一行の勢いだけはよかった。
だが、その勢いはリベルニアの首都の佇まいを見た途端にくじかれた、首都の光景に圧倒されたのである。
「こっ、ここがリベルニアの首都!?」
「軍事基地そのままですね――」
ラクシスとバディファがそれぞれ驚きながら言った。
そこはまさしく軍事基地そのものであり、町の装いなどどこにもなかった。
既に夕方で、軍事基地の黒い装いがその黒さを不気味なぐらいに醸し出していた。
入り口にはすんなりと入れそうだが、それでも流石に怖いような感じだった。
「おい! 何をしている! 早くこっちに来い!」
すると突然、いきなり一人のリベルニア兵がこちらに来るように一行を呼んでいた。
「早くしろ!」
こんな場所でそれに応じない一行は怪しい存在でしかないため、とりあえずは素直に従うことにした。
アーシェリスはひそひそ声で話し始めた。
「こいつ――俺らのことをなんだと思っているのだろうか――」
「侵入者、って思っているのかな?」
クレンスも不安げに話した。
「バディファさんはどう思います?」
ラクシスは訊ねた。
「いや――どうもお仲間さんのようですが?」
えっ? すると、アーシェリスはティレックスのほうへと目をやった。
ティレックスはリベルニア兵の肩をつかんで何か話をしているようだった。
「なあラークス、こんなところでなにやってるんだ?」
「よう! 久しぶりだな! いろいろとあってな。
こっちの詳しい話はとりあえず後にすることにしてだ、そっちこそ今まで何をやっていた?」
「俺のほうは……話せば長くなるが、とりあえず修行をしていた、といったところか」
「んじゃあ、強くなったんだな! そいつは頼もしい話だな!」
「い、いや、それほどでもないけどな――」
どうやら取り越し苦労だったようだ。
ラークスに連れられて目的の部屋へとたどり着くと、さらに2人は話をし始めていた。
「そっか、リベルナ監獄がやられたって聞いていたけどレイガスは無事なんだな」
「一応な。それより、なんでお前らはリベルニアにいるんだ?」
「それはティレックス、お前と一緒だよ」
「一緒? 俺はお前らのところに行けという話をアールから聞かされただけなんだが――」
「ほえ? ありり? なんだ、作戦の中身は全然聞いていないのか?」
「ああ、全然知らない。詳しい話は現地で訊いてくれって言われたぐらいだしな」
「そうか……。じゃあ仕方がねえ、話すとしようか」
なんだ、もったいぶって。いったい何がどうしたというのだろうか。
「ティレックス! わあ、本当に来てくれたんだね!」
今度は突然、部屋にさらに2人の女性が入ってきた。
「トキア! ユーシィもここにいたのか!」
ティレックスはその2人に気が付いてそう言うと、話をしていた。
「ティレックス、久しぶり!」
「ティレックス、久しぶり♪ フレシアは元気?」
「フレシアは……見てないな」
「そっか。でも、ティレックスが無事でよかった!」
「無事って何だ、俺は別に危ないことはしていない」
2人の女はキョトンとしていた。
「ティレックスは今回の作戦のことは参加すらしていなければ一切聞かされていないどころかまったく知らないんだ」
ラークスは2人をなだめるようにそう言った。
「えっ、そうなの!? 全然知らなかった――」
「ああ、そうなんだ。だから、一体何が起こっているのか説明してくれないだろうか」
リベルニア軍……かつてアルディアスのルダトーラ軍と交戦していたことがあった。
「でも、その戦いは終わったんじゃあ?」
現に、リベルニアにはアルドラスティス人が出入りできるような状況も整っている、
アーシェリスたちはそう考えながら言ったが、ティレックスは首を振りながら言った。
「それはアルドラスティス……というか、本来のアルディアスの人間相手の話だ。
それは俺たちルダトーラの民とは違っている」
トキアがそれに話しを付け加えた。
「恐らく、その辺までの警戒心は薄れてきているのでしょうね。
私たちルダトーラに住まう”アルドラスティア”とリベルニアの軍隊とはかつて敵対関係にあって戦争をしていたのよ。
そして、そこをうまくまとめて戦争を終結させたのがアルドラスティス人ってわけね」
ユーシィこと、ユーシェリアがさらに話を続けた。
「住まいの大陸の名前はアルディアス、ルダトーラに住んでいた私たちはその当時、
未だに中世的な文明で過ごしていた先住民族――それがアルドラスティス人の文明の利器を得、
外界とあったいざこざともお別れをするためにアルドラスティス人として生きるすべを得た――
それが今の私たち、本来のアルドラスティア人ってことみたいね」
「だけど、今になってリベルニアはアルディアスへの侵攻を開始したんだ」
と、ラークスは続けた、侵攻を開始?
「現に、すでに囚われているルダトーラの民がいるんだ。
この話を知ったのがちょうどディスタードとの戦争が終わった後でアール将軍から聞かされたんだ」
ラークスはそう言った、そんなことが起きていたのか――戦いはまだ終わっていないらしい。
「なんで俺には言わなかったんだろう?」
ティレックスはそう言うとラークスは答えた。
「正確には例のセラフィック・ランドの件の直前あたりで、
俺らもその時はアールじゃなくて副将軍のルヴァイスって人から聞いたんだ。
恐らく、ティレックスに伝達する手段がなかっただけじゃないのか?」
まあ――そう言うことなら仕方がないか、ティレックスは考えた。
「それで、囚われたルダトーラの民って誰だ?」
と、ティレックスは訊ねると、仲間のほうは言葉を濁した。
「ん? 何だ?」
「あっ、いや――実はよく知らないんだ、
そういう話だけは聞いているけど具体的なところまではわかっていないんだ」
「……そうか、それじゃあ仕方がないな」