は背後にもっと別の存在が付いていることも考えられるわよね――
ふふっ、そういうことなら大体見当はついてきそうなもんだけれども。
そういうわけだから”エクスフォス・ガラディウシス”の使徒さん、
ここでの殺しはお預けということでいいわよね?」
コルシアスは諦め、剣から手を放した。
「ふん――いいだろう。趣味には合わないが――そういうことなら貴様らをしごいてやる、覚悟するんだな」
……ということはつまり、尋問が始まるということらしい。